第3話『しょうぼうじどうしゃじぷた』渡辺茂男
動くということは、人の根源的な喜びであり、子どもは動くものが大好きです。イヌやネコを飼いたがるのも、カブトムシやメダカを育てたくなるのも、それら動物が動く存在だからでしょう。この嗜好は非生物にも適用されるようで、子どもは動く物に興味を持ちます。
そのため、いつの時代にも乗り物絵本というのは一定の需要がありますが、なかでも今回取り上げる『しょうぼうじどうしゃじぷた』のは半世紀以上にわたって読み継がれている絵本です。
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じぷたは古いジープを改良したちびっこの消防車です。はしご車ののっぽくん、ポンプ車のぱんぷくん、救急車のいちもくさんと共に町の消防署に配備されています。のっぽくんたち3台の消防車は、町の子どもたちの人気者です。
>「みてくれ、ぼくの はしごを。どんな たかい ビルが かじになっても、ぼくさえいれば しんぱいないよ。するする と、はしごを のばして、うえから みずをかけてけしてしまうし、まどから ひとを たすけることも できるんだからな」<
>「あっはっは、ぼくの はないきの つよいのを しらないな。ぼくが ちからいっぱい みずをはきだせば、どんな あつい ひでも、じゅんと きえてしまうよ」<
>「おっと まってくださいよ。けがにんが でたらどうするね。やっぱり、わたしがいなけりゃ こまるでしょ。ぴーぽー ぴーぽーと、どこにでも、いちもくさんに かけつけて、けがにんを びょういんに はこんで あげるんですからね」<
でも、じぷたには、梯子がないし、ポンプは小さいし、早く走ることもできません。
>まちの こどもたちも、のっぽくんや ぱんぷくんや いちもくさんのことは おおさわぎするくせに、じぷたのことは「なんだ、ジープを なおしたのか」なんていうだけでした。<
でも、じぷたは働き者です。小さな家が火事になると飛び出していって、すぐに家事を消し止めてしまいます。ところが、のっぽくんたちからはいつも馬鹿にされているのです。
>「なんだ ぼやか。ちびっこで ちょうどいいんだ」<
>そのたびに、じぷたは、「ぼくだって、おおきな ビルのかじが けせるんだぞ!」とおもいます。でも、ビルのかじのときは、しょちょうさんが、じぷたに、「しゅつどうせよ!」と いってくれないのです。<
そのあと、のっぽくんたちがたどり着けない山奥の火事に、じぷたが出動。見事に山火事を防ぐことで、のっぽくんたちはなにも言えなくなり、町の子どもたちの人気者になる――というのが『しょぼうじどうしゃじぷた』のお話なのですが、わたしは、のっぽくんたちから馬鹿にされたあとに、じぷたが呟く箇所が好き。
「ぼくだって、おおきな ビルのかじが けせるんだぞ!」
無理だよ、無理。小さなポンプしか積んでないじぷたが放水したところで、高いビルに水が届くわけないじゃないですか。絵本はあたかも署長さんがひどいと言わんばかりの書きぶりですが、署長さんは正しい。
しかし、このじぷたの心意気はすばらしい。ぼくも活躍したい、ぼくだってできるんだぞという、やや向こう見ずなところがけなげで、じぷたが愛おしくなります。
じぷたのように「まだきみには早いよ」という大人からの忠告を乗り越えて、子どもたちは成長していくんでしょうか。
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『しょうぼうじどうしゃじぷた』(福音館書店)
作者の渡辺茂男(1928-2006)は、静岡県静岡市出身の児童文学者、翻訳家です。『しょうぼうじどうしゃじぷた』(福音館書店)など多くの絵本を手掛けたほか、『エルマーのぼうけん』(福音館書店)、『どろんこハリー』(福音館書店)などの訳書があります。『どろんこハリー』は息子のために買ってます。
挿画の山本忠敬(1916-2003)は、東京都出身の挿絵画家、アートディレクターです。自動車、列車、飛行機、船など、のりもの絵本を挿画を多く手掛けています。なかでも『しょうぼうじどうしゃじぷた』の挿画は、特に素晴らしいと思います。
次回は、レオ・レオニ『スイミー』を取り上げます。
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