6.家族
「…くぅ〜…ん…?」
(あれ、ここは…?)
まだぼんやりとしている目を擦ろうとして、僕は自分が狐に転生したのだということを思い出した。
(狐の手は不便だなぁ…目が擦れないや。)
って、手じゃなくて前足か。
僕は仕方なく、大きく伸びをして眠気を覚まし、巣穴から出た。
「きゅっ!」「くぉ〜ん。」
日が暮れかけた森の静けさと、今までずっと外で遊んでいたらしい兄狐と妹狐に出迎えられた僕は、嬉しくなって尻尾を振る。
「くぅ、くぅん。」
兄妹におはようを言い、僕は二匹に混じって遊び始めた。
「きゅ〜、きゅっ!」
「くぉん、くぉ〜ん!」
急におとなしくなった僕がいつも通りに戻ったのが嬉しいのか、揃って尻尾をぶんぶん振る兄妹。
…記憶が戻ったからと言って、遊びによる家族間交流をしなくなるのはだめだよね。
今世での、血の繋がった兄妹なんだ。大切にしなくちゃ。
(…前世での僕の家族は、今はどうしてるんだろう。)
僕は、名前も思い出せない父母と妹のことを思い出す。
厳しい人だけど、いつもこっそりお菓子をくれたお茶目なお父さん。
料理が上手で、いつも穏やかだった優しいお母さん。
お兄ちゃんっ子で、いつも甘えてきた可愛い妹。
…ステータスなんてものがある異世界に来てしまった以上、もう会えないんだろうけど…
(…みんな、元気にしてるといいな。)
なんだか懐かしくて、少し涙が出そうになる。
でも、僕はすでに、新しい命をもらったのだ。
前世について、いつまでも引きずるのは良くない。
(…よし。)
…僕は一旦、前世の家族のことを心にしまって、今世の兄妹との追いかけっこを始めた。
今は、今世の家族とのひとときを楽しむ時間だからね。
「きゅっ、きゅ〜ん!」
「くぉ〜ん、くぉっくぉっ!」
「くぅ、くぅんっ!」
とっとこ追いかけて、たったか追いかけられて、くるくるじゃれあって、ころころ転がる。
楽しくて、時間が過ぎるのも忘れてしまいそうだ。
夕方の森に、僕たちの楽しそうな鳴き声が響きわたる。
(…あっ、こんなにうるさくしてるとご近所さんに怒られちゃう!………なーんてことはないのか。…ちょっと寂しいな。)
あーあ、前世のことはあまり考えないって決めたばかりなのに、早速考えちゃったよ。
(…あ。)
僕はここで、あることに気づく。
(……森の中で、こんな大きな声出したら危ないんじゃ…)
ご近所さんならぬ、危険な肉食動物さんがこんにちはしちゃうかもしれない。
「く、くぅん…」
巣穴に戻ろう、と兄妹に声をかけてみる。
「…?きゅ〜ん?きゅっ。」
「く〜ん、くぉん。」
僕の言いたいことがうまく伝わったのか、兄狐と妹狐は顔を見合わせて頷き合い(そう見えただけ)、巣穴の方へと駆けて行った。
「…くぅん!」
待って、と僕も二匹を追いかける。
(あ〜、楽しかった。)
めいっぱい遊ぶのも、なかなか楽しいもの…
ピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコン
…だ……
(…うぇ!?)
……な、何が起こったんだろう…
+・+・+・+・+
お読みくださりありがとうございます!
面白ければ☆や♡、ブクマをつけてもらえると嬉しいです…
コメントとかしていただけたら返信しますので…してください。
今後の展開とかキャラクターとか、アイデアがあればぜひコメントへ!採用しちゃうかもですよ?
(^˶・-・˵^)キタイノマナザシ
反応が良ければこれからも週3くらいで投稿…できる、かな?
…って感じなのでよろしくです。
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