第三話 りむちゃんねる


「片桐先生はダンジョンの何階層まで到達したのですか?」


 片桐に興味を持ったりむは、怒涛の勢いで質問攻めをした。


「他にも、いつから配信者になったのか、どうして配信者になったのか、何故銅盾配信者をずっと続けているのかもお聞かせください」


 りむは片桐にゼロ距離まで近づき、お互いの吐息が重なり、りむの大きな胸は片桐の腹部に押し当てられていた。


「ちょっとちょっと、俺のことなんてどうでもいいでしょ。あと近い……」

「あ、すみません……」

「うーん、覚えてないなあ。それよりも、一度りむさんの配信を見てみたいな」

「……はい。お願いします」


 りむは片桐の発言に疑問を抱く。


(自分の最高到達階層を覚えてない? 低層にしか到達出来ない人間のセリフではないのでは? この人、何か隠している? もしくは、壮絶な過去がある……)


 ーーーーー


 片桐は、自信のスマホにインストールされている無料アプリ"Dtube"を立ち上げた。

 Dtubeは、ダンジョンに潜る人たちに向けて情報を提供する為にギルドが開発したアプリだ。内容は、名前の通り某動画投稿アプリと類似している。

 ちなみに、現在はダンジョン潜る場合は必ずDtubeにアカウントを登録する必要がある。配信の有無は問われないため、Dtubeはギルドが人員を把握、管理する為という側面もあるのだろう。


「"りむちゃんねる"で検索してみてください」

「りむちゃんねる、ね……」


 片桐は検索画面で"りむ"と打つと、予測の一番上に表示された。銀盾配信者とは、上位五パーセントの存在。かなり有名な人間なのだ。


「これかな? りむちゃんねる」


 ーーーりむちゃんねるーーー

 最大到達階層 十二階層

 配信者ランク 銀

 経験     一年

 ーーーーーーーーーーーーー


「一年で銀盾なんだね。やっぱりとか、最近だとも増えてきたから、銀盾が霞んできたけど、かなり上位の存在だよね」

「私が上位とは……あまり思いませんが、十階層以降のダンジョンはやはり人が激減します。ですし」

「へえ、最近のダンジョンはそうなんだね。十階層以降なんて、数年前の知識しか無いからなあ」

「……そうなのですね?」

「あ、じゃあ、配信を見させてもらいます……」


 りむの表情が硬くなる。


(気になる。私の配信を見て、彼が何を思うのか……)



 ーーーーー


「うん。大体分かったよ」


 りむは驚きを隠せない。


「……何がですか?」

「君の配信スタイルと、リスナーの求める需要が乖離しているように見える。Dtubeにおいては、リスナーの需要なんてガン無視! って人も多いけどね。とか、とかを重視するなら大事だよね。配信者をやってるなら、こういったことも重要になる……ああ、そんなこと本人が一番知ってるか」

「いえ……」

「うん?」

「私には、お金が必要なんです!」

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