英雄とよそ者
おじさんと別れた後のことだった。
「あら! アルカスさんたちじゃないの!」
村でも一際派手な服のおばさんが叫んだのがことの発端だった。
双子の帰還に大喜びの村人たちは一斉に集まりだしたのである。村娘、元気な少年、農家の一行。村人たちは次々に贈り物を持ってきて、最終的に木箱は二つになり、双子は前が見えなくなるほどに積み上がったのである。
当然村人たちに悪意があるわけではないので、誰が悪いとかそう言ったことはない。ただただ双子への感謝と愛情が深かっただけのことだ。
というわけであり、柊は手伝いを申し出たのである。ただし断られたが。
一行は村の奥へと進んでいく。
双子は前が見えないにしろ、研ぎ澄まされた感覚で真っ直ぐそして誰にもぶつからないように進んでいく。すれ違う村人たちは双子の様子を察してか話しかけることも減った。
柊はなんだか居心地の悪さを感じた。村人たちの視線が柊に向けられるのだが、彼らがなんだか「睨んでいる」ような気がしてならないのだ。
双子が木箱を重そうに持っているというのに、真ん中を歩く柊は何も持っていないどころか手伝いもしない。 そういう風に見えるのだろう。
柊は一層背中を丸めるのだった。
村の中心。噴水の代わりに、「
三人が立ち止まっていたら村の向こうのほうから杖をついた老人と若い娘さんが近寄ってきた。ご老人は娘に支えられながら双子に礼をする。
「レスア・アルカス様、エタナ・アルカス様、よくぞお帰りになられました。
今宵も上質な宿を開けております。どうぞご遠慮なくお使いください」
レスアは木箱を下ろして額の汗を拭った。エタナも木箱を地につける。
「ありがとう!村長さん。いつも助かるよ!」
「いえいえ、助けられたのはこちらなのですからお気になさらず」
村長は手を小さく振って謙遜する。ふと柊の方を見た。柊はギョッとしてすぐさま隠れたい気分になったが、双子の方を気にして行動には至らなかった。
「お連れの方は?」
「ああ! シュウちゃんだよ!僕らの友達!」
レスアがニッと口角を上げたのを村長は確認すると私に向き直った。
「驚かせて申し訳ない。この村の村長です。
宿は広いのでご安心を。どうぞゆっくりしていってください」
礼をされたので柊も慌てて返す。
娘さんらしき人が後ろの方に手招きし、大きな男性二人が双子の荷物と木箱を持っていった。宿まで持っていってくれるらしい。
村長さんは双子と少し話をしてから去っていった。
「ここの村長さん……優しいでしょ?」
エタナが自慢げにいうのを見て、柊は動揺しながらも頷いた。
(かなり手厚く歓迎されてるんだなぁ)
双子は大きくのびをしている。暖かい日差しは彼らに降り注いでいる。
一方で柊は塔の影に隠れている。周囲の村人たちからの視線は相変わらず冷たいものだった。双子が村を気に言っている分打ち明けづらくて、塔に背を預けたまま座り込んでしまった。
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