第12話 問い
その日は珍しく、ヴァリオが少し沈んだ様子で藤村の前に立っていた。畑の端に積まれた木材を見つめながら、彼はぼんやりと考え込んでいる。
「藤村、お前はどう思う?」
突然、ヴァリオの声が響いた。
藤村は驚き、目を丸くする。ヴァリオから意見を求められるなんて、初めてのことだった。いつもは命令されるばかりで、自分の意見を言うことなどなかったからだ。
「え?俺がですか?」
「うん、お前、最近はちょっと見込みをかけている。だから、お前の意見も聞いてみたくなった」
ヴァリオは藤村を真剣に見つめる。その眼差しに、藤村は少し緊張しながらも、考える。
「木材の使い方を変えようかと思ってるんだ。畑に使うために、少し切り方を変えた方がいいかもしれない。でも、どの方向で切るべきか決めきれなくてな」
藤村はしばらく黙って考え込む。こういう場面では、いつもと違って何かしらの答えを出さなくてはならないと感じた。
「うーん…その、畑のどこで使うかにもよりますけど…最初に土を整える場所には、太い木を使った方が安定すると思います。あまり細かく切るより、しっかりした木材を根本に使った方が…」
ヴァリオは藤村の言葉をじっと聞いていた。
「なるほど。確かに、太い木を根元に使うことで安定するか。お前、思ったよりもまともな意見だな」
藤村は心の中で大きな拍子を打った。ヴァリオから「まとも」と言われるなんて、想像もしていなかった。しかし、すぐにその言葉に喜びすぎないように気をつけ、冷静を装って答える。
「ありがとうございます。でも、まだ試してみないとわかりませんから…」
ヴァリオは軽くうなずく。
「そうだな。試してみる価値はある。お前の意見、悪くない」
その言葉に、藤村は内心で小さな歓びを感じた。ブラック企業では、何度も「そんなことも考えられないのか」と言われていたが、ここでは自分の意見が受け入れられ、少しでも尊重されていると感じた。
「お前の意見をもらってよかったよ。試してみる」
ヴァリオは少し笑みを浮かべた。
藤村はその言葉が嬉しくて、思わず口元が緩んでしまった。
「すいません、ありがとうございます!」
藤村は深く頭を下げる。嬉しい気持ちを表に出しつつも、反射的に「すいません」と謝ってしまう自分に、少し苦笑しながら。
その後、ヴァリオは藤村に向かって一言、冷たく言い放った。
「お前、喜びすぎだ。変なやつだな」
藤村はその言葉を真に受けて、「嬉しいから仕方ないじゃないですか…」と心の中で反論しながらも、黙って作業に戻った。
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