第11話 新たな挑戦と成長
翌日、藤村は早朝から仕事を始めていた。ヴァリオが朝のうちに出かけるということで、今日は一日、少しだけ自分で作業を進めることになった。しかし、ヴァリオがいない間の作業というのは、普段と違う緊張感があった。
「今日は少しでも自分を試してみよう…」
藤村は心の中でそう思い、まずは昨日の作業から進めることにした。草取りも順調に進み、少しずつ周りが整ってきた。その時、隣で作業している他の奴隷たちが藤村の動きに注目していた。
「お前、結構早いな。今日もヴァリオに褒められるんじゃねぇのか?」
他の奴隷の一人がからかうように言ったが、藤村は顔を赤くしながらも答えた。
「そんなことないよ…でも、確かに昨日、ヴァリオ様から『悪くない』って言われたんだ」
「へぇ~、お前にしては結構大きな褒め言葉だな」
その言葉に藤村は一瞬恥ずかしくなったが、すぐに胸が高鳴った。「悪くない」だけでこんなに嬉しくなるなんて、自分でもびっくりだった。
その後、昼前にはヴァリオが戻ってきた。
「おい、藤村。今日の進捗を見せてみろ」
ヴァリオは無表情で言ったが、その目は少し真剣だった。藤村は少し緊張しながらも、自分の作業した場所を指さした。
「ここまで進めました。草はほとんど取り終えましたが、まだ少し残っています」
ヴァリオは黙って藤村の作業を見て、しばらく考え込んでいた。そして、意外にもこう言った。
「…うん、まあ、悪くない」
藤村の胸が跳ね上がる。
「やった!また『悪くない』って言われた!」
他の奴隷たちは、その様子を見て思わず苦笑いを浮かべたが、藤村は気にすることなく喜んでいた。
その後、ヴァリオは少し真面目な顔をして、藤村に言った。
「だが、これで満足するな。明日はさらに進めろ。お前の仕事のペースを維持しろ」
藤村はその言葉に大きく頷いた。
「分かりました!頑張ります!」
ヴァリオが帰ると、藤村は再び作業を続けた。だが、今度はただ作業を進めるだけではない。ヴァリオに言われたことを胸に、少しだけ自分の方法を考え、工夫しながら進めていった。
午後になり、藤村は自分でも驚くほど効率よく作業を終わらせた。その頃、他の奴隷たちが藤村に声をかけてきた。
「お前、ほんとに成長したな。昨日まではあんなに苦しそうにしてたのに」
藤村はその言葉を聞いて、少し照れくさそうに笑った。
「そんなことないよ。まだまだだよ。でも、ヴァリオ様に言われた通り、少しずつ進んでる気がする」
「なんだか、あのヴァリオに少し認められた気がして、嬉しいんだろ?」
その言葉に、藤村は内心で頷いた。確かに、ヴァリオに認められることが、こんなにも嬉しいとは思わなかった。
その日の夜、藤村は寝床で思いを巡らせていた。もう、ただ命令をこなすだけの毎日ではない。この場所で少しずつ、何かを学び、成長しているという実感が、確実に芽生え始めていた。
「明日も頑張ろう。ヴァリオ様にまた『悪くない』って言ってもらえるように」
藤村は静かに目を閉じ、明日への決意を胸に抱きながら眠りについた。
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