第4話 神様、太陽様

土を耕す作業に没頭していた俺は、カーン、という音で顔を上げた。鐘の音だ。


 周りの奴隷たちが一斉に手を止め、道具を片付け始めている。


 俺も慌てて鍬を持ったまま近くの先輩奴隷に声をかけた。


「す、すいません! あの……えっと……残業は……?」


「……は?」

 先輩は訝しげに眉をひそめた。

「ザンギョーって何だ? 呪文か?」


「い、いや、その……時間が過ぎても、こう……もっと働くやつです。まだ明るいですし……!」


「はあ?」先輩は盛大にため息をついた。「おいおい、暗くなったら何も見えねぇだろ。作業なんてできるわけねぇだろ? 今日は終わりだよ、坊主」


 ガンッ。


 俺の中で何かが砕けた音がした。


「え……終わり……?」


 膝が、がくりと崩れた。鍬を取り落とす音が地面に響く。


「お、終わりって……マジの……終業……?」


 全身に戦慄が走る。息が苦しい。涙が勝手に滲んでくる。


(これが……仕事が終わるということ……!?)


 俺はその場でガバァッと土下座した。鼻水を垂らしながら、泥に向かって叫ぶ。


「ありがとうございますううううう!! 本当に……終わっていいんですね……!? 終業って……夢じゃなかったんだ……!」


「……お、おい大丈夫か?」


「これが……これが! 人間らしい生活ッ……!! 日の入り、最高! 太陽、神ッ!!」


 全力で地面に額を打ち付け、感謝の意を捧げる俺を、先輩は呆れ顔で見下ろしていた。


「……なんかよくわかんねぇけど、お前、昔すげぇとこにいたんだな……」


「すいません……ありがとうございます……すいません……っ!」


 この日、俺は「仕事が終わる」という当たり前の奇跡に、心の底から泣い

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