第3話 お父さん

「ただいまー。誰かいるのかー?」


「は、はーいお父さん。今友達と一緒にお菓子を食べてたの!」


「そうか。初めまして、ムムの父です。唐突で悪いが、君たちは今の空について知っているかね。」


「え、えぇ、なんかヒビみたいなのがありますよね。」


戸惑いながらも、探るように言葉を返す。


「君たちは空に外があると思うか。」


―――一瞬緊張が走る。


まさかこんなところでこの話題が出るとは思っていなくて私は少し動揺した。


「それは―――」


答えようとしたワワちゃんをタタちゃんが制止する。


「空に外があるわけないじゃないですか。どうしたんです、お父さんらしくないですね。」


「いや、それならいいんだ。ここ以外で空の外について聞かれても同じように答えなさい。いいね。」


「はい。」


「空のヒビで世間が騒がしくなってるからタタはどうしてるだろうと心配になって一回帰ってきたが、友達といるし、大丈夫そうだね。じゃあ、ちょっとお父さんはまだ仕事が残ってるから。」


というとタタのお父さんはまた車に乗って行ってしまった。


「はぁ、びっくりした...絵本のこともバレてなくてよかったよ。」


「それはそうなんだけど、今日のお父さんなんか様子がよそよそしかった。しかもここ以外で空の外について聞かれても同じように答えなさいって、絶対何か知ってるよ。」


「あの、さっきは止めてくれてありがとー。もしあそこで私が何か言ってたら、めんどくさいことになってたかもだし。」「いやいいのよ。ただ、本当によかった。」


「タタちゃん、まだ何かあるの?」


「二人は聞いたことない?この世界の教え。」


「教えか...全然心当たりないな。」


「私もその教えってやつ知らない。」


「そっか...あのね、この世界では、空が青くなきゃいけないの。空には青い空間と太陽、それだけ。それ以外は存在しないってことになってるの。」


「ことになってるって、生まれたときから空は青いし、太陽しかなかったじゃん!」


「そうなんだけど、元々この世界には色々なグロウプってやつがあって、あの絵本に出てきたよるとか、ほしとかそういうグロウプがあったらしいの。

でも、そこに属する人たちで争いが絶えなかったから、一つに統一しようってことになったの。まあ、それを決めるときも争いがあったっぽいんだけど、最終的にせいてんってグロウプが勝って今の世界があるらしいの。

この話はお父さんから聞いたんだけど、まさかよるやほしがグロウプの名前だけじゃなくて実際にある物だとは思わなかった。」


「えぇ、今の空めっちゃ単純なのになんだか複雑な過去があったんだね。」


「うん...あのね、さっき私は咄嗟にワワちゃんを止めちゃったけど、今からでも私のお父さんにあって空について聞いてみない?」


珍しい、タタちゃんが自分からこういうことに飛び込んでいこうとするなんて。


「私はいいけど、大丈夫なの?お父さんは私たちに空について何も知らないって答えるように言ってたんでしょ。しかも昔絵本取り上げられたんだし。」


窓の外から大きな音が聞こえる。


何かが割れるような音。


もしかして空のヒビ...?


「ふたりとも謎解きとかに夢中になって気づいてなかったけど、私たちがこうしている間にも空のヒビがどんどんおおきくなってるの。私は何が起きているのか、何が原因で起きているのかとか知りたいの。その点、お父さんなら信用できると思うし...」


「...お父さんがどこで働いているか分かる?」


「この街にある大きな塔、第三かいせいセントラルタワーの最上階」


「えーそんな高いところで働いてるの!ちゃんとたどり着ける?それ...」


「大丈夫、ここの地下通路からならだれにもバレないで入れるよ!お父さんだって何かあったらここからお父さんに会いに来なさいって言ってくれたもん!」


家に地下通路を持ってるタタちゃんのお父さんは相当凄い人なんだろう。


「とにかく、知れなくて後から後悔したくないから一緒についてきて欲しい!ワワちゃん、ムムちゃん!」


きっとタタちゃんは本気だ、それなら。

「もちろん。」


「私も行くよ!」


「よし、行こう...!」


こうして3人は空の秘密を知るためにタタちゃんのお父さんに会いに行くことになった。

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