第22話執着

 早く別れて。早く、早く、好きだから苦しい。あの日が楽しかったから苦しい。目の前に居るから苦しい。


 何でこんな事になったんだろう?手放すつもりで遊びのつもりで恋の駆け引きを楽しんだだけなのに。

 

 私は持っていた奏斗君との思い出の物を彼に返して彼が持っていた物を受け取った。

何も会話など無くすれ違いざまに受け渡した。

これで終わり。

 後は私のこの気持ちをどうするか?2人を見ると心臓が苦しくて、田代さんが笑って居るだけでズタズタにしたくなった。年甲斐もなく恋をして振られて傷ついて…。どんだけ暇な人生なのだろう?もっと考える事もやらなきゃいけないこともあるのに仕事も手につかない。

 余程顔色が悪かったのか私は午後から家に帰るように工場長に言われ早退をした。

 車に乗ると自然と涙が出てきた。声を出して泣いた。どうしたら良いのかわからなかった。会社を辞めて2人が見えないところで過ごすのが1番幸せなような気がするが私はそれも許せなかった。

〝何で私が逃げなきゃいけないの?〟〝早く別れて!〟〝交際宣言とか結婚するとか、赤ちゃん出来ましたとか見たくないし聞きたくない。〟


奏斗君は私が帰ったことを知ったら心配してくれるかな?それとも余計な人が居なくて喜ぶかな?このまま辞めたら2人は堂々と付き合うのかな?そんなの絶対に許せない。私という存在で2人の事を邪魔してやる。

 


 愛なのか執着しているだけなのか解らない。それでも私は強く願う。早く別れてくれることを。私の心が穏やかになることを。

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