第20話音信不通
遂にこの日がきた。
彼からの連絡が途絶えた。奏斗君は私に飽きたのだ。〝会いたい〟とラインしても疲れてるからと会えなかったり、かわりに電話するよ。って言われても電話も来ない。
「終わった。」
私から手放すつもりが彼からの突然の別れ。余りに突然で理由が解らず何度も連絡する。
それが良くなかったのか会社でもぎこちない感じになってしまい私はとても辛く悲しく過ごす。
そんな時人事異動があり、奏斗君は課長に昇進する。私の上司は奏斗君では無くなり接点が前よりなくなり、話す機会も減り何となくお互い話さなくなる。
私は毎週休みが近づくと会いたくなり連絡をいれるが既読が付かない。せめて理由が知りたい。あんなに愛してくれた人の事がわからない。
新しく社長になった西田さんは奏斗君とコミュニケーションがうまく取れなくて何度か私に意見を聞きに来た。私は奏斗君の不利にならないように話をして2人の間をとりもった。毎日の様に二日酔いで出社する奏斗君は皆から〝今日も二日酔いで機嫌悪い〟〝何聞いても反応無い〟等、評価は落ちた。
私は奏斗君の力になりたくて何度も連絡をしたけど何ヶ月も奏斗君からの返信は無かった。私は周りが奏斗君を悪く言うのを聞いても庇う様な回答する事しか出来なかった。
初めから手放すつもりで付き合ったはずなのにこんなに執着している私が居た。
歳の差は18歳。普通に考えただけで気持ち悪くなる歳の差だ。それでも、連絡がなくてもこんなに尽くしているんだものいつかまた愛してくれる日が来るのでは?と甘い考えで奏斗君に尽くした。仕事を頑張り奏斗君の負担を減らす事ばかり考えた。
でも、私に〝もしかして〟は訪れなかった。
今でも奏斗君のあの甘い瞳を思い出す。
本当に愛してくれていたと確信する。
甘い声で私を呼び、愛を囁く。優しい手で私を愛おしく触る。精一杯の表現で私を満たしてくれる。
夢の様なひと時だった。奏斗君を変えられるのは私しか居ないと傲慢な気持ちがあったのかもしれない。そんな私から離れた奏斗君は今にも壊れそうで見ていられなかったが、私にはもうどうする事も出来なかった。
奏斗君が私から離れたのだから。
それでも私は奏斗君の事を思い心理カウンセラーの資格を勉強し、〝もしかして〟に備えた。〝頑張るルミさんが好き。〟と言う奏斗君の言葉を信じて頑張った。
しかし奏斗君が選んだ人は同じ会社の奏斗君と1歳しか変わらない田代さんだった。
あまりのショックで立って居ることが出来なくて私はその場に座り込んだ。格好良く割り切って付き合っていたつもりだったが結果はこの有り様。2人が一緒にいる場面を見た夜に私は手首を切った。血がにじみ鈍い痛みと共に憎しみが湧いた。流れる血を見て生きる意味を失った。この思いを何処にぶつければ良いのかわからなかった。カウンセラーの資格を持つ私がカウンセリングを受けた。
涙なからに全てを話助けて欲しいと訴えた。
「相手のことは変えられない。変わるのは自分自信。」
何度も学んだ事を言われた。でも、今の私は手首を切ることしか思いつかず衝動的に手首を切っていた。奏斗君を手放す事なんて出来ない。誰かのものになるなんて許せなかった。私の苦しみを解って欲しい。
鏡の中の私はとても傲慢で愛に執着し恐ろしい顔をしていた。
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