第12話函館

「北海道行こう。」


 奏斗君が言い出した。函館行こう。どう?

私は少し迷った。家を空けるのはどうなんだろう?とか誰と行くって言おう?って考えて直ぐに答える事は出来なかった。

でも、


「行きたい。奏斗君と2人で函館行きたい。」


凄く嬉しかった。1ヶ月も先の予定が有ることが嬉しかった。旅行の計画をたててワクワクしながらその日を待った。

 駅で待ち合わせをして2人で新幹線に乗った。私自身旅行も久しぶりで何をどう支度したら良いのかわからなかった。座席に着いて手を繋いでこの喜びをかみしめていた。

ニヤニヤしちゃうからうつむいていると、


「なに?そんなに嬉しいの?」


奏斗君のからかうやうな声が聞こえてきた。


「何で見るの!?だって嬉しすぎる。奏斗君は私との旅行嬉しい?」


「嬉しいよ。だって楽しみにしてたもん。」


「今もねーこうして手を繋いでるし。」


奏斗君が繋いだ手を上げて私の手にキスをした。私は益々嬉しくなって反対の手で顔を隠した。外の景色を眺めながらずーと2人で居たい。と心の底から思った。

 函館に着く頃にはお昼も過ぎお腹が空いていた。駅で顔の位大っきいせんべいを買って2人で分けて食べた。流石観光地、人が多くて歩くのも大変な感じだったけど、知り合いが居ないこの函館でのデートは開放感があった。私達は恋人同士に見えているのか多少不安ではあったが奏斗君の優しい眼差しでその不安も無くなった。ホテルでチェックインを済ませて部屋に入って奏斗君がキスをしてきた。優しい小鳥の様なキス。2人ベットに寝転んで、顔を見合わせ笑い合った。夕ご飯にも中途半端な時間だったので2人で散歩することにした。海からの風は強かったがとても気持ち良くて何よりも私達を知っている人が居ない事が嬉しかった。コンビニに入ると見たことが無いカップラーメンや飲み物、御当地商品が並んでいて違う土地に来たんだなーと思ってると奏斗君が、


「食べてみよう。ルミさん好きなのカゴに入れて。」


 私は奏斗君が持っているカゴに御当地ジュースを入れた。奏斗君は、アルコールを何種類か入れて私に飲み比べ一緒にしよう。と言ってくれた。

 沢山迷ったが夕飯はやはりジンギスカンを食べることにした。思っていたよりもとても食べやすくてビールが進んだ。2人で同じ所に帰るのがとても嬉しくて思わず声に出てしまった。


「一緒に暮らしたらこんな感じなのかな?」


「最高だよね。俺アルコール好きだしルミさんも飲めるし、こんな感じ良いよね。」


夜風が気持ちよくて奏斗君が側にいて私は最高に幸せ者だと思った。


「ルミさんどれくらい40分位?」


「んーそんなに遅くならないはず…。」


「んじゃあ、まーそれくらいって事で待ち合わせね。」


私達は男湯、女湯それぞれ別れた。お風呂に入り足を伸ばすと今日の疲れが取れるような気がした。窓からの眺めも最高にキレイでまたまた私は幸せ者だと思った。奏斗君を待たせたら申し訳ないって思って急いで身支度を整えて出ると奏斗君はソファーに座ってアイスを食べていた。


「ルミさん、なに味がいい?」


「やっぱり、メロン味しか無いでしょ。」


奏斗君はやっぱりねーと言いながらメロン味のアイスを私に渡した。


初めて化粧を落とした顔見せてしまった…。気持ち悪いって思って無いかな?化粧を落とすのは止めればよかったかな?!まー仕方無いか48歳だものこんなもんだよね…。寝起きの朝、明日の朝はもっと悲惨な顔を見られてしまうはず…。それだけが憂鬱だった。


エレベーターに乗るとそんな私の気持ち知って知らでか奏斗君がキスをしてくれた。

部屋では御当地アルコールで盛り上がりのんびり2人くつろいだ。

 次の日は2人で観光地を巡った。意外な事に奏斗君は高いところがダメみたいで五稜郭では窓の側には近づけないでいた。


「早く下に降りるよ。」


そう言って窓から離れる奏斗君はとても可愛いらしくて愛おしかった。

夜は勿論夜景を見に行った。海岸線に沿って出来た光がとってもキレイで幻想的だった。

こんな場所に2人で来れた事をホントに嬉しくて誘ってくれた奏斗君に感謝した。

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