第10話いつか
お風呂に入りながら、ヤバいそんなつもりは無かったはずなのに…。会社での一番人気に誘われて年甲斐もなく好きになってしまった。引っかかるか試しただけだったはずなのに…どうする?このまま付き合う?でも私と付き合っても奏斗君は淋しい思いをするはず。奏斗君にはちゃんと結婚して子供を育てて家庭を築いていって欲しい。人並みの幸せの道を歩んで欲しい。
「手放そう。」
掴んだ幸せを欲しかった幸せを今すぐ手放そう。まだ引き返せる。ただの同僚に戻れる。さっきのキスの余韻が残る唇を見つめながら子宮がキューッと苦しくなる痛みを感じながら奏斗君に撫でられた髪を乾かしていた。
「なにしてた?」
奏斗君からラインが入った。私はドライヤーで髪を乾かしている事を伝え通話したいと言う奏斗君を待たせた。何も言わずにキスをした事、俺とのキス嫌じゃなかったか確認された。
「嫌じゃなかったよ。でも、ちゃんと奏斗君から一言欲しいなー。」
さっきまで手放すつもりだった恋。奏斗君の甘いマスクを思い出し子宮がキューッと鳴いているようだった。意気地が無い自分が嫌いだ。奏斗君との会話を楽しみたい私がいる。
「ルミさんの事好き。」
「うれしい。うん。私も奏斗君が好き。凄く好き。」
奏斗君は、うん。うん。と頷いて照れて笑っていた。私達は何度も自分達の気持ちを確認して電話を切った。
なかなか寝れない。
ホントにこれで良いのか?未来の無い付き合いはするべきではないのでは?お互いの気持ちをこんなに確認しても私は不安だった。
ずっと側に居ることは出来ない。歳の差なんか関係無いと奏斗君は言って、
「だって、好きになっちゃったんだもん。仕方ないよ。結構いるよ。女の人が歳上のパターン。」
私を慰めてくれた。
次の日、奏斗君の顔が恥ずかしさで見ることが出来ないでいたら奏斗君が私の所にきて
「ルミさん。こっち見て。」
私にだけ聞こえる様に言った。顔を上げ奏斗君の声のする方に目を向ける。奏斗君の優しい瞳が私を見つめていた。視線を絡め小さく微笑んで、
「おはようございます。」
取り敢えず挨拶をした。挨拶だけ交わしそれぞれ仕事に就いた。
私は嬉しさとこれ以上進んだら戻れなくなるのではないか?と言う恐怖に包まれた。色んな気持ちを隠して、いつか手放そう。そう心に刻んだ。
毎日が楽しかった。仕事をしていても彼の視線を感じる。顔を上げると奏斗君と目が合う。いつも側にいるようだった。夜は眠くなるまで話をした。今までの恋の話。奏斗君は最後はいつも自然消滅、音信不通になるらしい。私の時はちゃんと要らなくなったら言ってね。何度も念を押した。付き合ったばかりで別れの話をする不思議さ。未来が無い事は奏斗君も解っていたのかもしれない。
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