建国の祖が残した「人を直接傷つける魔術を禁じる術式」
それは未来の安寧を願ったはずが、幾星霜を経て聖国に大きなハンデと歪みを生んでいた――という導入が痛烈です。
建国者の理想を盾に甘い汁を吸う者、弱者を踏みにじる者、他国からの侵攻に怯える民……。
“理想論”の裏で腐敗が進む様子が軽妙な語り口で描かれ、読者は思わず頷いてしまいます。
そんな中、不幸体質の病弱王が、ご先祖の願いを現実に落とし込むため立ち上がる展開は、皮肉と希望が同居する魅力的なもの。
理想を笑い飛ばしながらも、それでも前へ進もうとする姿が胸に残る、星森大陸の再生物語です。
圧倒的に壮大な世界観と緻密な設定の中で、一人の皇子の成長をじっくりと追っていく物語です。
最初の印象、とにかく筆が強いです。
漢字や設定が多い中でも分かりやすく、これだけの情報量がありながら迷わず物語を追っていけます。
主人公の小聿は、幼く病弱でありながら、とても聡明な皇子。
本を読み、魔術を学び、祈りを捧げ、人を慕い、時には年相応の可愛らしい顔も見せる。
そんな彼が皇族として生きる世界は、決して優しいものではありません。
皇宮を取り巻く政治や思惑、複雑な人間関係。
国に根付いた信仰や魔術の体系も物語に深く関わり、幼い小聿にも容赦なく「皇子としてどうあるべきか」が突きつけられていきます。
それでもこの物語が惹きつけるのは、小聿がただ冷静で強い人物になっていくのではないところ。
誰かを信じること。
大切に想うこと。
失って悲しむこと。
それでも自分で考え、選び、また前へ進むこと。
ひとつひとつの経験が彼の中に積み重なり、後の彼を形作っていくのが伝わってきます。
そしてしつこいようですが、読み進めるほど驚かされるのが、その構成の緻密さです。
以前は何気なく読んでいた言葉や出来事、小さな小道具まで、ずっと先で思いがけない意味を持って繋がることがある。
あれはここに繋がっていたのかと、思わず前を読み返したくなります。
気づけば、一人の人物の人生を歴史の傍らから見届けているような気持ちになる物語です。
中華の重厚なファンタジーが好きな方、是非読み進めてください。
私はアニメでも見てみたいと思う一作です。
聖国に於いて十四歳という異例の若さで官吏となった文武両道の大天才、彩棐が、宮中での事件を解決していくところから、この物語は始まります。
美しく、優しく、高貴な血筋に生まれた彼は、素敵な仲間たちに囲まれ幸せそうに見えますが、その内面には暗い過去と深い傷を抱えており……と、ここまで読んでぞくぞくしてきた方は、絶対に読むべきです!
第一章の「走れ!新人官吏くん!」では、軽快な謎解き官僚ものとしての魅力で読者の心を掴んでくる本作ですが、第二章「月の皇子徒桜とならん」では、彩棐の幼少期に話が戻り、彼の過去が明かされます。
個人的には、この第二章で本当に心を奪われた感がありました。
その血筋と類稀なる才能ゆえに、幼いながらも命を狙われることになる彩棐(幼名、小聿)。
やがて五歳という年齢には重すぎる運命が彼に襲いかかり、目が離せなくこと必至。
宮中の陰謀、人々の愛と憎しみ、皮肉な巡り合わせ、避けようのない悲運……それらをくぐりぬけ、主人公がどのように成長し、何を成すのか、とても楽しみでありまた恐ろしくもあります。
登場人物も素敵キャラが揃っています。
主人公は本当に優しくて聡くて健気で愛しくなりますが、彼を取り巻く家族や友人、上司、同僚たちもとても魅力的。会話シーンが楽しいです。
社会人読者さんなら、「あーうちの上司もこんなに物分かり良かったらなー」としみじみしちゃうかも。
尚、この作品は、中華?古典風の皮を被りつつ、実態としてはかなり現代的な世界が舞台です。魔法はしっかりとありますが、割とサイエンスも発展しています。自動車とかあったり。
といっても、ご都合主義異世界ではなく、考察とロジックに基づく説得力ある異世界が描かれています。
そのため、人々の悩みや問題意識、社会制度、社会通念などは、とても共感、理解しやすいと思います。
文章も、決めるところはとても硬派に、繊細な場面は実に美しく、そしてアホなところ(賛辞です)はとことん軽やかに流れていくので、このテンションの緩急にも麻薬的魅力を感じます。
●こんな方におすすめ
・選ばれし者の苦悩というテーマに惹かれる
・闇と混沌が蔓延するリアリティある世界で、論理的に物事が整理され、解決されていく物語を読みたい
・人が人を想う優しい心情に触れたい
そして、傷ついた美形を見るのが好き!という、そこのちょっとアレなあなた。この作品に呼ばれてます。今すぐ読みましょう。
この作品がうもれてしまうのは惜しいので皆さん、ぜひ読んでください
第一章?まで読んだレビューです
圧倒的な世界観構築力に脱帽。14歳の天才主人公が魅力的で、雨の日に弱体化するという設定が絶妙にかわいい。硬派な政治ファンタジーかと思いきや、日常の官房業務や友人とのやりとりがほっこりしていて、そのギャップがたまらない。
特に集団アレルギー事件の推理パートは見事で、主人公の博識ぶりと論理的思考に引き込まれる。魔術システムも練り込まれていて、読み応え十分。
文章も美しく、キャラクターの掛け合いにニヤニヤが止まらない。続きが気になって仕方ない作品です。
星森大陸。
それはかつて、森に立ち星を造った星森の申し子が創造した星が有する最大の大陸。この大陸を治めているのは、星森の申し子の末裔と言われている舜堯と、建国の剣・源彩恩が共に乱れた世を治めて築き上げた【聖国】だった。
聖国建国からすでに1300年以上。
長き歴史の中で平穏な時もあれば、そうではない時もあったが、聖国は今もなお始祖である舜堯の末裔を国の象徴とし、星森の大陸を支配している。古き国の在り方や考えは古く、内側からの崩壊も起こり得る危機。
主人公の彩棐は、新人官吏として宮仕え中の身。見習い官吏ではあるが、彼はただの官吏ではなかった。聖国の歴史上、14歳で准三位の文官となり、同時に武官としても動ける優秀な人材で、しかも秀麗というおまけ付き!
そんな誰もが羨む才能を持つ彩棐であったが、実はひとつだけ欠点が····それは、雨で弱体化すること。雨の日だけは、誰もが認める天才少年もだめだめになってしまうらしい。
そんな彩棐本人は、ただの新人官吏として扱って欲しい気持ちが強く、特別扱いされるのは苦手なようです。しかしそれはどうしたって無理な話で、周りの注目は常に浴びてしまう。
このお話は、そんな特別な新人官吏の少年が、奇妙な事件に巻き込まれちゃう物語なのです。
どんな事件かは読んでのお楽しみ♪
ざっくり冒頭のあらすじを参考にレビューを書かせていただきましたが、中華風のお話が好きな方は絶対にオススメです!
架空の国が舞台で、登場人物も魅力的。
私個人としては、一度ハマったら抜け出せない沼をまたひとつ見つけてしまった、という気分です。気になる方は要チェックですよ〜✨