音が聞こえてくる。声が聞こえてくる。

『裏テーマとして、祝福としての文学、という題を解け』という難しい出題に挑んだ作品。村八分と生贄風習の生きる因習村という世界観そのものは、非常に暗くて重い。

なんだけど、この物語は確かな「救済の物語」でもある。故に、間違いなく「祝福としての文学」として、完成されている。

灰崎さんの小説って、「黙読していても、声が聞こえてくる」んですよ。本人の声を聞いたことがあるからというのもあるけれど、きっとそれだけではない。それは恐らく、文学をつくるものの「魂の重み」が作品に宿っているから。そういうことなのだろうと思います。