多くの場合、作者とキャラクターや出来事は一体です。この物語はキャラクターや出来事が現象的で、現象を観察する作者、その観察を教えてもらう読者、という不便な第三者視点の魅力で溢れています。
第三者視点はおおよそ神視点に傾きます。キャラクターの内面や出来事を物語の進行に合わせてその都度変更する利便性が最もわかりやすい利点だからです。しかしそうした利便性に頼らず、あえて距離を保つ第三者的な書き方の良さが、物語の各所に丁寧に置かれています。
この書き味は人間の内面や出来事を理解不能な存在、外からは伺いしれない存在であるという原則を守護しているようです。そうしながらも不可視の内面から漏れ出す香りを楽しむように書かれていて、まるで味わい深い現実に直面しているような稀有な感覚があります。
おすすめです。