閑話 あの時の裏事情

「みんな〜こんにちは〜!白影所属のダンジョン金野阿御です!今日はなんとかの有名な東京の渋谷ダンジョンに来ております!」


〔待ってました!〕

〔気をつけてね〕

〔どこまで潜るの?〕


 挨拶と同時にコメント欄が沸き立つ...

 私、金野阿御は白影というダンジョン配信事務所に所属している。

 先輩も後輩もスタッフの方々もとても優しく頼もしい方々なので今でもこの事務所に入ったことは後悔していない...

 今日はこの前の配信で告知していた渋谷ダンジョンでの配信だ...まぁ潜るのは一、二階層程度だけど...

 このダンジョンが危険とされている理由はよくある魔物が強力だという訳ではなく他のダンジョンに比べ階層が果てしなく多いという単純な理由である。

 階層が深ければ深いほど魔物もトラップも危険になる。

 だからこのダンジョンに入るためには最低でも自衛できるレベルのBランク超越者でないといけない。

 私?もちろんBランクだよ☆

 私がそんな危険なダンジョンに挑む理由それはこんな私を支えてくれる事務所のみんなに恩返ししたいから...っていうのもあるんだけどやっぱり評価が高いんだよね〜

 やっぱりみんなスリルに飢えてるんだよ...うんわかるわかる...

 そんな私もスリルをこよなく愛するチャレンジャーだからね☆


〔どうしたの?〕

〔...?画面固まったか?〕

〔お〜い!〕


「あ!ごめんごめん少し考え事してた、えっとなんの話してたんだっけ?」


〔斬狼先輩との買い物の話〕

〔さっさと話なはれ〕

〔ショッピングの話〕

〔ちくわ大明神〕

〔事務所の先輩の話〕

〔誰だ今の?〕


「あぁそうだったね!それで先輩がさアニメのキャラがガッツリ印刷してあるシャツ買おうとしてたの...流石に部屋着だと思ってたんだけどね外出用って言ったから私が全力で止めたんだよね...」


〔えぇ...〕

〔買いたくなるのはわかるけど流石に外で着ようとは思わん...〕

〔あの人めちゃくちゃ強いけどなんかズレてるよな〕


 ガサッ...


「どうやらお客さんが来たようですね!」


 D級の魔物月狼が草むらから飛び出してくる。

 それを得物の剣で弾き即座に切り込む...

 この1階層は草原で特に強い魔物は出ないがそれでも他のダンジョンに比べると若干強かったりする...


「あれ?おかしいな...この月狼魔石がない...?」


〔おかしくないか?〕

〔ちゃんと探したの?〕

〔なんか嫌な予感する...〕


 魔物体内に必ず魔石を持っている、それが魔物の生命活動を保つための部位だと言われているからだとかダンジョンの魔素を取り込んだ結果できたものだとか色々な説が言われているがとにかく魔物には必ずどこかに魔石があるはずなのだ...


「分かったもうちょっと探してみる...」


〔別月狼の魔石なんて価値低いからよくない?〕

〔ダンジョン配信者はダンジョンに異変があったら管理局に報告する義務がある〕

〔そうだったけ?〕

〔最近決められたんだとよ〕


 そうやって月狼の死体に近づいた時だった...

 死体が立ち上がり真っ二つに開いた...

 開いて見えたのはグロテスクな血肉でもなく傷がついてない毛並みでもなく紫色の渦巻いているゲートだった...


〔罠だ!〕

〔阿御ちゃん逃げて!〕

〔こんな低階層でゲートの罠ってあるの?〕

〔普通はない!やっぱり今の渋谷ダンジョンはおかしい...〕


「あっ...ヤバ...」


 急いで逃げようとしたがいくら超越者だとしても目の前まで迫ってきているものから瞬時に逃げることはできなかった...


 〜〜


「──痛っ、ここ何階層?」


 あたりを見渡すと先程の草原とは打って変わってどこか恐怖を感じる薄暗い洞窟のような場所だった。


〔これ何階層だ?〕

〔分からない...〕

〔似たような階層はあるけどこんなに暗くない...〕

〔阿御ちゃん大丈夫?〕


「ドローンも連れてこられててよかった〜うん私は大丈夫!こんなんでもBランク超越者なんだぞ☆」


〔阿御ちゃん後ろ!〕

〔後ろ魔物!〕

〔危ない!〕


 コメント欄を読み後ろを振り向くと黒いゴリラのような...猿のような魔物がいた...

 目は赤く爛々と輝いておりその目は獲物をどう調理しようか見極めているようだった...


 〜〜


「ぐはッ...」


〔猿強すぎんだろ〕

〔阿御ちゃん逃げて!〕

〔この魔物調べたけど見たことない〕


「大丈夫大丈夫だから...必ず帰る!──ッハ」


 猿の魔物の手がブレて猛スピードで迫るが避けることができずモロに受けてしまう...

 そして私はこれが最後になることを悟り遺言を考え始めた...


 〜〜〜


「はぁっはあっ...やっと出られた...みんな今日はありがとう...それじゃバイバイ」


〔バイバイ〕

〔気をつけて帰ってね〕

〔結局あの女の子なんだったんだ...〕

〔無事でよかった〕


 そしてドローンの電源を落として帰路に着く...


「あの子にお礼言わないとな...誰なんだろう...」


 私は一人呟いた...

 今日はどことなくスッキリとした空気に感じた...


  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 読んでいただきありがとうございます!

 一応更新は続けていく所存です!

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