戦友よ

show3

こんな戦争なんて

市街地にて、敵による攻撃を受けていた。

同じ隊の戦友であるダレスと共に物陰に身を潜めている。

「くそっ!なんなんだよ!」

我々歩兵小隊は市街地に進入したが、敵からの攻撃がなかった為油断していた。

しかし、それがいけなかった。

直後、建物に身を潜めていた敵兵士らにより掃射を受けた。

それにより何名もの兵士がやられた。

兵士らは瓦礫や建物、装甲車に隠れ応戦した。

それでもやつらは機関銃、小銃じゃ力不足だ。

「はぁ…はぁ…くそ…やつら油断した所を狙いやがって…」

卑怯な奴らめ…とダレスは言う。

「機銃掃射が激しい…頭すら出せないぜ…」

さっきから何度も頭上を弾丸が過ぎて、何度も瓦礫やすぐ横の地面に当たる。

「弾薬は?」

「俺は70くらい」

88発あって、8発は撃って込めた弾も少し撃ったはずだと、ダレスは変わらず冷静に言う。

俺は仲こそいいが、こいつの冷静さは苦手だ。

「そうか、俺はまだ80発はある」

最初に込めた弾はまだ残っているからな。

「敵は何処にいるか分かるか?」

「分かるわけが無いだろ…逃げるのに精一杯だったからな…」

それもそうだ、誰もが死にたいなんて思わない。

自分が死ぬかもしれないのに敵の場所なんて見てる余裕はない…

「反対側の…反対側の建物に隠れてるやつなら見えるかもしれねぇ…」

そう言い、反対側に隠れている兵士にハンドサインを送る…が

「やっぱり駄目だ…掃射が激しい…」

敵の位置が分からなければ撃っても…

『ダァン!』

「ダレス!?」

瓦礫の凹凸を利用してダレスが射撃する。

「くそっ!機関銃手が死ぬほどいやがる!」

「場所は分かったか!」

ダレスは射撃をやめ、体を半回転させて俺の横につく。

「ああ分かったさ、けど数が多い」

多分中隊だろう、とダレスは言う。

「くそったれ…」

「ほんとにくそしか言わないな君は…」

そんな事をダレスに言われる。

「悪いかよ」

「別に悪いとは言ってないだろう?」

笑みを浮かべて言う。

「こんなクソみたいな状況でよく笑える…」

そのとき…

『ジャギンッ!』

そんな嫌な音と共にヘルメットが前に傾く。

「ぐっ…な、なんだ!?」

上半身だけを起こしているような姿勢をさらに低くして、ヘルメットを外す。

「けっ…掠ってやがる」

ヘルメットのシェルは銃弾が掠ったせいで軽く抉れている。

「だ、大丈夫か?」

流石のダレスも動揺している。

「ああ…大丈夫だ。運が良かったよ…」

今になって鳥肌が立ってきやがった。

「そろそろ弾薬が尽きてもいいだろ…」

そう思っていた矢先…

『ドガアァァン!』

そんな轟音が響いた。

「まさか…敵戦車か…!?」

ダレスと俺は身をすくめた。

しかし、直ぐに安心することになる。

先に口を開いたのはダレスだった。

「あ…戦車…敵じゃなくて味方だ!」

その言葉を聞いて俺は顔を上げる。

間違いない、形に戦車の横に描かれた部隊章…紛れもない味方だ。

しかしなぜ機械化部隊が?

そんな事を考えているとまた戦車が発砲し、向かいの敵部隊が機銃掃射を行っている建物に当たる。

「榴弾…」

すかさず戦車の機銃掃射が入る。

それか何回か繰り返された後、残った敵兵が棒に布を括り付けた白旗を持って出てきた。

「ようやく…終わった…」

「だな…」

全身の力が抜ける。ダレスも同じようだ。

「機械化中隊か…」

後続のトラックからぞろぞろ兵士が出てくる。

「最初からこっちを送れっての」

ダレスが文句を垂れる。

全くもってその通りである。

「俺らは敵さんがいるかいないか確かめる為の捨て駒ってわけか…」

どうりで無線手が多かったわけだ…

まあ…そのおかげで助かったわけだが…

「はぁ…ちっと中隊の奴らの顔でも拝んでやるか」

「そうだな」

俺とダレスは立ち上がり歩いていく。

『タァン!』

突然一発の銃声が響いた。

「味方じゃない!どこだっ!」

そう言ったとき、ダレスが突然倒れた。

「…ダレス?」

突然の出来事に一瞬体が固まったが直ぐにダレスの体をさすり

「おい!ダレス!大丈夫…か…」

ヘルメットの後部に穴が空いている。

銃弾の穴だ。

「そ、そんな…嘘だよな?ダレス!嘘だよな!」

体をゆするがピクリとも動かない。

ヘルメットを外すと血が流れているのがよく分かった。

それでも信じられなかった。

いや、信じたくなかった。

「ダレス…!ダレス…」

泣きながらダレスの体を起こし、抱きしめる。

「なぁ…嘘だと言ってくれよ…」

ダレスの傷を押さえ言う。

『ドシャ』

後ろから音がする。

振り向くと撃たれ落ちたのだろう、敵兵がいた。

「あいつが…あいつがダレスを…」

ダレスをそっと地面に寝かせ敵兵に近づく。

まだ息があるようだ

「クソ野郎…」

ナイフを取り出し両手で掴み、敵兵の胸に突き立てる。

「ぶっ殺してやる」

そのままナイフを引いて胸を引き裂く。

敵兵が小さな呻き声を上げる。

そんな事は気にしない。大切な戦友が殺された怒りしか沸かないからだ。

「地獄に落ちやがれ」

立ち上がり拳銃を取り出し頭を狙う。

そのままマガジンの弾が無くなるまで…敵兵の頭に弾丸を撃ち込む。

「はぁ…はぁ…」

仲間に声をかけられるまでそこに立っていた。

ぐしゃぐしゃの頭を見つめながら。

俺はいったい何を考え、何を思いながらそこに立っていたのかは分からない。

ただただ、怒りと悲しみと虚しさが頭と心にあった。

そんな頭にも、一つの言葉が浮かぶ

「戦争なんて…無くなりゃいいのに…」

小さな雫を目から流しながらそう、口にした。

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戦友よ show3 @30cdb

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