第3話 ただ者じゃない男
何を言ってるのこの人…しかもこの状況で…
後ろから現れた男はマントを身にまとい顔がよく見えない。盗賊たちは謎の男を殺せと言って一斉にこちらへ向かってくる。私は謎の男に気を取られていたせいで、馬車から私を引きずり下ろした盗賊の男に後ろを取られ捕まった。そんな私を見て謎の男は威圧感のある声でただ一言こう言った。
「俺の女に触るな。」
その言葉で空気が一変した。何が起きたのか分からなかった。なぜなら、一瞬で圧倒的な数の盗賊たちを謎の男が一人で倒した。もちろん私を捕まえていた男もすぐに倒された。
(この人…ただ者じゃない…すごく強いわ…)
「助けていただきありがとうございます。ところで、あなたは何者なんですか?」
私の質問に答えるように謎の男はマントのフードを取った。そして私はその顔を見ると驚きが隠せなかった。
「…ユーリス第一王子殿下…」
ユーリス第一王子殿下。彼は私がやって来たこの隣国、シュタレスティア王国の第一王子。一度夜会で話したことはないけれど、挨拶をしたことがあった。ユーリス第一王子の剣術は誰もが認める腕前なのは噂で聞いていた。もちろん、私のお父様も認めるほど。でも、まさか目の前でその剣術を見ることになるなんて。もちろん盗賊たちは殺してないけど、剣の立ち回りの上手さは見てわかるほどだった。
「やっと見つけたよ。俺の愛する人を。」
「あの…それはどういうことですか…?」
さっきから私を見て俺の愛する人だと言うユーリス第一王子。
「そのままだよ。」
…そのままだって言われても…
話したことはなく挨拶しただけなのにどうして…
「マーガレット。君の屋敷へ連れて行ってくれ。」
「…え?」
「ほら、早く馬車に乗って。」
馬車に乗ることを急かされるけどその前に行かなきゃいけないところがある。
「あの、お待ちください!今から行きたいところがあるのですが…そちらに行ってからでもよろしいですか…?」
少し考えるような素振りを見せるユーリス第一王子。
「分かったよ。マーガレット。」
「ありがとうございます…」
私はここまで乗ってきた馬車に戻り、レイスと御者の方を起こした。さすがに御者の方に今すぐ馬車を動かすのは危ないから少し馬車の中で休んだ。盗賊はというと、いつのまにかこの場を去って逃げていった。
確か盗賊の男があの時、「命令された」って言ってたけど、一体、誰に…まあ、いずれ分かるかな…?
それよりも…
「あの…どうして私の名前を?あの時、夜会で会った時は挨拶を交わしただけなのに…」
「それでも覚えてるよ。なぜなら、ずっと君を好きだったからね…」
ずっと…?その夜会の時からってこと…?
「ユーリス第一王子殿下。失礼ではありますが、一言よろしいでしょうか?」
「ああ。」
レイス…何を言うの?
「ユーリス第一王子殿下。まずは助けていただきありがとうございます。ですが、マーガレット様を弄ぶようなことはしないでください。」
「レイス…!失礼よ…!ユーリス第一王子殿下、申し訳ありません。」
「マーガレット様…僕は心配で…」
「レイス。それは分かってるけど、ユーリス第一王子殿下はそんな人じゃないわ。」
「…マーガレット様がそう言うならそうなのかもしれませんね…ユーリス第一王子殿下。先程は失礼な発言をしてしまい申し訳ありませんでした。」
レイスは心配性なところがある。
でも、そうなるのは多分、ロベルトのことがあったからだろう。
「ユーリス第一王子殿下。どうかお許しください。レイスは私にとって家族のように大切なのです。」
ユーリス第一王子殿下は許してくれるかな…
ユーリス第一王子殿下は噂によると心を許さない限り周りには冷たいらしい。
「マーガレットの家族のように大事な存在なら許す。」
「「ありがとうございます。」」
レイスを許してくれて良かった…
レイスが居なくなったら私は困る。
「御者。そろそろ大丈夫か?」
「はい。」
「マーガレット。御者はこう言っているがどこへ行くんだ?」
「あの…伝えたところへお願いします。」
「承知いたしました。」
色々あったけど、私たちは街へ向かった。
ユーリス第一王子も一緒に。
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