第25話
最高記録だった。
鈴音が合流して以来、春夜のパーティーはそのまま14階層まで突き進んだのだ。
一日で11階層から14階層まで下りた快挙!
今まではなかった、他のパーティーも経験したことのない驚異的な速さだった。
これには、伊藤クラン長までもが感嘆したほど。
「春夜君、新しく作ったパーティーが順調なようですね。精鋭で集めたのでしょう?」
「いいえ。知り合いで集めたのですが、思ったよりもうまく回っていますね」
「信頼できる人々で集め、効率まで確保したとなれば、これ以上ないことです。春夜君が1軍に上がってくるのをお待ちしています」
「頑張ります」
その日の夕食、春夜は鈴音とのパーティープレイを記念して鍋を食べることにした。
ところが、三日月と
「私も鍋が好き」
「私もです!」
突然乱入してきた二人のせいで、春夜の鍋計画は2人パーティーから4人パーティーに変更された。
元々は家でささやかに作って食べるつもりだったが、ちゃんとした店に行くことになったのだった。
その日の夕食は雨だった。そして雨の日の鍋は格別だった。健太さんの車に乗って鍋屋に行った四人は、鍋屋ですき焼きを注文した。
すき焼きが調理される途中で始まった雑談。
「そういえば春夜さんは剣術の腕がすごいですね。剣術はどうして始められたんですか?」
朱音の質問だった。春夜は過去を思い出した。
「ただ、歩き始めた頃から父が木刀を握らせてくれまして。今考えると正気の沙汰じゃなかったんですけど、当時はそれが当たり前というか。なんというか、うちの家系、戦国時代から続く剣術家系みたいで…」
「すごい!大名の剣術指南役とか、そういうのですか!?」
「いいえ。そういう話は聞いたことありません。ただの剣術家系みたいですけど、みんな何かとプライドが高くて、親戚と会うたびに使命がどうとかいう話をするので…とにかくみんな剣術に熱心なんです。だから僕も自然と雰囲気に流されて剣術に熱中したんだと思います」
「あ~、やっぱり春夜様は他の人とは違う何かがあったんですね。じゃあ三日月さんは?どうしてダンジョンに入ったんですか?」
「父がやれって」
「え?」
「社会指導層は持てる特権に見合う責任が伴うから、家門の誰か一人はダンジョンに行って社会に奉仕しなければならないんだって。自分が行けばいいのに」
なるほど。三日月さんはエリート家系か…何かそんな感じはしていた。お姫様みたいな感じというか。何より探索時の杖やローブが最高級品なのを見て、金持ちだとは思っていた。
「朱音さんは?」
「あ!私は面倒を見なきゃいけない弟妹が多くて。父も母もいないので、タケルと私がアルバイトとダンジョン探索で稼いでるんです」
「あ、そういえばタケル君は大丈夫ですか?」
「その後、すぐに元気になりました!まだ入院中ですけど、退院までそう長くはかからないみたいです」
「良かったですね」
春夜が笑うと、朱音もまた春夜に向かって笑った。二人の笑顔が交差した瞬間、鈴音が割り込んだ。
「お兄ちゃん!私のことはどうして聞かないの!」
「お前はまあ…友達に自慢するためだろ?」
「ま、間違ってはいないけど…それ以外にもあるんだから!」
間違ってはいないのか…
「どんな理由なんだ?」
「お兄ちゃん一人に背負わせるわけにはいかないじゃない。お父さんもいないし、お母さんも病気だし…私だってお兄ちゃんを助けなきゃ。それと…正直、ちょっと格好良く見えたりもしたし」
鈴音は頬を掻きながら小さな声で付け加えた。兄がダンジョンで活躍する姿が収められた映像を見て、自分もあんな格好いい探索者になりたいという憧れが生まれたのも事実だった。
春夜はふっと笑って鈴音の頭を撫でた。
「ああ、わかった。でも、辛くなったら言うんだぞ。わかったな?」
「うん!」
和気あいあいとした雰囲気の中ですき焼きは美味しく煮え、四人は笑いながら夕食を楽しんだ。たとえそれぞれの事情は違っても、「ダンジョン」という共通項と「パーティー」という名の下に集まった彼らは、いつの間にか固い絆を形成していた。
家に帰る頃には、雨はますます強まり、雷鳴まで轟くほどだった。
健太の車に乗ったまま、四人は東京の夜景を眺めた。
魔石の発見で全盛期を迎えた人類の文明。その痕跡は東京の華やかな夜景に溶け込んでいた。
三日月は頬杖をついて窓の外を眺めていたが、春夜はしばらくその光景を見つめていた。鈴音はそんな春夜の視線を感じて、いたずらっぽい目で春夜を見つめた。朱音は…タケルとメールをやり取りしていた。
朱音と三日月を降ろし、最後に春夜の家へと向かった。傘がなかったので、二人は急いで走って家に向かった。
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