第18話
配信をしなくなってから二日が経った。
春夜の動画がアップロードされていたチャンネルには、春夜を恋しがる数多くのコメントが寄せられていた。
コメント
-春夜、どこ行ったの;;
-もしかしてダンジョン潜ってて何か大変なことになったんじゃないよね?
-月下一閃の一般クラン員は配信禁止条項があるから。伊藤クラン長が許可してくれな-いと配信できないんだ。
-クランの戦力露出のせいかな? 残念だな。春夜の配信が一日の楽しみだったのに…
ベッドに横になってゴロゴロしていた春夜は苦笑いを浮かべた。
たった数日配信しただけなのに、こんなにも自分を待ってくれている人がいるなんて……。
過分な愛を受けている気がした。
『配信をさせてもらえるよう、頼んでみようか?』
今回のボス戦は間違いなくビッグイベントになるはずだった。
だとしたら、その場面を配信すれば大きな収益を上げられるかもしれない。
そう思った春夜は、苦笑した。
『俺もまったく、俗物になったもんだ』
いくら母の病気のせいだとはいえ、あまりにお金のことばかり考えているのではないかと思った。
とにかく、春夜は多くの人々から愛されていたのだから、その人たちのためにも配信には復帰すべきだと思った。
そして翌日。
健太から連絡が来た。
彼の声は普段より一層弾んでいた。
「春夜さん!おはようございマッス!クラン長にご報告したところ、お二人の10階層ボスへの挑戦を快く許可してくださいましたッス!ただ、条件がおありだとのことですッス!」
「条件、ですか?何でしょう?」
「クラン側で準備した育成チーム3名とご一緒していただきたいとのことですッス!春夜さんと三日月さん、お二人だけでは危険性が大きいですし、かといって野良パーティーと組むのも不確実性が高いので、クラン側でパーティーメンバーを準備したそうですッス!この条件、お受けいただけますでしょうかッス?」
「ありがたくお受けします。クランで準備してくださったパーティーメンバーとご一緒させてもらいます。」
「ふむ、ではそのように報告しますッス。それから、ミノタウロスに関する攻略情報もまとめてお送りしましたッス。ご確認くださいッス!」
「攻略情報は午前中に熟読します。ところで健太さん、もう一つお願いしてもよろしいでしょうか?」
「はいッス、何なりとお申し付けくださいッス!」
「今回の10階層、配信してもいいでしょうか?皆さんが俺を待ってくれているようなので。」
すると健太が声を上げて笑った。
「流石は春夜さん、お心が本当にお優しいッスね!それでしたらご心配には及びませんッス!月下一閃クランのボス戦攻略は配信することになっておりますッス!収益分配は春夜さんが8で、クランが2ですッス!」
「ああ、そうなんですね。ありがとうございます!」
「はいッス、では後ほど!」
電話を切り、春夜はすぐに三日月にも連絡してボス挑戦の許可と配信についての話を伝えた。
「……配信……?」
三日月の声はいつものように落ち着いていたが、
「はい。もしご迷惑でしたら、しなくても大丈夫です。」
「……いや。構わない。君がしたいなら、すればいい」
予想外にあっさりとした許可だった。
春夜は彼女の配慮に改めて感謝した。
そうして午後2時になり、前田健太が車で春夜を迎えに来た。
車に乗ると、三日月を含めて4人がいた。
女性が二人と、男性が一人だった。
「こんにちは、西園寺春夜です」
春夜が挨拶すると、車内にいた人々がそれぞれ春夜に向かって挨拶を返した。
「どうも。竹中義弘です」
「中村由香です。よろしくお願いします」
「
竹中義弘は30代半ばから後半に見える男性だった。
中村由香は鈴音と同じくらいの年頃で、未成年にも見える少女だった。
そして明霞は……20代に見える黒髪ショートの女性で、かなりの美人だった。
「ところで
「ええ、そうよ。中国から帰化したの」
「ああ……日本語、とてもお上手ですね」
「褒めすぎよ、うふふ。春夜さんの配信、よく見てました。よろしくお願いしますね」
「はい」
春夜の家からダンジョンまでは20分ほどの距離だった。
その20分間、三日月を除いた4人は雑談を交わした。
「皆さんはどうしてダンジョンに潜るんですか?」
中村由香の質問に最初に答えたのは、30代半ばから後半の男性、竹中義弘だった。
「子供が病気でしてね。白血病なんですが……治療費で借金がかさんでしまって、深く潜らないといけないんですよ」
春夜と事情がかなり似ていた。
春夜は同族意識を感じた。
「ああ、いけない。少し空気を重くしてしまいましたね。では、中村さんの話を聞かせてもらいましょうか?」
「あ、あの……笑わないって約束してくれたら、教えますけど……」
「笑うわけがないじゃないですか。我々は皆、命懸けで戦っているんですから。安心してお話しください」
「実は、片思いしている男の子がダンジョンランカーでして。その子に釣り合う人になりたかったんです」
「……」
「……」
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