【大喜利企画】5000文字以内で、異能バトルものを書いてください〔参加作品〕

楠本恵士

【大喜利企画】三題噺『王都』『ジョハリの窓』『ツバメ』

地獄の『王都』で悪魔フルフルが、堕ちてきた年上の女と愛人の『若いツバメ』を『悪魔のジョハリの窓』で試す

【大喜利企画】三題噺『王都』『ジョハリの窓』『ツバメ』主催・セレンとセシウムさま


以下のルールを守って参加してください。


①『王都』『ジョハリの窓』『ツバメ』の三つの言葉が入ってること。


②8000文字以内で完結させること。


③一話で完結させること。


王都・君主制の国家のうち、国王を元首とする国家の都市。


ジョハリの窓・自分の特性や自分に対する理解を4つの領域に分類し、それぞれを「窓」にたとえて考察


①開放の窓

「自分も他人も知っている自己のことで、自他ともに理解している性格の窓」


②盲点の窓

「自分では気が付くことができていないが、他人は知っている自己の窓」


③秘密の窓

「他人には知られていない、自分だけが知っている隠された自己の窓」


④未知の窓

「誰からもまだ知られていない、自己も他人も知らない自己の窓」


ツバメ・年上の女の愛人である若い男



【本文】


 その日の西洋地獄は、火竜の炎が穏やかに暗黒の空を舞っていた。

 地獄の竜が口から吐く灼熱の炎が、罪人たちを骨まで焼き尽くし、断末の悲鳴が地獄に響き渡っていた。

 骨まで黒い炭になった、罪人の骨に風を送るフイゴの悪魔『グザファン』が魔風を吹きつけると、罪人たちは骨に肉付けされて元の姿に戻り、またドラゴンの炎で焼かれたり牙や爪で引き裂かれる。


 地獄王国の黒雲が渦巻き広がる空に、大魔王『ルシファー』が最下層のコキュートスの氷の中で、胸まで閉ざされもがいている姿を楕円形に同時投影されているのを見てから。


 頭に鹿の角を生やした美形の悪魔『フルフル』は、玉座に座り直して目前で覚えている、男女を頬杖をして眺めながら言った。

「そんなに、怖がるなよ……この階層の地獄『王都』に堕ちてくるほどの罪をおまえたちは、犯したんただろう」


 女は年上で貴族、女がかばっている男は女よりも年下の使用人の『男のツバメ』だった。

 男女の恋仲に介入する悪魔フルフルが言った。

「地獄は今、大量の罪人が地上から急に押し寄せていて大変でな……さまざまな悪魔が、分担して処理にあたっている……なんでも、地上で海面が爆上がりする、とんでもない規模の人災が起こって同時に、世界中に大戦や内戦や民族紛争が一度に勃発したらしい……導火線に点いた火が、次々に火薬庫に誘爆するように」


 フルフルは指の先に、炎を灯して女と男に見せた。

「と、いうワケで……わたしが、おまえたち二人の審判をするコトになった……よろしく、さっそくはじめようか心を映し出す『悪魔のジョハリの窓』を」


 フルフルが空中に、四つの区切ったマス目を描く。

「まずは〝開放の窓〟だ……自分も他人も知っている自己のことで、自他ともに理解している性格を映し出す」


 解放の窓が開き、若いツバメと年上の女の生前の周囲から見えていたり、見せていた姿が映し出される。

 赤面して見ている女と男に、フルフルが言った。

「この窓は、まだ普通の窓だ……ほうっ、外面では女は良妻を演じて、夫や周囲に若い男と不倫しているのを、悟られないように過ごしていたのか……ほうっ」


 二つ目の〝盲点の窓〟を開いてフルフルが言った。

「自分では気がつくことができていないが、他人は知っている自己の窓だ」

 そこには、ベッドで不倫している女と若い男の姿をドアの間から覗いている、使用人たちの姿があった。

 赤面して取り乱す、貴族階級の女。

「ほうっ、おまえたちは隠していたつもりだろうが、周囲の者たちには知れ渡っていたらしい……もちろん、旦那にもな」


 フルフルの審判は容赦無く続く。

「第三の窓〝秘密の窓〟他人には知られていない、自分だけが知っている隠された自己の姿だ……性癖もこの窓には含まれる」


 秘密の窓には、今までの窓を遥かに越える場面が映し出されていた、恥ずかしさに顔を手で覆う女と若い男。

 さすがの悪魔も少し呆れる。

「おまえたち……こんな趣味が……これは、悪魔のわたしでもドン引きするな……おまえたち、ケダモノか」


 ついに、第四の【誰からもまだ知られていない、自己も他人も知らない自己の姿】〝未知の窓〟が開かれる……深層意識の奥底にあるトラウマや性欲が解放された姿が映し出された。

 誤魔化すように叫ぶ女。

「わーッ! わーッ!」

 絶句したフルフルはポツリと。

「悪魔を越えている……いくら悪魔でも、ここまで鬼畜にはなれない……まさか、血縁の身内まで引き込む秘めた性欲願望があるとは……動物以下だ、畜生だ」

 そう言って。

 フルフルは、四つの窓を閉じた。


 女が涙目で、鹿の角を生やしたフルフルに訊ねる。

「それで、あたしたちの罪状は? どんな地獄へ?」

「おまえたちは……」


 フルフルは、遠くに見える村を指差して言った。

「無罪釈放……どこへでも好きな場所に行って、暮らせばいい最後の審判があるまで自由に……おまえたちと同じ波長の、淫らな仲間の村に自然と引き寄せられるから……淫乱な自由奔放もほどほどにな」


 フルフルの言葉に少し驚く年上の女。

「いいんですか?」

「おまえたちが、なぜ地獄の『王都』に堕ちてきたのか、よーくわかった。怒った旦那から団子みたいに剣で、串刺しにされて殺された理由もな」


 フルフルは指先でサラサラの前髪を、無造作に掻き上げて言った。

「よく誤解されているが……西洋地獄のここは、罪人を悪魔が裁く場所じゃないぞ……おまえたち、人間が抱いている地獄のイメージは、人間たちが改宗目的で勝手に作って利用している部分も多いモノだ……自分たちの宗教を信仰しないと、恐ろしい地獄に堕ちる……とな」


 フルフルの言葉に安堵した女が、火竜の炎で繰り返し焼かれたり、大鍋で煮られている者たちを指差して訊ねる。

「でも、あの人たちは責め苦を味わっていますが?」

「あぁ、あいつらは悪魔でも手を焼く【真性のマゾだ】……放っておけ、おもえたちは地獄で好きに生きろ……もう死んでいるがな」


 女の顔が、『若いツバメ』を抱きしめてパアッと明るくなる。

「じゃあ朝から晩まで……淫乱、奔放、不倫、エッチのやり放題で……性癖や性欲を、地獄で大解放して」


「ほどほどにしろよ……カクヨムの、性描写セルフレイティングに抵触しない程度に……」

「なんのこっちゃ?」


  ~おわり~

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