異世界エンジン開発記

@SYU1161

第1話 事故って転生

早朝。私は、日課を始める。最初はランニングを始め、十二キロを一時間で走りきった。そのあとは、千五百グラムの木刀で、三十分間素振りを始める。そうして、素振りを終えた私は、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べ、仏壇の前へ向った。そして、手を合わせて、こう言った。

「お父さん、おじいちゃん、今日も一日頑張ってきます。行ってきます」

そうして私は、会社へと向かった。

 私の名前は、風前咲八ふうぜんさくや。私は、クルマやバイクに用いるエンジン、ミッションの開発及び製造を手掛ける中小企業の若手エンジニアだ。今日も今日とて設計、試作、再設計と、慌ただしくも楽しい日々を送っている。今日はどんなマシーンを作ろうかと考えていると、会社に着いた。

「おはようございます。美影さん」

「おはよう。風前さん」

 挨拶を返してくれたのは美影さん、美影祐介だ。私の上司で今回のプロジェクトの総合リーダーだ。

「美影さん、今回のプロジェクトの開発スケジュールは組めていますか?」

「ああ、しっかりと組めているよ。だって、風前さん待ってるの苦手でしょ、だから夜なべしてスケジュール組んだから、あとは、スケジュール内でじっくりと開発をしてくれ。ってことで、私は今から仮眠する!!開発の方は任せたよ、風前さん」

 と言い、この部署にだけある仮眠室に向かっていった。私は美影さんに心の中で分かってる〜うと思いながらパソコンの前へと向かった。

 今回の開発、いや、プロジェクトの名前は、【A-Zエージシリーズ エンジン・ミッション開発】という名前で、A-Z、つまり、AからZ、二十六個のエンジン、ミッションを開発するという、大規模プロジェクトだ。そして、このプロジェクトの肝はできるだけパーツの規格を合わせ、流用できるパーツは、流用し、専用のパーツを極限まで減らした上で、特性、特徴の違うエンジン、ミッションを作るというプロジェクトなのだ。このプロジェクトは生前のお父さんが企画、発案したプロジェクトで、私が入社した時に始まった。だが、プロジェクトが始まって1年ほどした時に父は車にひかれて亡くなった。そして、そのプロジェクトを父直属の部下だった、美影さんが引き継いだのだ。だからこそ、私はこのプロジェクトに気合が入っていた。

 そして、私は開発を始める。まずは、キャドという、設計図を描くためのソフトを使い、設計図を描き始めた。このキャドは、3Dモードと、2Dモードがあり、その二つを使い分け、設計図を描くこと一週間、私は一つのエンジンの設計図を書き上げた。そうして、次の日から一週間でパーツを作った私は、パーツをくみ上げて、エンジンを作り、試運転をするために試験場に持っていき、テストを開始する。このエンジンは一万一千回転まで回る様に作っている。そうして、エンジンをかけて、一万一千回転まで回す。そして、一万一千回転まで回りテストを終わろうとした時、エンジンが爆発した。あ、ヤベ、と思ったときには遅く、私は近くにいたせいもあって全体に高温のガスを食らった。そうして私は何も考える暇なく死んだ。


 私は、目を覚ました。知らない天井だ。窓からは朝日が差している。

「あ! 起きた! ちょっと待ってて、お母さん呼んで来る」

と言って金髪の少女が部屋を勢いよく出て行った。

「???」

数分後、階段を上がる音が聴こえてきた。部屋のドアが開き、先ほどの少女と金髪の女性が入ってきた。

「おお、おきたかい。大丈夫かい? 痛いところはないかい?」

「あ、はい。特に痛いところはないです。ところで、ここは?」

「ここかい、ここは、世界樹、ヴィンズツリー目下の街ツリービレッジさ。昨日の 晩に家の前に倒れていてね、家に入れて寝かせて置いたのさ」

「そう、ですか。ありがとうございます」

「ところであんた、どうして家の前に倒れていたんだい?ここらじゃ見ない顔だし、どこから来たんだい?」

私は記憶を巡らせる。そして、

「確か……事故が起きて、それで……」

 あ、そっか。あの時私死んだのか。

「何か思い出したかい?」

「ええ、まあ。なぜ家の前に倒れていたかは謎ですが、その前のことは思い出しました」

 少し間があった。するとぐぅ~と私のお腹が鳴った。

「あんた、お腹空いたかい?」

 と金髪の女性が言う。

「あはは、そうですね、お腹すきました」

 私は照れくさくなりながら答えた。

「それじゃ、ご飯にしましょ。あんたも食べな」

「ありがとうございます」

 私は食卓へと案内された。そこには、かぼちゃのポタージュと大きなバケットとパン切り包丁、そして、バターとベリー系のジャムが置かれていた。

「どうしたんだい?ぼーっとつたって、早く席について食べましょ」

「そうですね」

私は席に着いた。

「そしたらいただきましょう」

 と言い、女性と少女は食べ始めた。私も続いて、「いただきます」と言って食べ始めた。すると、

「ずいぶんと、懐かしい挨拶をしてから食べ始めるのね」

「「?」」

 私と少女はキョトンとする。

「いいや、何でもないさ。そういえば、自己紹介がまだだったね。私は、レーナ、レーナ・シルビーさ、よろしく。そして、うちの子の、」

「アイだよ!!よろしく!」

と言ってアイちゃんはにっと笑った。

「私はふう……あれ? 名前が思い出せない。れあ?」

「大丈夫かい?」

 私の名前……何だっけ? 思い出せない……

「ほんとに、大丈夫かい? 少し落ち着いて」

そこにアイちゃんがコップに水を入れて持ってきてくれた。

「はい、お姉ちゃん、これ飲んで落ち着いて」

私はそれをもらい一口飲んだ。すると、自然と少し落ち着けた。

「ありがとうございます。少し落ち着きました」

「そうか、それはよかった。名前か……そうだ、あんたさえよかったら、私が付けても良いかい?名前を思い出すまでの名前」

「そうですね、お願いします。」

「そうだね…」

少しの沈黙。すると突然、

「ユイなんてどうだね、レーナ」

と男性の声がした。そして私は声のしたほうをむく。そこには、六十歳ぐらいの袴姿で白髪の男性がいた。

「突然、入ってきてどうしたんだい、霧丸。

「突然ではないさ、ちゃんとノックしてアイに入れてもらったさ」

「それで、なんの用だい? いつも世界樹の麓にいるのに、」

「大きいイノシシが取れたから解体のお願いに来たのさ。そしたら、今の話が聴こえたから、ユイなんてどうだい? と声をかけたんだよ。レーナ」

男性が私に視線をむける。

「随分と懐かしい雰囲気だね。とても懐かしい気分になるよ。私は霧丸という、よろしくね。それでどうだい、ユイってのは、」

「良いですね。私はユイって名乗ります。ありがとうございます」

「そうか、それはよかった。あとここの住人には敬語は要らないよ。みんな家族みたいに仲が良いからね。そろそろ、話をしまいにして、レーナ、イノシシの血抜きと解体頼んでいいかい?」

「いいよ、やっておくよ」

返事を聞いた、霧丸さんは帰っていった。そのあと、レーナさんはイノシシ?の血抜きと解体を始めた。

「イノシシにしては巨大すぎません? これ」

と言い、私はそのイノシシらしき、巨大なものをかるくみあげる。

「確かに、これはイノシシではないさ、アーマードボアっていう、魔物で、肩や背中、頭に甲殻があるイノシシさ。ランクはこのサイズだと…A+ぐらいかね。」

「魔物? っているんですか?」

「いるさ。いなかったらこのイノシシもいないさ」

「ですね……あと、ランクは何ですか?」

「ランクはね……説明すると長くなるから、明日か明後日でもいいかい?」

「わかりました。ところでこの甲殻の材質って金属ですか?」

「そうだね、ヴィオルツメタルって言う金属さ。別名、紫黒鉄(しこくがね)さ。刃物によく使って、硬く、軽く、しなやかな金属さ。今、使ってる包丁もヴィオルツさ。それと、手が空いてるなら、手伝って」

「わかりました」

そして、私はレーナさんの手伝いをした。解体をしていると日は暮れ、夜になりアーマードボアの焼肉を食べ終える。するとレーナさんが声をかけてくる。

「そういえば、ずいぶんとイノシシの解体に慣れてたね。ここにくる前もやっていたのかい?」

「そうですね。子供の頃にある程度身に付けました。」

「ほ〜ん」

そうして、その後は、たわいの無い会話をして一日を終えるのだった。この時の私は知らなかったが、ヴィオルツは超高級素材で魔物からしか取れないというものだった。



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