転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

第1章 天使降臨!!

第1話 はじめまして、アリアナでしゅ

 大好きなラノベは、あくまでラノベだったから楽しかったのだ。

 それが、現実世界となってしまったなら、それはただの日常である。


 私はトコトコと頑張って歩く。

 この小さな体はまだ不便で、記憶にある大きな体と違って、か弱く不便だ。


 だが良い事もある。

 村を歩くと、皆が声をかけてくれる。


「あらアリアナ、今日も頑張ってるわね」


 ニコニコと目じりを下げて、皆が幼女の私にメロメロなのだ。

 私は満面の笑みで答えてあげる。


「はい! 今日もがんばりましゅ!」


 前世、石田まゆみは寿命を全うして、目覚めて起きると異世界に転生していました。


 ◇◇◇◇◇


「ほらアリアナ、ちゃんと食べて大きくなりな」

「ありがとうでしゅ」

「ほっぺにパン屑つけて可愛いわねアリアナ」

「うれしいでしゅ」


 チートだ。

 可愛さはチートなのだ!


 この教会は、孤児たちを育てていた。

 気づくとここにいたのだが、前世と比べて大違い。

 皆が可愛いと世話を焼いてくれ、私にメロメロなのだ。

 人生このまま楽勝モードで、突っ走らせて頂きたい。


 いえね、私の前世のあだ名は、意地悪婆とか守銭奴の鬼とか、ひどいもんでした。

 飽和の時代に、堅実に生きて何が悪いのか。

 周囲と同調するのが美徳の日本において、個性を出して何が悪い!

 倹約と貯蓄は、生きる上での大事な才能のはずなのだ。


 そう猛進して、生き抜いて財産を築いて孫も生まれた。

 夫や子供たちは、何度も私を諫めつつも、私の残した財産で幸せになったはず。

 心の底から、異世界の私に向かって感謝しろバーカバーカ!


「どうしたのアリアナ。お肉が硬い?」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんにあげるでしゅ」


 だって乳歯に辛いのよ安い肉は。気を利かせてスープとかで煮込みなさいよ。

 内心はどうであれ、私の表向きの言葉に、周囲の世話役の子供たちは涙ぐむ。


「こんなに小さいのに、なんて優しい子だ」

「何があっても守ってあげるからね」

「そうだよ、貧しくてもアリアナがいるんだ。僕たちもがんばろう」


 うん、私のために頑張ってね〜。

 ニッコリ笑ってあげると、天使だー! と周囲がさらに蕩けていった。

 うん、デロデロに蕩けるといい……ふふふ。


 ガタガタの大きなテーブルでの食事を終えて、私はせっせと机を拭いた。

 小さな体は不便なものだが、椅子を足場に、ほぼ体を乗せて手を動かす。

 この前、礼拝に訪れた大工のおじさんに、補強して貰ったばかりなのだ。

 せっかくニスまで塗ってもらったのに、大事に剥げないように使わねば。


「偉いわアリアナ」


 シスターが感涙しながら、私を抱き上げ頬ずりする。

 ちょっと、許可なく抱きしめないで! 別料金とるよ!


 とてちて歩く私を、微笑ましく見つめるシスター達。

 そして、ヨイショと私を抱きかかえ、

 運び始めた子供たちよ、私を称えよ。


 そのまま、子供部屋の一番上等なベッドに寝かされた。


「さあ、ねんねしよ?」

「ねんねしゅる。みんなもねんねでしゅ」

「明日はみんなで森に行って、甘い苺を一杯とろうね」


 わかったから、とっとと寝かせろ。こちとら睡魔に弱いんだ。

 寝て、起きて、いつもの粗末な食事を済ませ、森に向かう。


 自給自足はいいものだ。働かざる者食うべからずってね。


「次は私がアリアナを抱っこする」

「ダメだ、次は僕が背負うんだから」


 私ほどの可愛さになると、自らの足で歩く必要すらないのだ。

 うむうむ、くるしゅうない。


 町はずれの教会の、そのまた裏の森の奥、目的地はもうすぐだ。

 お日様の下、目的地に辿り着いた。


 本日のターゲットは、木苺の一つでクスプリという実を乱獲する予定だ。

 低く隠れて茂る実を見つけるのは、一番小さい私の得意とするところ。


 さあ、主役の活躍だ。

 ぴょんと緑の葉っぱの中に飛び込んだ。


 教会の経営は芳しくはない。

 子供たちが十人近くもいる中で、皆で畑を耕したり、森の恵みを収穫したり。

 そう、ある種のエコでありロハスである。意味がよくわかんないけど使ってみた!


「とったでしゅよ」


 私は持たされた小さな籠に、プチプチともみじの手でもぎ取った紫の実を差し出す。


「おおおっ、やっぱりアリアナが一番見つけるのが上手だな」

「こんな小さくて、お利口さんで、きっと神様がくれた才能なのね」


 もっといい才能が欲しいやいっ!

 いや……あるのだ。ここは異世界、そうチートという魔法スキルがこっそりあったのだ。


 この世界では、奇跡の力といわれるいわゆる魔法スキル。

 あまりにも稀有で珍しいその力、持つ者は限られているらしい。


 私は、自らの自我に目覚めた瞬間に気が付いた。


 ――やだ、私スキル持ってるじゃん――


 そして、その能力が何かを理解した瞬間に喜びは終了した。


 ――なんだよ、このスキル『』って! ――


 不貞腐れて、アゥアゥ泣いたら、オムツ交換された。


 苦い記憶を思い出しつつ、ともかく目の前の、金になる実をエッホエッホと、もいでやった。

 ただの八つ当たりも兼ねている。


 やがて時間となり、山ほどのクスプリを持って教会に帰ってきた。

 休む間もなく、次は加工に入る。


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