第9話 死毒都市

 探索者にとって有能な商人とのツテは必要不可欠である。

 生産系ジョブの探索者たちが造る装備品やアイテムも年々高性能になってきてはいる。しかし、それでもドロップ品には敵わないのも事実である。

 しかしドロップ品の収集には運が関わってくるため、全ての装備品を自力で集めるの難しい。そんな時に必要な装備を取り寄せてくれる商人が大事になってくるのだ。


 秀樹にとって、そんな頼れる商人の1人であった勇次郎から、近々独立する予定の青年を紹介された意味を秀樹はしっかりと分かっていた。

 その上で、勇次郎から青年の名前を聞かされた秀樹は、引っ掛かりを覚える。どこかで聞いたことのある名前であった。


「…来馬柊。どこかで」

「独立の話を本人からされた際にな、3年ほど前に秀樹くんに世話になったと言うものでな」

「3年…あ、『死毒都市』の。なるほどだから探索者に」


 勇次郎の言葉で秀樹は柊について思い出す。

 3年前、とあるダンジョンでダンジョンボスすらダンジョン外の都市部に出現するという、未曾有の『氾濫』が発生した事があった。

 その際にボス以外のモンスターや逃げ遅れた住民の救助に駆り出されていた秀樹が助けた家族の1人に来馬柊という青年がいたのだ。


 そのボスは討伐される際に、最後の抵抗で周囲に撒き散らした『死毒』が、現在もその都市を侵食しているため、今も『死毒都市』と呼ばれ人が住める状況では無なくなってしまった。

 しかし、その青年は秀樹に向かって探索者になってこの都市を再建させると宣言していたのだ。


「…『死毒都市』の再建を計画するとなれば、探索者でないと関われない部分も多い。実際、うちが再建を主導すると申し出ても断られたしな」

「政府も協会もメンツを気にしますからね。あそこは今でも立ち入り禁止区域のままですから、勝手にやる訳にもいきませんし」

「その上、金は募ってくるからな…はぁ」


 ダンジョンブレイクも、ボスが『死毒』を撒き散らすことも食い止められず、『死毒』の浄化も出来ずにいる現状、協会や政府と無関係な企業が万が一でも解決してしまえばメンツはガタ落ちである。

 そのため、協会側による『死毒都市』の再建計画の協賛企業を募る説明会では、金は出せども口は出すなという思惑が丸見えだったのだと言う。


 世界でも3本の指に入るほどの未曾有の大災害により崩壊都市として認定された『死毒都市』においてもまだメンツを気にしている所に、秀樹などは呆れてしまうが、昔からの体質は中々変わらないものである。

 しかし、探索者が自ら計画を立ててやるとなれば話は変わってくる。

 協会側はわざわざ動かなくとも自らの功績となり、失敗しても協会側には損失は無く、対外的には解決のために動いていると言い訳が立つのだ。

 

「まあ、そういう訳だ」

「ええ、既に竜刀包丁でお世話になったようですし、また何かあれば頼んでみようと思います」

「ぜひそうしてくれ。あ、私から柊の話を出したことは…」

「勿論、本人には黙っておきますよ」

「頼む」


 その言うと、勇次郎は照れくさそうに頭をかくのであった



 

 

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