組織が、動き出す
無悪善吉が見えなくなった所で、呉白蘭は改めて竜ヶ峰リゥユに聞いた。
その内容は、竜ヶ峰リゥユを襲った者に関する話であった。
「それで……馬鹿弟、嶺玄は何をしに来たのかしら?」
呉白蘭の弟に当たる敵組織の鴉。
竜ヶ峰リゥユからは簡単な話を聞いたが、呉嶺玄は何をしに来たのか、詳しく呉白蘭は聞く事にしたのだ。
「ああ……あいつの事だけど」
裏切り者の顔を思い出して、竜ヶ峰リゥユは忌々しいと舌打ちをする。
そして、彼女の脳裏、回想として出現する呉嶺玄と言う男は、砂漠地帯で磔にされていた。
竜ヶ峰リゥユの使用する禍遺物〈龍骨槍〉は、地面から龍の骨で出来た杭を生成する能力である。
これにより、呉嶺玄は腹部に鋭い刃の如き杭が突き刺さり、背中から無数の杭が伸びていた。
身動きする事も出来ず、木魚の様な兜の隙間から血液を垂れ流し、呉嶺玄は大きな声で声を荒げていた。
『がははッ!!いやぁ、強くなりやがったなあァ!!リゥユ!!』
彼女の成長を嬉しく思う様な言葉だった。
だが、竜ヶ峰リゥユにとっては敵の言葉である。
嬉しいと言う感情など一切無かった。
彼女は冷たい表情を浮かべたまま、龍骨槍を構えていた。
『御託は良い、何しに来たの?』
何故、奈落迦で出会ったのか。
彼女達を狙う為にやってきたのではないのか?
その様な疑念を抱く竜ヶ峰リゥユに対して、呉嶺玄は叫んだ。
『あァ?別に逢いに来たワケじゃねぇよッ!!』
何と、彼女達の元に出たのは偶然であると言っている。
狙って攻撃したワケでは無いのならば、何故攻撃したのか。
それは至極単純である。
『唯の鴉狩りさ、オレらの組織の方針、知ってるよなァ?』
組織には必ず、物事を達成する為の指標が存在する。
回顧屋嶺蕩が禍遺物を回収し、それを売って利益を得る事を目的とする様に。
『強さを求めて手当たり次第ブッ殺すッ、てなァ!!』
彼が居る組織、〈戮殲鏖蒐〉は、禍霊は無論、同業者である鴉等、出会った存在は何であれ自らの手で滅ぼす事を方針として掲げている。
それでも、最近は彼らの活動は無く、数年間は大人しくしていたのだが、今になって彼らの活動が目立って来た。
『今ァ面白くなって来やがんだよ!!〈第六天摩天楼〉と〈三千世界帝国〉の抗争が終結して、多くの組織がナラカの最下層を目指し始めた!!』
戦国時代から存在した組織、〈
武士、武将、剣士、剣客、その様な殺し合いの時代から存在し、奈落迦で組織と共に国を構築した三大派閥の一つであった。
そして〈
両者、血の気の多い連中が多く、最下層付近を根城にする第六天摩天楼と、最下層への到達を目指す三千世界帝国による侵攻によって抗争が勃発。
これにより、多くの組織が最下層へと潜る事が出来なかったのだが、数ヵ月前に、その抗争が集結したのだ。
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