転生したら天使になったんでロボットで高速戦闘します
4:55yoake
第1話 転生
深く白に包まれた小さな神殿、石づくりの柱で囲われたその中に鎮座する祭壇に安置された異常なまでの白――。
廻りと明らかに隔絶した空気を纏った肢体―――
人のは無いはずの白い肢を背中から地面に届かんと自然に流している『それ』が目を覚ます―――。
あたりを見回す。霧に包まれて白くあいまいな境界の中、背後に感じる石のひんやりとした感覚から手を放し、手さぐりに先に手をのばす。冷たくまとわりつく空気が肌を刺す。
「うぅ、、」
頭の中に浮かび上がっては消える疑問符が、先へ先へとおぼろげながら体を駆り立てる。
もともと寝かせられていた台座のようなものに座る形でなんとか身体を起こすことができた。石造りのひんやりとした温度が体を預けていた台から伝わってくる。
石造り―――そもそも何故私はこんなところに、、、?
(背中が重い、、、まるで重心が後ろ側なような、、、)
体を覆う透明なヴェールのようなものが動くたびに揺れて淡く光る。
(とにかく、ここから出なきゃ―――)
不安定な足で台座から立ち上がり、すぐ近くにある柱のようなものを頼りに進む。
(歩くたびに視界が揺れる、、、)
柱に手をついたまま、顔を下に下げて少し休む。
まだ見心地のような感覚が抜けない、、、ここはどこなのだろう。
しばらくそこで止まっていたら、幾分か楽になった。
再び歩こうと顔を前に向けると―――
「――ッ!?」
突如、目の前が光に包まれる。
余りの眩しさに一瞬目をつむり、反射的に片方の腕を差し出した。
少し待って、光が収まってきた。
そう感じて、腕をどけてみると、
そこに広がるのは、この世界の果てまで突き抜ける、空に浮く島々だった――――
「ほんとにどこなんだろう、ここ、、、」
目の前に広がる大小さまざまな空に浮く島を見ながらつぶやく。
どこまでも広がっているようにも感じる青々とした空が白い跡を引いて風を吹かせている。吹く風が肌をなでる。
眼下に広がる地上には広大な草原や海、遠くのほうには山脈らしきものもある。
壮厳な景色に気を取られがちだが、その中には明らかに常識の外にある異常なものも見られる。
「そもそも空に浮いてること自体謎だしなぁ、、、」
今いる島の広さは半径10mほど。青々とした草が生えて、その真ん中神殿にある石造りの祭壇で目覚めたようだ。
全体的な雰囲気としては古代ローマのような白亜の建造だった。
祭壇には豪華とまではいかないが、それなりの装飾が施されていた。
「おまけにこの翼も変に体になじむしなぁ、、、ほんとにどうなってるんだろう、、、」
体を横に捻って振り返るような姿勢をとる。
その視線の先には、左右1対の純白の翼があった。
白く透き通るような素肌、光を跳ね返して輝く腰のあたりまで伸びた銀髪―――
―――そのすがたは、さながら天使―――。
最初に目覚めたとき、まず思ったのは体の違和感だ。背中に窮屈な思いをしたのと、それと同時に肌を突き刺して、湿った冷たい空気に不快感を覚えたことだろう。
姿形がここまで元々とかけ離れていたが、何の違和感もなく動かせる。
(前世で私は、特に何も変わったこともなく当たり障りのない普通の人生を生きたはずだし、、)
実のところ、元居たあの世界に嫌気の差していた節はある。
変化の少ない変わらないいつもの繰り返し。
生活水準自体は悪かったわけではない。むしろ上のほうだったが、指示されたことに従って働き、機関の歯車としてこき使われ続ける生活はうんざりしていた。
こんな摩訶不思議な状態に遭遇していることは、半分科学の奴隷たる彼女からすれば信じがたいことだが、それ以上に別の気持ちが私を支配していた。
「どうせだし、今度は前までできなかった自由を満喫してみますか!」
そう。彼女は古くからのネット文化に触れてきた人間、、その中でもとりわけライトノベルや異世界転生物には目がないタイプだった。
せっかく、自由を手に入れたのだ。前世のような仕事漬けから解放された反動は大きい。小説で見た夢物語のような生活をするのもいいかもしれない。
そう考えると、気の向くままに思いついたことをしだす私であった――。
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