殺されちゃダメだね、だから殺そっか。

ネルネル寧々丸

第二章本編本格始動

1話

「ねえ、私酔っちゃった…」


パーティ会場で妖艶な雰囲気を漂わせる、腰まである長い美髪と青い星空のようなドレスを靡かせ微笑む美女。

その美貌に、男も女も二度見する——だが実際は男。


「だからぁ、個室行こ?」


迷いなく男を誘う。


そしてその女装男に魅惑された者の末路は


「がはっ…!」


「本当お前加齢臭凄いよなあ、びっくりしたわ顔近づけた時。」


死。あるのみ。


ーー


「ん〜今日も一仕事終えましたっと!」


コードネーム・ブラックシルク。

殺人現場の部屋の窓から飛び降りて現在逃走中です。


煌びやかな政治パーティに潜入、そして汚職政治家の殺害。

これは組織から出る給料もいい。


のんびりと歩く。

どこ向かおうか。着替えてバーでも行こうかな。あーでも妹が心配…成人してるのに気にかけすぎてもダメだな。


……彼氏できたら殺すけど。


女の子引っ掛けたい。

でも女装公言すると女子ウケってか人間からの受けが悪くなるんだよねぇ。


急に怒声が聞こえる。


「おい、そこの女!何をしている!」


今回のパーティの護衛か。


「女の子に怒鳴っちゃダメだよ。」


「え男?」


2、30メートルはある距離を1秒で潰す。

この運動神経はキャンディー使用者、つまりドーピング常習犯の特権♡


「じゃあな」


ナイフで喉を掻き切る。

腕にベタベタした赤い液体がつく。


きたね。

安物とは言えない値段してるんだけどな。


「…今日はおとなく帰るか……」


「…っおい…」


えなんで生きてるの?喉切ったよ?喋るなよ?


なにこいつ?化け物?


「てめえなんで…女装して…がはっ」


「要件くだらな…!」


理由。

もう聞こえないだろうけど。


「昔好きだった女を追いかけてるだけだよ。知らんけど」


ーーー


ーー

・組織最強 キャンディーチョコレート


午後9時、仕事終わり。血まみれの半袖ジーンズから着替えてパジャマ。

いつものツインテールも解いて、お団子。


壁のシミと傷跡は日に日に増えている。相変わらず金ねえなうちは。

科学に金使いすぎだよまじで。


警備のために軽い装備をした男は無視して、ある部屋の前で立ち止まる。

まあまあ高級感のある、可愛いを1番に装飾された水色の部屋。


「元気ぃ?ダル絡みしにきたよー!」


毎度の如くドアを蹴り破り、親友の部屋に話に来た…んだけれども。

当の本人がいない。窓のガラスが床に飛び散っている。外側から割られた。


部屋はグチャグチャ。


血痕は無い。

カーペットの上にある木片…は私がドアを蹴り破ったからだ。


「ちょっとそこの男ー、この部屋から物音しなかった?」


返事はなし。

さっさと状況整理しろよ役に立たねえな。


「…んな簡単なこともわかんねえの?お前ここに既に3時間はいるはずだよなシフト的に。」


「いえ、音はあったのですがいつもの発狂かと思ってしまい」


「あっそ減給な。」


…ちなみに発狂してる主な原因は私が指示に逆らって好き勝手やってるせい。



ーーーーー


ーー


チェリーサイダー


「あの、ここは何処かしら?」


目が覚めると鉄筋コンクリートでできた地下。手足は鎖で拘束されている。

足跡、機械音は目の前の2人以外からなし。防音室なのか本当にいないのかは不明。


…楽しくショッピングをしていたのだけど。


ボスは私に飽きたのかしら。そんなわけないわね。

飽きたとしても彼は私を手放せない。


じゃあ攫われた?

不注意だった。


「チェリーサイダーが目覚ましたぞ。本人確認しようぜ」


164センチ男。極端な心配性かバカね。


「必要ないわ。空色の髪、黒い目、身長やスリーサイズも一致している。」


208センチ女。スリーサイズを測られたらしい。まってなんでスリーサイズ的に知られてんの?


「ちょっといろいろ突っ込みたいんだけど、私にその権利ってある?」


「うん、どんまい。Hカップくん」


キツイピンク髪に染めた女が見下してくる。この貧乳がよ…!


「権利とか以前にお前らは誰?なぜ私は捕られているの?」


冷静に考えて、交通を牛耳っているコーラシュリンプか、まあそこらの有象無象?


「名前くらい名乗ってみなさいよ、誘拐犯」


晴空キャンディーチョコレートが助けてくれるもの。それまで死ななきゃいいの

 …まあ答えないか。だったら騙し合い。


「私、今日ダーリンとスイパラ行く約束してたんだけど!」


もちろん嘘。ほんとはコストコ行く約束だった。普通に美味しくて好きなのよね。


「 感情的になっちゃって、答える義理はないわ。答えなくっていいからねリア。」


「解ってるっての。アルトは心配しすぎだ。」


こいつら恋仲かよキッショ。コードネームだとしたらこんな無難でオシャレな奴初めて聞いたわ。いや名前としては男女逆だから無難じゃないわ。


「ねえ答えてよ…」


涙目は鉄則。こうすれば私を弱い奴認定するから。ちなみに声上擦らせたりするとさらに効果的よ


「スイパラねえ。大丈夫よ、1日一回デザート食べれるわ。」


1日一回、糖質はとらせてやる…つまり質素な飯が1日一回ね。


「デザートなんて嘘でしょう?!私でも分かるわ!」


最低限の知能は示さなきゃね、馬鹿すぎたら組織が舐められちゃう。


「そっちのダーリンが心配しちゃうわね。自分のボスのメンタルケアはしっかりしなさいな笑」


「この世界、てか今の日本で生きてるなら最初から覚悟してたでしょ?」


拷問が目的?…いや、自分で情報を吐かなきゃ、単純に痩せるかイーゼルクラッシュに帰れる時には死んでるって意味でしょうね。


遠回しな言い方してるってことは演技に気づいている?鎌掛け?


「何言ってるの?ダーリンが心配するって。自分のこと?ダーリンは、てかうちのボスは心配なんて…」


これは大丈夫。お互いにあだ名で呼んでいるんだから、隠す気なんてない

と思ったのだけど…


「現実逃避がお似合いだな。」


あからさまな嫌悪を顔に2人は鞭を手に取った。


ーーーー

ーー


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