超兵器の戦争

星野林

第1話 幻想会創設

 時は1900年……秋津洲皇国において無数のダンジョンが出現する様になる。


 当初天災の類だと思われ、皇国政府はダンジョンを封鎖に留め、一部ダンジョンを軍民による調査を行うに留める。


 しかし、世界最大の領土を有するルーシー帝国による戦争が1904年より始まり、秋津洲皇国は大陸及び海上にて大敗を決してしまう。


 戦争自体はルーシー帝国の革命騒動で秋津洲皇国が大陸利権の放棄、中華北部地域やコリア半島はルーシー帝国の基盤に組み込まれ、秋津洲皇国は賠償金は取られなかったものの、アジア地域における二流国家の烙印を世界から押されることになる。


「皆さんにはそんな世界に転生及び憑依してもらいます」


 ライブ会場の様な場所には無数の人魂達が浮かんでいた。


 神様と思われる人物がステージに上がり、皆に説明を行っている。


「まずこの世界の日本こと秋津洲皇国は滅亡の危機に瀕しています。ロシア帝国に似たルーシー帝国との戦争に事実上敗戦。大陸利権も放棄、残っている植民地は台湾こと台北島のみ……」


「しかし、私は日本の神様として秋津洲皇国には滅亡してもらいたくはありません! なので秋津洲皇国各地にダンジョンを創り、そこから取れる素材、ダンジョンに潜り、その食べ物を摂取することによる肉体の強化……しかも戦争に負けたことにより国民も拡張よりも内向きの思考に染まっています!」


「ただ、このままでは世界各地の強国の経済植民地……もしくは本当の意味で植民地にされかねません!」


「なので転生、憑依で貴方達をその世界に送り込みます! どうか日本……いや、秋津洲皇国を列強まで押し上げて、主権国家として復活させてください!」


 そう神様に言われた。


 そして俺達は列に並び、次々と転生、憑依を始めるのだった。









 俺はどうやら転生らしく、産まれたのは新潟の小作農の次男らしい。


 この時点でだいぶヤバい産まれである。


 転生の場合は少し年代がズレるのか、俺が6歳の時に敗戦の報を聞いたので、1898年産まれであることが確定した。


 で、うちの住んでいる村にもダンジョンがあるのだが、軍から危険である為に行かない様にと言われていたが、敗戦と多分憑依した者達が法律を変えて、ダンジョンを積極的に活用していくようにと通達が入り、軍の協力をすることを条件にダンジョンに入ることが許された。


 小作人からも人を出すように言われた親達は長男は家を継がせなきゃいけないので、7歳の俺を差し出して、ダンジョンに潜るように言われるのであった。






 ダンジョンで軍人さん達の荷物持ちとして従軍し、銃でダンジョンのモンスターを討伐すると、持ってきたナイフを使ってモンスターの素材を確保していく。


 従軍することで僅かながら駄賃が貰えたり、ダンジョン内の植物を採取して食べることが許されていた。


 俺の前世は自衛隊だったので、ある程度のサバイバルスキルを持っていた。


 そのためダンジョンで取れる食材を使ってその場で料理することで飢えをしのぎながら、危険を顧みずに行動していくことになった。






 俺は前世の知識のおかげで学校での成績が飛び抜けてよく、ダンジョンで従軍していたことで軍人さんからの覚えも良かったので、推薦状と資金援助をしてもらって地方の陸軍幼年学校に入学することになる。


 そこでは俺の様な転生者がポツポツ居て、そいつらと直ぐに仲良くなる。


 陸軍幼年学校では3年間まず教育を受け、次に中央幼年学校にて2年間の教育を受けることになっている。


 年齢は満13歳以上、15歳未満となっており、13歳、14歳の受験に合格することで入学することが許されるが、戦死者の遺児なんかは優先的に合格することが許されていた。


 ただ転生者達はダンジョンに潜るように神様から勧められていた為に、幼いうちからダンジョンに潜り、そこで取れる食材を食べることで肉体的に超人となり、試験を悠々と突破。


 大人顔負けの怪力だったり、身体能力を持つ者も多い。


 幼年学校に入れなかった転生者や憑依者達は中学に進学する者、兵役で目覚ましい成績を残して軍に入ろうとする者、研究者や他の道を目指す者に色々と分かれるのであった。










 多くの転生者が中学や幼年学校で勉強をしている頃、憑依者達は軍民官問わず、前世がある者でグループを作っていた。


 彼らはすでに社会的地位があるため、比較的自由に動けることを利用して、各々、秋津洲皇国の近代化をさせるために奔走。


 ある者は第一世界大戦の様な戦争が起こり得るとして造船所の経営に乗り出したり、ある者は太平洋戦争でボコボコ撃墜された航空機の歴史を変える為に、航空会社を有志の者と創業した者。


 他にも政治的な混乱をさせない為に政治家を目指す者、長期保存食を作りたいとインスタント食品製造会社を起ち上げる者と様々であった。


 特に熱心だったのがダンジョンから産出される素材を軍民問わず使えるようにしようと研究するのが多かった。


 ダンジョン素材を使えば軽量かつ硬度があったり、不思議な力で物質に魂を宿すようなことも出来るのではないかというオカルト的な物まで研究されていった。


 そして1910年、転生者や憑依者の相互調整を目的とした組合……幻想会というのを起ち上げるに至った。


 そして物語は幻想会起ち上げから2年が経過した1912年から始まるのである。










 首都京東のとある料亭にて、幻想会の面々が集まり、話し合いを行っていた。


「単座戦車? なんだそれ」


「はい、ダンジョンの素材を使うことでゲーム感覚で戦車を動かす事が出来るかもしれないと思いまして、今研究しているのですよ」


「1人で戦車を動かすってことだろ? そんなことが可能なのか?」


「操縦系を自動化させれば可能です。ただそのためにまずは戦車開発を進めていくしかありませんが……」


「まだ戦車のせの字も無い時代ですからね……」


「でも単座型戦車が出来るのであればこれほど魅力的な事は無い」


「イメージとしてはモビルスーツの様な多目的兵器に単座型の戦車ができれば可能かもしれません」


「超兵器で戦う日本軍か……」


「今は皇国軍ですがね」


 ダンジョン素材を使った超兵器の開発が進められていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

超兵器の戦争 星野林 @yukkurireisa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ