理系女子、源氏物語に迷い込む ― 安倍晴明の召喚で始まる平安革命記 ―

吉晴

0-0 起意 ― 研究室にて

考えたことはありますか。





電気もガスもない、漆黒の闇に包まれる夜のことを。

科学という言葉さえ存在せず、病や天災は祈りと呪いでしか受け止められなかった時代のことを。

心の痛みや苦しみが現実と結びつき、“怨霊”としてしか語られなかった認知のありようを。




そんな平安時代の人々の本質は——令和の今を生きる私たちと、実はほとんど変わらないということを。





私の人生という物語の主役は、私。

けれど同時に、私は誰かの物語の脇役でもある。

だからこそ私は、どちらの人生も、ちゃんと演じきりたいと、願っています。




……でも、本当にこれは「私の物語」なのでしょうか。

もしかしたら、私をどこか高いところから見ている“誰か”が描いた物語なのかも。





かつて紫式部はこう記しました。


「日本紀などは、ただかたそばぞかし。これらにこそ、道々しく詳しきことはあらめ」

——『源氏物語』「蛍」より





この物語は、ただの異世界転移ではありません。



“私”とは何か、そして“私たち”とは何かを探る――読者であるあなたと私が、ともに歩む、ひとつの思考実験の記録なのです。




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