クズちゃん180°物語

辻田鷹斗

第一話 幼虫になりたい

春が来た。花開いた桜はまばらに散る。静謐な住宅地の間にある公園は場にそぐわぬ桜の木が立っていた。その公園の向かいにある家こそ、あたし達は住んでいる。今年もこの時期ならではの窓から見る桜は最高だ。2階端の部屋で今日も勉強をする………………………かも。

あたしの名は本間葛(ほんまくず)。低身長ショートカットが唯一の取り柄だ。世間一般で言うど底辺高校を卒業して無事、なんとか大学に入学!!という訳にもいかず。

なんと浪人してしまったのだ。

いや、浪人という肩書きはあくまでも建前である。何とか親に「来年絶対〇〇大学合格してみせるから!」と意気込んだものの、本音は

『ブラブラと今いる実家に住みつきたいのだ』

「あーーー、この机の上に佇む小さな幼虫になりたい!!」

緑色の小さな小さな幼虫が必死に広く長い茶色の板を這う幼虫。そんなありもしない創造をし、今日も机の上でぼーっと惰性に暮れていた。とにかくニートとしてなーーんもせず一生を終えたいのである。しかしながら今の社会はそんな不埒な思惑を許さないだろう。

これは、あたしがいかに社会というしがらみから抜け出し、反撃できるのか?という低俗な物語である。

という訳にもいかず。あたしは気付かぬ内にしがらみから抜け出す行為を辞め、ひらひらと社会へ羽ばたいていったのだ。これは、あたしのクズ人生を抜け出す高尚な成長物語だ。

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