貴方へ
@Hiro1105
貴方へ
貴方は、よく道に迷うね。
まるで地図のない旅に出てしまったかのように。
同じ場所をぐるぐる回ったり、
「間違ってないかな」と、
何度も立ち止まったりする。
誰かが描いた“正しさ”に従おうとして、
自分の足元すら見失ってしまうこともある。
でも、そんな貴方の姿を、
私は決して「弱さ」とは思わなかったよ。
それはむしろ、“自分の人生に真剣である証拠”だ。
「航海」という言葉がふさわしいと思ったのは、
結婚という1つの節目を迎えた時なんだ。
貴方の人生に、
育ってきた環境が荒れていた“私”という不確定な要素が入ってきた。
きっと貴方はこれからもっと、
生き方や過ごし方に悩むことになるだろう。
心の波は穏やかではいられないだろう。
だけど
雨が降る日もあれば、晴れる日もある。
船が進まない日もあれば、
思わぬ追い風に背を押される日もある。
嵐にのまれそうな日もあれば、
魚がたくさん釣れる日だってある。
航海とは、そういうものだ。
それが「生きるということ」
彼女に婚約祝いに贈った時計は
フランク・ミュラーの航海をモチーフにしたモデルだった。
それは単に海の雰囲気を映したものではない。
「人生を冒険として受け入れる覚悟」を
持って欲しいと願い贈った。
「貴方自身の人生を生きる為の羅針盤」
「結婚しても、君だけの航海を、君の舵で進んでいい」
文字盤に映る波のような曲線は、
貴方の心のゆらぎを映し出すだろう。
そして時を刻む針は、
どんなに揺れても「それでも前へ進んでいる」と、
教えてくれるはずだ。
この時計は、貴方にとっての“装置”だ。
人生の舵を、自分で握る為の。
何かに挑戦をする時・怖くなった時は、
ふと腕を見てほしい。
手首にある時計が、
“過去の君”ではなく、“未来の君”を信じて贈られたものだということを。
貴方の人生という航海が、
どうか無事でありますように。
私は、いつも貴方を悩ませてはいるが、
静かに照らす灯台のような存在でありたいと、心から願っている。
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