僕は君に近づきたいけど近づきたくない
OROCHI@PLEC
僕は君に近づきたいけど近づきたくない
ある日、僕は街中を散歩していた。
そよそよと優しい風が吹いていて、ポカポカとした日差しが降り注ぐ、散歩に丁度良い日だった。
しばらくすると、歩き疲れたので、ベンチの上で日向ぼっこをした。
君を見つけたのはそんな時だった。
明るい茶髪で、瞳が綺麗な君は、とても可愛いと思った。
そして僕は、恋に落ちた。
所謂、一目惚れと言うやつだ。
その時から、僕は君の事を目で追う様になった。
君はいつ見ても、綺麗で、可愛かった。
笑い、泣き、怒り、微笑む。
コロコロと表情を変える君が好きだ。
そう思ってしまう。
次第に、そんな君に近づきたい。
そう思う様になっていく。
でも僕は、彼女が僕の方に一歩を踏み出したら、ゆっくりと一歩下がる。
そして、彼女が一歩下がったら僕は彼女の方に一歩踏み出す。
それをずっと繰り返す。
僕は君に近づいてはいけない。
夏の日差しが燦々と降り注ぐある日のこと。
君がふと、僕の方に一歩を踏み出す。
僕はいつも通り、一歩下がる。
普段はそれで終わりのはずだった。
でもその日は違った。
君はさらにもう一歩踏み出す。
僕は疑問に思いながらも、また一歩下がる。
君は歩く。一歩、そしてもう一歩と、僕の方へ。
僕は、焦りを覚えながら、急いで一歩、二歩と下がる。
君はさらに踏み出す。
一歩、二歩、三歩、踏み出す間隔はどんどん短くなっていく。
そして君は遂には走り出す。
僕は逃げる。
君に決して追い付かれてはならない。
だから必死に逃げる。
でも、心のどこかで追いつかれても良いか、と思ってしまう。
もう少しで追いつかれそうになった時、幸か不幸か。
君は転んだ。
僕はその隙に急いで彼女から距離を取る。
ほっとしたような、がっかりしたような、そんな気持ちがした。
君はしばらく動かなかったが、しばらくすると起き上がり、僕とは逆の方向に歩いていく。
おそらくあそこへと向かうのだろう。
僕は、その後をゆっくりと着いていく、離れず近づきすぎずに。
僕は今日も君のことを見ている。
君が一歩進んだら僕も進み、君が一歩下がったら僕も下がる。
それをずっと繰り返している。
でも、それを繰り返しているうちに、少しずつ、君との距離は縮まっていっている。
それが良いのか悪いのかは分からない。
でも、僕は、少しずつでも君に近づけて嬉しいと思ってしまう。
僕はずっと、君に触れるのを楽しみにしている。
いつか君と話せるようになるのを待っている。
だから、僕はその時が来るのをじっと待っている。
僕は彼女に近づきたいけど近づきたくない。
だって僕は、死神だから。
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