魏志倭人伝において、邪馬台国の場所に注視してしまうのはわかるが、女王国から先の国についても記載があることをご存じだろうか。

　女王国から東へ千里ばかり海を渡ると国がある。その南にも国があって、女王国からは四千里くらい。また、その東南に国があるのだが、船で1年くらいかけて到達できる。そう書かれている。

　この記載からも、邪馬台国は大分県のどこかだろうな、と私は思う。東へ千里のところに陸地があるのは、関西までを見た場合に九州東岸か四国東岸しかないから。

　大分を起点とした場合、ひとつ目の国は、四国西側のでっぱりの付け根の伊方町あたりのことかな、と考える。そしてその南には女王国から四千里になるところあると書かれている。これは土佐清水市辺りだと思う。

　ちょっと本筋からずれるのだけれど、邪馬台国が宇佐市だったら東に渡ると山口県になる。ここを起点として南にある国というのは四国に存在することになってしまうのだが、山口にあると思しき起点となった国から『海を渡る』表記がされていない。だから、邪馬台国は宇佐市ではなくて、国東半島南側から大分市までのどこかにあったのではないかな、と思っている。

　さて、土佐清水市辺りから東南に1年くらい航海するともうひとつ国があるという。

　これ、凄いことをさらっと書いていると思う。

　まず、１年間航海を続けてたどり着いている、ということ。

　水や食料はどうしたの？大海原に浮かぶ目的地にどうやってたどり着くことができるの？そして、行ったっきりなら1年間でたどり着くなんて情報はもたらされていないはずだから、帰還したということ？

　謎だらけだ。だから、この部分はただの空想だろう、という説があるのも仕方ないかもしれないけれど。

　土佐清水市辺りから東南に舳先を向けて漕ぎ出した船は、黒潮に乗って太平洋に押し出される。ちょうど太平洋の真ん中あたりで南下する黒潮の分流に乗って進むと、なんとハワイ諸島に到達することになる。ハワイ諸島から、北赤道海流に乗って東南アジアフィリピン海に出る。北上する黒潮を捕まえると土佐清水市に戻ってくることができるのだ、理論的には。

　つまり、魏志倭人伝のこの部分は空想ではなくて、きちんと正しい記述がされている可能性が大きい。私はそう考える。

　私たちのご先祖は、弥生時代の初期には、既に太平洋に漕ぎ出していた。年単位の航海を行い、この地に帰ってくることができていた。

　その知識と技術。

　弥生時代初期の文化は、私たちが考えるよりはるかに偉大なものだったのかもしれない。