五月、春、憂鬱、躁

 五月病。無味乾燥。

 春が暑さに霞む頃、酷暑の気配を孕む風に煽られて、独り。夕暮れ時に見える黒い翼を眺めながら、今日を忘れる。かぁ、と鳴くからす、いずれや西日の行くほうへ。

 煙を吸うようになってから、思うように頭が働かなくなった。友人にも仲間になろうと誘ったけれど、「集中力の欠如」を憂慮して、ことごとく断られた。故に、私は独り。

 ピース。平和。前まで赤マルMarlboroを好んでいたけど、好きだった人と同じ銘柄にした。この話、私は好きだから。これからも引きずっていくだろう。ここでは、言わないけれど。

 己惚うぬぼれ。結局、集中力を欠いた。思うように、物事に集中できない。ショック。こんなにも自分が脆いなんて。でも、やめられない。自分に浸っているから。煙が、好きだから。

 ナルシズム。響きは厭い。でも、そうかもしれない。厭だなぁ。文章もガサツになってきて、そうして自分が壊れていく。自我が分裂こわれて、煙に霞む。

 私、隣の芝をすごく青く見るから、自己卑下が過ぎる。みんなはもっと綺麗で、美麗で、明るい世界を易々と描く。羨望。私も、そんなのが書きたいのに。変わった。ここ数日で、外が変わり過ぎた。ひとが死を好み、恋を失った。ひとの裏切りを知り、己の脆さに慄いた。

 きっともう、戻れない。みんなみたいな世界を、描けない。みんなが独創に華を咲かす頃、私は煙に包まれて、独り。

 パラノイア。何度も言う。何度だって言う。私はそれを受容するしかないから、私は自分の世界を、汚い世界を、描く。これはB級映画。私が魂魄ここを離れた時、誰かの目に留まるよう。誰かの気分を、むしゃくしゃさせてやらなくちゃ。

 感じる世界を黒く染め、独り。

 息が詰まる。肺が灰色。まぁ、それもまた一興。決して嬉しくないけれど。

 ぎこちない笑顔を浮かべて、生きていこう。ほら、ピース、ピース。

 せめて傍に、いてほしい。

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