第二十一章 ―魔神、覚醒―

第二十一章 ―魔神、覚醒―


崩れ落ちた玉座の間。

その底から現れたのは、禍々しく歪んだ空間――気と魔力が混ざり合う“奈落の神殿”だった。


「これが……裏階層の最奥……!」


「空間そのものが揺れてる……気を抜いたら、精神を飲まれるよ!」


仲間たちが警戒する中、暗黒の霧が集い、再び姿を現す。


「……この姿こそ、真の我……我が名はフェアルクス。万象を終わらせる者――」


全身を覆う禍獣の鎧、無数の目が浮かぶ翼、そして空間を圧する“王気”――

魔神フェアルクス、第二形態。

その圧倒的な存在感に、全員が本能的な恐怖を覚えた。


「……でも、私は怯まない。たとえ……あなたが父上でも!」


ゼル=レグナが呼応するように輝き、ルシフェリスの気が爆発する。


「いくよ、みんな――これが、最後の戦いだ!」


戦闘が再開される。

だが、フェアルクスの力は桁違いだった。

一振りで地面を割る斬撃、呪詛の咆哮、時を歪める魔力。すべてが絶望的な力に満ちていた。


「くっ……ぐはっ!」


サタナエルが吹き飛ばされ、クレアの結界が砕ける。


「やばい……今の私たちじゃ……!」


「違う! 私たちはここまで来た……何度だって立ち上がって、進んできた!」


ルシフェリスの叫びに応えるように、仲間たちの気が再び奮い立つ。


その時――


ゼル=レグナが共鳴し、形状が変化を始めた。

刃に刻まれる、古の紋章。

光が仲間たちを包み、その絆を力へと変えていく。


「これが……“永託の煌刃”!」


その一閃が、空間を裂く。

ルシフェリスと仲間たちの力を束ねた、最終奥義――《ゼル=レグナ・オーディア》が放たれた。


閃光が魔神を穿つ。


「ぐ……おおおおおおっ……!」


崩れ落ちる巨体。吹き飛ぶ闇。


だが――


「……終わっていない……まだ、我は……」


魔神の意識が微かに残っていた。


「完全に消さなきゃ……!」


ルシフェリスは静かに剣を構えた。


「これは私の戦い。……でも、みんながいてくれたから、ここまで来られた」


一歩、また一歩。


「だから――これは、私たちの勝利だ!」


ゼル=レグナが最後の光を放ち、魔神フェアルクスの意識を浄化する。


こうして、全ての戦いは――幕を閉じた。

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