第31話 私と心先生と基礎化粧品
先生の肌は安定感が凄い。
どんなに忙しい日々が続いても、その肌には常に極上のキメが張り付いている。
微妙にぼやけ始める視界の先。
テーブルを挟んで反対側にいる先生を私は見つめる。
今日は忙しかったせいか、お酒の回りが早い。
私は酔いに任せて、少し身を乗り出して先生の頬に指先を伸ばす。
「んー? どしたの千夏?」
先生も先生で酔っているようで、フニフニと私が頬を触るのを、特段止めもせず、フニフニと笑う。
「先生の肌、マジ綺麗ですよねぇ。基礎化粧品、どのブランドのを使ってます?」
「基礎化粧品? あはは、よくわかんない」
心先生は私の指先がくすぐったくなってきたのか、少しだけ身を捩る。
「えー、教えてくださいよー」
私はさらにフニフニしていく。
フニフニフニフニフニンフニンと単身赴任。
ああ、ダメだ。
最後、単身赴任になっちゃった。
あはは、楽しい。
「でも、ほんとにわかんないんだってー。だって、そういうの使ったことないしぃ」
「え?」
「だからー、そういうの使ったことないからわかんないの」
すん、と私の体からアルコールが抜けていったのがわかった。
「奇跡ですか?」
「何が?」
「私の目の前には奇跡がいるというんですか!」
私は思わず立ち上がって、そのまま先生の横へと移動し座る。
「ち、千夏、近い……」
「この肌質、何もしてないのにこの肌質。一体全体何をどうすれば……」
不摂生。
不規則。
肌の質なんて遠の昔に置いて来たといっても過言ではない仕事柄。
なのに、目の前にいる先生の肌はどれだけ近づいても白く透き通っている。
「私なんて、今のさほど綺麗でもない肌を維持するのにどれほど苦慮しているか……。なのに、先生は何もせずにこれほどまでに清く気高い肌をば!」
「怖い怖い! 泣かないでよ、千夏。よしよし、大丈夫大丈夫」
先生は私の頭に手を乗せ、よしよししてくれた。
「うう……。私だって頑張ってるのに、頑張ってるのに」
「うんうん。千夏は頑張ってるよー。偉いよー」
先生の温もりを感じながら、私は泣き続けた。
翌日。
朝。
ガンガン痛む頭を抱えつつ、どう考えても酔ってたなってなった。
いや、どこが全身からアルコール抜けただよ。
微かにも抜けてなかったっすわ。
酔っぱらいの酔い覚めた判定は信じちゃいけない、という自戒。
ちなみに、心先生も先生で酔っていたらしく、普通に基礎化粧品使っていたらしい。
ただ、どのメーカーとかのこだわりがない程度のものらしいけど。
まあ、それはそれで納得はいかない。
どうしてあそこまで綺麗なのか……。
とにかく、うん。
昨日、先生も私も忙しかったもんなぁ。
忙しかった日は酒の量、気を付けないと(n回目)。
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