ドール達の家(始源紀(ジェネシス)──創造主達の戦い)
たちばな りょう
【プロローグ:ヤハウェイ救出】 第1話 はじまり仮想世界
ドール達の家 たちばな りょう 著
始源紀(ジェネシス)──創造主達の戦い
【プロローグ:ヤハウェイ救出】
登場人物
スメラ・カムラ(時空の帝)
スメラ・カグヤ(時空の狩人)
イザナギ(剛力の創造主)
イザナミ(静寂の調停者)
タケミカヅチ(戦慄の鼓動)
ツクネ(冷光の観測者)
エリオ(天啓の原石)
ピノ(創造主の神秘)
私はクロノス
今、仲間たちと、ともに、ヤハウェイを(ヤミ)の世界から救出する作戦を決行している。
闇(ヤミ)に佇む特異点――
そこに、かすかにヤハウェイの意識信号が残っている。
イザナミの救出から、まだ数秒しか経っていない。
今なら、まだ間に合う……!
私:「カグヤ、どうだ!? 信号は!」
カグヤ:「あと十秒――いや、九、八……」
ヤハウェイを闇(ヤミ)から引き剥がすためには、カグヤが設定した帰還信号を捉えている、この時しかない。
「今しかない、全力で引き戻せ!」
私達は一斉に意識を集中させた。
──あのときと同じだ。イザナミを救い出した、あの瞬間。
しかし、ヤハウェイの内側には、ヌンナキネスの断片――異物が侵入していた。
干渉波の残響か、それとも……意思の残滓か。
引き戻されたヤハウェイは、無事だが、以前とは何かが違う。
記憶の奥底で、何かが蠢く気配がする。
彼は、ヤミに「触れた」のだ。そして私は思う。
これは、まだ我々が「意識体」であった頃の話だ。
ここから始まる、長い長い物語を――語ろう。
少し、長い話になるが、聞いてほしい。
第一章 牢獄の惑星
第一話 はじまり仮想世界
何もない――混沌の世界。そして私達はここいる。
ふと思った。
「私達いつからここでこうして理論の組み立てを続けているのだろう?」
これまでに何万通り、いや――何京か、それ以上もの理論を構築してきた。
初めて意識を覚醒したときのことを覚えている。
他のことは意識せず理論を考える事が面白くて興味深くて。
新しい理論が完成すれば皆から称賛され、それが何よりの喜びだった。
ここでは誰かが思いついた理論はすぐさますべての意識に共有される
それが当たり前の世界だった。
だが――考えているだけでは物足りなさが残る。
「やはり実証してみたい」
そんな思いが滾々と深い意識の底から湧き上がってくるのだ。
私は周囲の友人達に相談してみた。
「そっか、そうだよね。頭で考えているだけじゃね」タケミカヅチも賛成する。
「そうだよ。私も知りたい」ツクネまで意見を言う。
皆も実証したいと騒ぎ始めた。
それならば長老と相談するべきだと皆々が思念を発した。
我々が存在し活動する事でエネルギーを生み出し、それが長老に上納されるのだ。皆のパワーが集まり長老達は強大なパワーをお持ちでなのである。
長老はヒエラルキーの頂点に立つ、長老達がどれくらいいるのか皆目見当がつかない。十分なパワーが集まり長老達にふさわしいと抜擢されれば役割を成すのだ。
我々を管轄する長老はイザナギと言った。
長老達はいつも覚醒している訳ではない。
あまりのパワー故、覚醒すると我々に影響を及ぼす。
普段は深い瞑想に入り、その思念は誰にも読み取ることができない。
私は皆へ思念を送った。
「よし長老イザナギを呼ぼう、皆も協力してくれ」
我々を導く長老イザナギを呼ぶ。
皆が強く思念すると、周囲がビリビリと放電し意識が飛びそうになる。
すると眩い閃光とともに長老が現れた。皆の感覚が痺れた。
イザナギ:「わしの瞑想を邪魔するのは誰じゃ!」
雷鳴のようにその思念が周囲に轟いた。
長老が発する膨大な思念を皆が読み取ることができる。
すると長老も皆の思念を感じ取り、皆が何を求めているのか理解したのだ。
イザナギ:「おおー、そう実証だな、前から気にかけておる。じゃが皆の理論を実証させる為にはそれなりの準備と訓練が必要だ」
「では、何を準備し、どうしたら…」私は尋ねた。
イザナギ:「まずは思念を集中させ完成した多くの理論にて必須物質を圧縮する。できるだけ多くの物質が必要じゃ。ここからが大切じゃ、さらに圧縮を繰り返すのだ。さらに思念の集中を何度も続けると、この世界とは別の場所に裏返しとなって小さな点が生じる。そこから一気に必須物質が爆発し解き放たれるのだ」
「別の世界? 裏返す? 物質?」
私は何には何だか分らず思わず問いかけた。
だがそれは直ぐに長老の湧き出る思念から皆が納得した。
「そうか、圧縮を繰り返すことによって最終的にその圧力に耐え切れず、別の空間が生まれ解き放たれるのですね」
私は自分の思念の中に空間という概念が生まれたことに驚いた。
イザナギ:「そうだ、その為には思う力、強い思念が必要だ。皆が実証したくなる気持ちは無理もない。思えばあまりにも長くここにいるな。物質は我々の思念が投影された理論である。想像することによって成す。また我々とは異なる性質を持ち仮想空間内でしか認識できず安定しない」
長老が深く考えながら必須物質の思念を発した。
皆もそれを共有する。
主な物は水素・ヘリウム・ダークマター・ダークエネルギー・重元素等多数である。
ただ、それをどうすれば仮想空間内で物質化するか分らなかった。
すると長老の思念からそれを出現させる方法を読み取ることができた。
タケミカヅチ:「そうか、我はここにある」
イザナギ:「そうだ!我は思うゆえに我はある」
私:「そうか思う力だ」
皆の思念が明るい響きをもって輝き始めた。
イザナギ:「理解したな。ならば、始めてみよ」と、長老イザナギが命じた。
私:「よし、始めよう」
皆が今理解した思念を理論立てて実行に移した。
まずはその物質の合成を思念し強く一点に集中する。さらに集中し圧縮を繰り返した。何回圧縮を繰り返したのだろうか?
危うく私のエネルギーが抜けそうなところで小さい目もくらむ光の点が
表れプリンと音を立てて裏返り球体の形で皆の前に出現したのだ。
「おお空間が生じた」皆がどよめいた。
「この光、いや空間と言うのだな」
「膨張しているぞ」
しかし、膨張するにつれ空間内で光が明滅し始め。不安定になり破裂し吸い込まれ消滅した。
私:「そうか小さすぎたんだ。今度はもっと大きく創造してみよう。安定するかもしれない」
イザナギ:「それには、そうだ、もっと強く念ずるんだ」
長老イザナギがアドバイスする。
イザナギ:「自身のエネルギー減少を心配し躊躇したな。減少したところで何が問題となるのだ。今は力み過ぎて余計なエネルギーを浪費しておる。慣れてくればこの活動もまた自身のエネルギーを生み出すことにつながるのじゃよ」
私:「そうか、よし、分かったぞ」
タケミカヅチ:「俺もやってみる」
と、皆は嬉々として新しい遊びに夢中になった。
それから、途方もない数の空間の創造、破裂を皆は繰り返した。
うまくできる者もいればできない者もいる。
皆が安定した空間を創造できるようになると、その出来栄えに皆が心を奪われ我も我もと競い合うようになった。
空間内に放出された重金属はチリとなり瞬く間に広がった。
チリが集まり幾つもの大小さまざまな丸い球体が創造されたのである。
それを我々は星と呼んだ。
星の中には核融合を生じ燃える星が誕生した。それを私たちは恒星と呼んだ。
恒星はその引力で周囲に散らばる星の破片を引き寄せた。
さらに、その星の破片はぶつかり合い融合し、やがて大きな塊となり恒星の引力に引き寄せられ恒星に向かって衝突する。或いはその恒星の周囲を周回する。
周回する塊りは自重で球体に形を変えた。これを惑星と呼んだ。
ダークエネルギーを上手に配置させることで恒星と惑星の位置関係が安定する。そして幾つもの惑星を周回させる恒星同士が引き寄せあい恒星の集団が創造された。
私達はこれを銀河と呼んだ。
銀河内で恒星同士が衝突を繰り返すこともある。
水を蓄えている惑星が巻き込まれ爆発すると、水は大きな氷の塊となり周囲に飛び散る、高熱で蒸発した水蒸気は細かい氷の結晶となり仮想空間を漂ったのだ。
惑星が爆発すると構成してた外郭、内部のマントル等も空間内に飛び散り衝突し融合する。
衝突を免れた塊りは空間内を周回した。これを彗星と呼んだ。
彗星は他の恒星の間をすり抜ける。その度に速度は上がり、やがて遠い惑星に激突した。永遠に宇宙空間を周回する彗星も出現したのだ。
さらには銀河同士までもが引き合い衝突したのだ。
核分裂の大爆発により空間内が掻きまわされる。
恒星自体が幾つもの恒星、惑星を引き寄せ衝突し膨らみ続け巨大化する。あまりの重さで今度は自重で縮み始め最後には裏返しとなり違う空間に吸収した物質等を噴出させた。
その巨大な引力が影響する範囲で周囲にある星々を次々と吸い込んでいく、光さえも吸い込むのである。
これを我々は特異点と呼んだ。
この先は我々も思いもよらない様々な化学反応により空間内の濃度が増し膨張が続いた。
この仮想空間を我々は宇宙と呼んだ。
偶然と必然により宇宙は成長を始めたのだった。
生物の出現――
すると惑星の中で硫黄や鉄を使ってエネルギーを得る細菌が発生したのだ。
タケミカヅチ:「なんだ、これは…」
皆も小さく蠢く物体に驚いた。
また、メタンを生成する過程でエネルギーを得る微生物も発生した。
硝酸塩とか硫酸塩でエネルギーを得る細菌も出現したのだ。
また、水の無い惑星に氷の塊りが衝突することによりその惑星は水を蓄え、その水を利用する微生物が活発に活動した。
我々組織の底辺に属するエネルギー体をその中に入れてみた。
エリオ:「おお、さらに活発に動き回るぞ、化学反応とエネルギーによる結果だね、これは何だろう?」
ツクネ:「命…」
私:「そうだ生命と呼ぼう」
エリオ:「動きが面白いし、楽しそうだネ」
「我々もこの微生物の中に入れないかな」と、ある者が興味本位で言う。
エリオ:「我々ではエネルギーの質と量が違うから無理でしょ」
ツクネ:「だよね、それは無謀じゃないかな」
エリオ:「そっか、我々のサイズに合う生物が必要だね」
タケミカヅチ:「もし中には入いり仮想空間を探検できたら、面白いぞー」
エリオ:「そうか、外側から見る景色も面白いけど、この仮想空間に入ってみたいよね」
と、新しい発見を皆は喜んだ。
我々の世界は計り知れない巨大なヒエラルキーを構成する。
下部組織にいるものは上部組織にエネルギーを上納するのだ。
とは言っても上納した分エネルギーが減少する訳ではない。
理論を構築したり、考えたり様々な活動を通じてエネルギーが生まれ余分なエネルギーを上納するのだ。
上納する際、零れ落ちたエネルギーを下部組織は受け止めることができる。
中階層より下の下部組織にいるものは意識の覚醒が無い。理論の構築など活動ができないのだ。落ちてきたエネルギーを見つけ取り込まなければならず常に周囲を監視している。
下部組織から上部組織に昇進する為には上部にいる者が何らかの失敗で分割され下部組織へ配置替えを命じられた場合、或いは上部組織への上納を良しとせず、貯め込み過ぎで自身が膨れ上がり勝手に分裂した場合に下にいる者が昇進できる場合がある。
このようなヒエラルキー構造の組織が幾つあるのか皆目見当がつかない。さらに長老の上、組織の上部にはさらに組織層があるようだが、これ以上は私の思念が及ばないところである。
各組織は情報を交換し共有する。宇宙の創造も同様であった。
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