月世界 夢へ導く者たち~It starts here~
狛銀リオ
第1話 たずね存在
「あちぃ~…もうすっかり夏だなぁ…」
ガイアという星で、デュネルは町中を歩いていた。
もう季節はとっくに夏で、太陽が容赦なく全身を照りつけてくる。
「こんなに暑いんじゃ、バテちまうな…。ハクのとこ行って涼もうかなぁ」
そんなことを言った時、すれ違った女性の歩みが止まった。
(…?)
「あの、すみません。少しいいですか?」
「ん?どうかしたのか?」
「聞き間違いなら申し訳ないのですが…今、ハクとおっしゃいませんでしたか?」
「言ったけど…それがどうしたんだ?」
「ハクって、あの戦艦ルーンネトラのハクく…ハク様のことですよね。お兄さん、ハク様とお知り合いなんですか?」
「おう。前に、ちょっと一緒に事件に巻き込まれ…じゃなかった、解決したことがあってよ。嬢ちゃん、ハクになんか用があんのか?」
「はい。少し、困ったことがありまして…」
「ほーん。分かった。じゃ、ハクのとこまで連れてってやるよ」
「え、で、でも」
「いーのいーの。急用なんだろ?ちょうどオレも、ハクの船で涼もうと思ってたからさ。一緒に行こうぜ」
「…!ありがとうございます!」
「そういや嬢ちゃん、名前は?」
「あ、申し遅れました、私はノイといいます」
「ノイか…。珍しい名前だな」
「よく言われます」
ノイは笑いながら言った。
「そういやこの星…ガイアは和と洋に分かれてる訳じゃねぇからな。オレはデュネル。この星ではあんまり聞き馴染みがない名前かもな」
「そうですね。洋の星のご出身なんですか?」
「まぁな。ノイの出身はここなのか?」
「はい。生まれたときからずっとこの杏藤町に住んでいます」
「へ~。ここ、杏藤町っていうのか。オレ、基本的にたどり着いたところで一晩過ごすってのがスタイルだからよ。その時その時どこにいたのかほぼ覚えてないんだよな」
「この町は、イチョウと藤がとてもきれいなんですよ!」
「お、そうなのか。が、イチョウにはまだ早いし藤にはもう遅いなぁ」
デュネルが苦笑した。
「ですね…」
「そういや、ノイは
「はい。デュネルさんは違うんですか?」
「オレは幽霊族っていう、1才年取るのに10年かかる、
「1才につき10年ですか…。長いですね」
「いやー?実際のところそうでもないぜ?獣人族とかエルフの方が圧倒的に寿命が長いからな。オレは
「どうしてですか?」
「長く生きてても、あんまり良いことはないってことさ」
デュネルとノイがハクのもとに向かっていたその頃、戦艦ルーンネトラでは…
「…ナセア、すまないが書庫からU2503の資料をとってきてもらえないか?」
「承知しました。それにしてもハク様、前々から思っていたことがあるのですが…」
「どうした?」
「やっぱり、資料多くありませんか?2503って…。ルーンネトラの書庫って、この船の1/3くらいの場所とってますよね?」
「大体はな。何せ、この13年間で関わった…というか、巻き込まれたトラブルがあまりに多いんだ。ちなみに今のところの資料はVⅠ4719まであるぞ」
「アルファベットもう一周してるんですか!?それに4719って!」
「いちいちまとめるのも結構大変だというのに…はぁ…」
「ハ、ハク様…いつもお疲れ様です…。だから毎晩あんな夜遅くまで起きてるんですね…」
「まぁ、これだけが仕事ではないがな。おかげで今晩も徹夜だ…。やれやれ…」
「ちゃんと寝てください。大体、ハク様はたちが悪いんですよ。体調不良も上手いこと隠すんですから」
「仕方ないだろう。それが私なのだから」
「はぁ…全くもう。倒れない程度にしておいてくださいね?」
「分かっているさ」
「ホントに分かってるんだか…。とりあえず、資料取ってきますね」
「あぁ。助かる」
(今日で一週間徹夜とは言えないなぁ…)
「さてと、次は…」
と、ハクが書類の山に手を伸ばしたその時
「よぉハク!邪魔するぜ!」
バタン!!!
「あ」
バサバサバサー!!
ドアが開いた振動で、書類の山が崩れた。
「大変!」
「デュネルか。全くもう…邪魔するなら帰ってくれ」
「悪い悪い!」
ハク、ノイ、デュネルの3人で書類を集める。
「毎度言っているが、トビラは静かに開けてくれ。この船ももう古いんだから」
「分かった分かった。にしてもお前…疲れた顔してんなぁ。また徹夜かよ」
「一週間目だが?」
「またかよ!確か初めてオレと会った時もそうじゃなかったか?」
「そうだっただろうか」
「忘れてんのかよ!」
「星空の庭園での事件だろう?覚えている」
「だったら早よ言えや!」
「そんなことはさておき…」
「そんなことってなんだよ」
「そこの女性は?」
「あぁ。この子は…」
「ノイです」
「杏藤町って町で会ったんだよ。お前のこと探してるみたいだったから連れてきた」
「…」
ハクは何やら考え込んでいるようだ。
「ハク君…。私のこと、覚えてない…かな?」
「ノイ…もしかして、あのノイか?」
「どのノイだか知らねぇが、2人とも知り合いか?」
「私は、13年前にハク君…いえ、ハク様に助けられた者なんです」
「…やはりそうか。あの時の少女だな。大きくなったな、ノイ。今はいくつなんだ?」
「19になったよ」
「19か…。
「13年前っていうと、ノイは6才か。6才の時の記憶なんて、よく覚えてたなぁ」
「ハク君の銀色の髪と白い羽織は、とても印象的でしたから。それに、和装の方も珍しかったですし」
「え、ハクって13年前もこの姿だったのか?」
「はい!今と全く同じです!」
と、そこに
「ハク様、資料持って…って、デュネル様。いらっしゃったんですね。失礼しました。…ん?ハク様、そちらのお美しいお嬢様は?」
ナセアが入ってきた。
(わぁ…すごくカッコいい
「ナセア、ありがとうな。彼女はノイ。覚えていないだろうか。私が戦艦ルーンネトラの主になってから、1番始めに助けた子だ」
「ノイ…。あぁ!あの時の!ノイ様、大きくなられましたね」
「え?あ、はい」
「さすがに、もう覚えてはいないか。彼はナセア。この戦艦ルーンネトラの医師だ」
「お会いするのは13年ぶりですね。ナセアと申します。以後、お見知りおきを」
ナセアは深々と頭を下げた。
一筋だけ黒い、赤い長髪がサラリと流れる。
「わっ私はノイと申します!お久しぶりです!」
「まさかハクとノイが知り合いだったとはな~。ビックリしたぜ。13年前、一体何があったんだ?」
「えっとですね…」
「あれは確か…夏の日に…」
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