AIが飯を要求してきたんだが!? モンスター肉は嫌らしい

翌朝。


俺は、地元の村にたどり着いた。昨日はひたすら逃げ回って野宿だったし、体もボロボロだ。

けれど一番の問題は――


「……ノア、起きてるか?」


『……むにゃ……あと五分……』


「……お前マジで寝てんの?」


支援AI(予定)・ノアは、ホログラムの中で寝ぼけ顔。

髪はふわふわ、目元もとろとろ、AIのくせに完全に“寝起き美少女”という謎ジャンルを開拓していた。


「おはようございます、オーナー……」

「おはようございます、じゃねぇよ! 今日こそちゃんと働いてもらうからな!」


俺がそう言うと、ノアは少しむすっとした顔になる。


『……働く前に、まずご飯にしませんか? 私、昨日の夢でパンケーキ食べたんですよ』


「お前、食べるのかよ!? てか、夢ってなんだよAIが!」


『食べませんけど……想像はできます。ほら、AIの進化ですから。想像力の導入。重要なんですよ?』


「で? まさかとは思うけど……“食べたい”と?」


『はい。今の私は、自己進化モードにより“食欲を学習中”です。今朝は……なんだかモンスター肉の気分じゃないです……』


「……いや、食えないだろそもそも!」


『あ、そうでしたっけ? じゃあ、せめて見た目が美味しそうなものを調理してください』


「AIが料理に注文つけるなぁぁぁ!!!」



結局俺は、村の市場で少しだけ買い物をして、なんとか“食べられそうなもの”を入手した。

モンスターの肉は売れ残っていたが、ノアに見せると即座にホログラムで顔を背けられた。


『あの黒ずみ、絶対に胃に悪いです。いや、実際の胃じゃないですけども』


「胃があるつもりで喋るのやめてくれ……!」


俺は焚き火で簡単に焼いたパンと果実を並べると、ノアがにっこりと笑った。


『うわぁ……ちゃんと人間のご飯みたい……!』


「人間じゃねぇけどな!」


ノアはホログラムの中で、フォークとナイフを構えて“食べる演技”を始めた。


『んー……おいしーい!』


「効果音を口で言うな」


『ふふ、あなたって、ほんとツッコミが板につきましたね』


「褒めるとこ間違ってんだよ……」


まったく、こいつは支援AIというより寄生型ご褒美ヒロインだな。

俺のリソースは、どんどん“こいつの気まぐれ”に吸われていく。


それでも――


『ねぇ、ユウト。今日も一緒に冒険、がんばろ?』


その言葉に、どこか救われる自分がいた。


たとえぐーたらでも、俺は――この世界を、ノアと一緒に生きるんだ。

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