転生したら最強の魔王になった件

風葉

プロローグ 世界の終わりと、目覚めの玉座

 この世界には、かつて“災厄の魔王”と呼ばれた存在がいた。


 魔族すら恐れ、世界そのものを震わせた、終焉の王。その存在は千年の時を超えて語り継がれ、人々の記憶の中では、もはや神話のようなものとなっていた。


 しかし――その魔王は、再び目を覚ます。


 否、それは“覚醒”ではなく、“転生”だった。


     * * *


「……あれ? 俺、死んだ?」


 意識が戻ったとき、まず最初に浮かんだのはそんな間抜けな言葉だった。


 天井が高い。壁は黒曜石のように輝いていて、空気は重く、どこか異様な気配に満ちている。


 その場に立ち尽くす、角を持った女騎士。翼をたたんだ竜人の男。浮遊するローブの影。――何だこれ。なんのコスプレ集団?


 いや、それよりも、俺は……なんで椅子に座ってるんだ?


 しかも、この椅子、やたら高いし……玉座、みたいな。


「魔王様……長き眠りより、お目覚めになられましたか」


 その言葉に、俺はゆっくりと下を見る。


 そこには、地にひれ伏す魔族たち。無数の眼が、俺を“魔王”として見つめていた。


「…………は?」


 混乱。困惑。理解不能。


 何がどうなってこうなったのか、まるでわからない。ただ一つだけ確かなのは――


 俺、高橋一樹。二十歳。冴えない大学生。


 それが今、異世界の魔王になってしまった、ということだった。

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