第10話 結末を待ち侘びし者
階段を上って扉を開けると、そこには玉座があった。厳かな雰囲気に包まれた部屋は、豪華な装飾が施されている。銀色に光るシャンデリアに、宝石が散りばめられたように光る黒い床。そして玉座の奥には、夜空を映す窓があった。窓の側には、大きな人影が立っている。黒いマントをはためかせて、窓の外をずっと見ていた。
「……やあ、君達が来るのは分かっていたよ」
人影がこちらを振り向く。その姿を見て、僕は全身が逆立つような寒気がした。その人影は口調こそは穏やかだったけど、その顔はとても恐ろしいんだ。博物館で見た肉食恐竜の頭の骨みたいなものを被っていて、その隙間からは黒い炎みたいな髪が揺らいでいた。エメラルドの宝石みたいな目が、骨の間だから覗いている。恐竜の骨からは、山羊のような角が生えていて、恐竜と言うよりドラゴンの骨をそのまま被ったみたいだ。中世の貴族のような服を着ているけど、ドラゴンの頭とは合わない。胸元の万年筆をかたどったネクタイを締め直して、骨頭の貴族はしなやかな足取りで歩いてくる。
「はじめまして、私はヴィンセント。この城の主だよ」
ヴィンセントは優しい口調で話しかけてきたけど、目は笑っていなかった。それが余計不気味だ。ヴィンセントはコーラの姿をまじまじと見る。コーラは光の帯を後ろにした。クリスがコーラを庇うように前に出る。
「おい、テメェが魔王だろ? よくもアイツらを消してくれたな」
「まあまあ、そんなに怒らないで。こんなに良い天気だから、ちょっと椅子に座って紅茶でも飲んでゆっくり話をしようじゃないか」
憤慨するクリスを、ヴィンセントは穏やかに諭す。とてもじゃないけど、姿以外は魔王に見えない。物腰も柔らかだし、本当に魔王なのか疑わしいよ。ヴィンセントは窓の側にあるテーブルの椅子を引く。魔王の部屋には似つかわしくない、木製の小さな椅子だ。テーブルの中央には、花瓶に生けてあるヒスイ色の花があった。湖の側で見た花と一緒だ。僕らは警戒して、誰一人椅子に座ろうとしなかった。
「どうしたんだい? そんなに怖がらなくてもいいんだよ。罠だったりはしないからね」
優しくも、何処か抑揚の無い声で、ヴィンセントは続ける。戸惑いつつも、僕は椅子に座った。コーラもヴィンセントの様子をうかがいながら、椅子に座る。座った瞬間、針が突き出たりするかと思ったけど、そんなことはなかった。でも、クリスは警戒して椅子に座らないままだった。
ヴィンセントは指を鳴らして、僕らの目の前に紅茶の入ったティーカップと茶菓子を出す。まるでランプの魔神みたいだ。紅茶からは微かにクリスが持っていた花と同じ匂いがする。なによりびっくりしたのは、茶菓子だよ。だって目の前の茶菓子は、僕好みに合わせられているんだもの。チョコレートにバタークッキー。マシュマロまである。イチゴのケーキとキャラメルは、一体誰の好みなんだろう。ヴィンセントは僕らの席よりひときわ大きい椅子に両足をそろえて座る。ドラゴンの骨を被っているせいか、表情が分かりにくい。一体何を企んでいるんだろう。手元の紅茶を一口飲んで、ヴィンセントは深呼吸をする。
「さあ、毒なんか入っていないから、遠慮せずにどうぞ。長旅で疲れただろう?」
僕らを気遣う口調のヴィンセント。その骨の仮面の裏ではどんな表情をしているのやら。紅茶の水面には、僕の疲れ切った顔が映っている。泥まみれになった顔。すすけてくしゃくしゃになった髪の毛。思えば、ここまでずいぶん歩いたんだ。コーラも紅茶を眺めている。まるで紅茶の中に溶けちゃいそうだ。でも、喉が渇いているせいか、コップの中の紅茶は底なし沼のように感じる。思わず僕は、紅茶を一口飲んだ。
「お……おい、リアム」
心配そうな顔つきで駆け寄るクリス。でも、紅茶の雫はもう僕の喉を伝っていった。花畑の中にいるような温かさだ。思わず眠ってしまいそう。でも、温かさが体中を駆け巡っても、吐き気とか痛みとかは襲ってこなかった。どうやら、毒じゃなさそうだ。
「君達がここに来た目的は知っているよ。私に会いに来たんだね?」
ヴィンセントはまるで隣人に話しかけるように僕らに問いかける。オズボーンさんみたいな話し方だけど、オズボーンさんはこんな怖い目をしない。ヴィンセントに話しかけられる度に、僕は身構えたくなる。
「……あなたが魔王?」
「みんなからはそう呼ばれているね」
「じゃあ、やっぱりテメェがムウムウ達をっ!」
怒りのあまり、ヴィンセントにつかみかかろうとするクリス。それを僕は止めた。今のヴィンセントに戦おうとする気配はない。悔しいけど、今は手を出す必要はないよ。ヴィンセントもクリスの様子を察して、視線を手に移す。その白い手袋で、一体どれだけの仲間を消して汚してきたんだろう。そのエメラルドの瞳に、一体どれだけ仲間の断末魔を映してきたんだろう。
「……そのことについてはすまないと思っているよ。だけど魔王として、命令に逆らった者は消さなくちゃいけないんだ」
心苦しそうな口調の魔王。魔王の紅茶の湯気も、寂しく揺れる。クリスは悔しげに歯ぎしりをして、拳を降ろした。それを見てヴィンセントは、安心したように紅茶を飲む。コーラは魔王の様子に目もくれず、紅茶を眺め続けている。飲みもしないで、一体どうしたんだろう。
「…………だった」
声にならない声で囁くコーラ。僕はハッとしてコーラの体を揺らす。まただ。またコーラは何かを見ている。
「コーラ! しっかりしてよ」
「あの人も……だった。それで、彼が紅茶を持ってきて……」
僕は何度もコーラの名前を呼んだけど、コーラは僕が見えていないみたいだ。クリスもコーラを呼んだけど、全く反応しない。まるでコーラがコーラじゃないみたいだ。口を震わせて、コーラは焦点の合わない目で天井を見つめていた。
――私……もう駄目みたい……――
ぼやけていく視界、心臓が締め付けられる感覚。その感覚しか生きていることを実感できなかった。オズワルドが呼んでいる。遠くなっていく意識を呼び止めるように、彼の声が聞こえた。
――そんな弱気なことを言わないでくれ! 君らしくないよ!――
オズワルドの温かい涙が、私の頬を濡らす。もう彼の顔も見えない。でも、私が彼にどんな顔
をさせてしまっているのかは、容易に想像できた。私の手が彼の手よりも冷たくなっていく。この感覚が消えないうちに……。彼に伝えないと。私は微かに空気が漏れ出す口を開ける。
――ほら、紅茶だよ! これで少しは落ち着くよ!――
――オズワルド……私……私……――
喉が締め付けられるように痛んで、声がつっかえる。お父さんとお母さんと同じだ。二人も私の呼びかけに答えようとして、声が出なくなって、それで……。
――待ってて! 今、お医者様を呼んでくるから!――
オズワルドが慌てて部屋を出て行く音が聞こえる。待って。お願い……ここにいて……。治療なんていらない。最期の時を、あなたと一緒に過ごしたいの。心の中で叫んでも、それは彼に届かなかった。彼からもらった指輪が、薬指から離れていく。私の意識も、体から引きはがされそうだった。
痛みも、苦しみも、何もかも感じられなくなったとき、私の意識は楽になった。だけど、それと同時に私は真っ暗闇の中に閉じ込められた。目を開けても覚めない暗闇。その中にたった一人。もう何も見えない。彼も見えなかった。
突然、コーラが怯えたように痙攣した。まるで何処か暗い所に閉じ込められたみたいに、光の帯で辺りを探っていたんだ。声をかけても反応しない。僕は何だか分からないけど、不安な気持ちになった。まるでコーラが、どこかに行ってしまいそうだ。ヴィンセントはマントをはためかせて、コーラを優しく抱く。そして、コーラの口元に紅茶を近づけた。
「大丈夫だよ。これを飲んで落ち着きなさい」
コーラは口をぱくぱくさせながら、紅茶を口に運んでいく。紅茶の湯気に当てられて、コーラは正気を取り戻した。過呼吸のまま、コーラは青い顔をする。ヴィンセントはマントでコーラの体を丁寧に包んだ。
「悪い夢はもう覚めたよ」
「あ……あなたは……」
ヴィンセントから離れるコーラ。まだ夢の余韻が残っているみたいだ。コーラの悪夢はだんだん酷くなっている。でも、その原因は一体何だろう? ヴィンセントは金色の襟を整えて、窓の側に立つ。
「なあ、コーラ。一体どうしちまったんだ?」
「……分からない。でも、もう大丈夫よ」
クリスを心配させまいと体を振るコーラ。ヴィンセントは黙ってその様子を見ていた。やがてヴィンセントは、重々しく口を開く。
「……君達は、そこにいる星の妖精に導かれて、ここまで来たんだね」
「う、うん。元の世界に戻りたくて」
僕の言葉を吟味するように、ヴィンセントは何度も頷く。
「本当に、元の世界に戻りたいんだね」
「何度聞いたって同じだ。アタシらの答えは変わらない」
クリスも声を張り上げる。コーラは少し寂しそうに顔を曇らせた。ヴィンセントは目を閉じて何やら考え事をしている。もしかして、元の世界に戻してくれるのかな。ヴィンセントは玉座の奥にある扉の方へと、ゆっくり足を進めていく。そして、扉を開けて細長い指で手招きした。扉からは花の香りが風に運ばれてくる。ヴィンセントの髪が風になびく。
「元の世界に戻る方法はこっちにある。来なさい」
ヴィンセントは淡々と告げて、扉の奥へと消えてしまった。僕らもその後をついて行く。この扉をくぐれば、僕らの冒険は終わる。コーラとも……。いや、そんなことは考えたくなかった。できればコーラとも一緒にいたかった。
扉の向こうには、庭園が広がっていた。テーブルの上にあった花に、色とりどりの草木が植えられている。でも、その庭園に足を踏み入れて僕は何か違和感のようなものを感じた。匂いこそはするものの、どこか人工芝みたいだ。まるでクリスと始めてあった施設の花壇のように。それに、外壁が他の部屋と比べて、傷だらけだ。まるで何か刃物で斬りつけられたように。ヴィンセントは庭園の中央に立つ。彼の足下には、巨大な魔方陣があった。円の中に、何やら不思議な文字が書かれている。まるで悪魔を召喚する儀式みたいだ。クリスも不思議がって、花壇の草を触っている。
「この魔方陣を起動させれば、君達は元の世界に帰れるよ」
ヴィンセントは大きく息を吸って、魔方陣を撫でる。コーラは悲しげに僕達を見た。僕だって寂しいよ。コーラとお別れだなんて。クリスもなかなか一歩を踏み出せずにいた。ヴィンセントは視線を落としたけど、すぐに僕らの方に向き直る。そして、マントの中に手を入れた。
「…………君達の冒険はここで終わる。…………だけど」
言うなり、ヴィンセントは腰から二本の剣を抜いて、魔方陣が書かれた床を打ち砕いた。そしてヴィンセントは、紫色の刀身を僕らに向ける。目は冷たい光を帯びていて、僕らを撃ち抜くような威圧感を放っていた。
「君達……いや、お前達の旅の終わりは、この魔王ヴィンセントが引導を渡してやる」
そう言うとヴィンセントは剣を僕に向かって振り下ろす。僕はすぐに木の枝を盾に変えて、ヴィンセント……いや、魔王の攻撃を受け止めた。上空では、黒雲がとぐろを巻く。耳をつんざくような雷鳴が、頭の上で響き渡った。気を抜いたら両断されそうな勢いだ。魔王は攻撃の手を緩めようとしない。少しでも僕が臆したら、僕のちっぽけな体なんて潰されてしまいそうだよ。魔王はもう片方の剣で、僕をねじ伏せようとする。クリスが魔王の気をそらそうと、衝撃波を放った。衝撃波を剣で弾いて、魔王は手から黒い雷をほとばしらせる。クリスはすぐに飛び退いて、雷を躱した。
「お……おい。アタシ達はただ、元の世界に帰りたいだけだ。何も戦う必要はねぇだろ!」
「もう分かっているであろう? お前達は勇者、私は魔王。たとえその気がなくとも、戦う運命にあるのだ」
先とは打って変わって、冷酷な口調の魔王。殺人ロボットのように、敵対する人間を容赦なく排除する気だ。僕は盾を剣に変えて、魔王の剣を弾いた。魔王はバランスを崩したけど、すぐに踊るように剣で切りつけてくる。僕は魔王の剣の舞に翻弄された。ステップを踏むように、魔王の剣が襲い来る。踊りに合わせて、庭園の花が舞い散った。よけても次の攻撃が迫ってくる。魔王の一太刀が僕の脇腹に当たり、僕は地面に倒れた。シャツが破けて、血がどくどく流れている。その様子を見て、クリスは僕の元に駆けつけた。来ちゃだめだ。そんな僕の願いも届かず、魔王がエメラルド色の瞳をぎらつかせていた。
「リアム、大丈夫か!?」
「に……逃げて……クリス……」
お腹の奥から絞り出すような声で、僕はクリスを引き留めようとする。でも、クリスは僕の元に行こうとした。魔王はそれを見逃さず、電撃でクリスの動きを封じ込める。黒い電流が走って、クリスは地面に崩れ落ちて痙攣した。苦痛に顔をゆがめて、クリスは僕の前でもがく。魔王は蛇が毒で弱った小動物にとどめの牙を突き立てるように、剣を振り上げた。
「よそ見をしている場合ではないぞ。死力を尽くして掛かってこい!」
「て……てめえっ!」
クリスは悪態をつくけど、痺れてどうすることもできない。魔王はクリスの首に向かって剣を振り下ろした。その時、コーラが光の帯で剣を受け止める。光の帯は震え、コーラも息を切らしていた。魔王は顔色一つ変えず、コーラを剣で圧し殺そうとする。
「儚き導き手よ。思えば何度お前はここに来たことか。幾多の勇者の死を、お前は何度も見てきたはずであろう? なぜ抗おうとする?」
「この子達を死なせはしないわ! もうこれ以上悲しみを繰り返させはしない!」
コーラは決意のこもった目で魔王を見る。魔王の瞳が少し揺らいだ。僕は痛む脇腹を押さえて立ち上がり、魔王の剣と切り結ぶ。コーラは驚いて、僕のそばに寄った。
「リアム!?」
「ほう、まだ戦うか。……おもしろい、その意気だ」
僕は呼吸を整えて、魔王の剣の動きを見る。右から……次は左から……。意識を集中させて、魔王の剣の動きを読み取る。でも、どんなに僕が剣を振っても、魔王からは焦り一つ感じられない。まるで僕を試しているように。
「……迷っているな。リアムよ」
魔王が僕の心を見透かすようにあざ笑う。その時、僕の真上から魔王の剣が振り下ろされた。コーラはとっさに僕をかばって、一撃を受けてしまう。コーラの体が切り傷に沿って不鮮明になる。そのままコーラは花の上に倒れた。ヒスイ色の瞳が虚ろになって、コーラは気を失ってしまう。
「コーラ!」
「迷いは仲間の犠牲を生むぞ。私を倒すことだけに集中しろ」
魔王は手から雷を撃ち出す。僕はすぐに盾で防御しようとする。雷が光線のように襲いかかって、僕はじりじりと後ろに下がっていった。雷が盾を壊そうと牙をむく。両手が痺れて、脇腹がきりきり痛んだ。……勝てない。力が違いすぎる。今までのどんな相手よりも、この魔王は強い。僕が必死で防御しているのに、あの魔王は疲れて攻撃の手を止めようともしない。僕の脇腹からは止めどなく血が流れていく。まるで僕の生命力が消えていくように。ついに悲鳴を上げるように、盾が打ち砕かれた。盾は木の枝に戻って、燃え尽きてしまう。僕の体に光線が直撃して、僕は庭園の奥の壁まで吹き飛んだ。壁に激突して、僕は口から血を吐く。全身に鈍い衝撃が走る。僕の目の前には、木の枝の燃えかすが舞い散った。もう僕を守るものはない。体を守るように僕は両手で肩を支える。できれば泣きたかった。助けを求めたかった。だけど、恐怖で涙も声も引っ込んだ。魔王は剣を携えて僕の元へにじり寄る。
「……終わりだ。案ずるな、勇者よ。お前は死ぬことはない。私の駒の一つになるだけだ」
魔王は僕を押し潰すように言い放つ。ルシアンもこんな気持ちだったのかな。魔王が持つ剣を見ると、今すぐにでも首をはねてもらいたくなる。このまま地面にうずくまっていても、傷が痛むだけだ。観念したように、僕は腕をだらりと降ろす。その時、すさまじい音とともに、魔王の体がよろけた。マントで煙を振り払って、魔王は剣を握り直す。クリスが痺れる膝を付きながら、杖を構えていた。杖の先が紫色に輝いている。痛みをこらえて、クリスは歯を食いしばった。
「ア……アタシの兄ちゃんに手を出すな……」
震える大きな足で、クリスは立ち上がる。魔王はすかさず剣から黒い衝撃波を放って、クリスを吹き飛ばす。クリスは庭園の噴水に激突して、頭から血を流した。クリスはボロボロになったジャンパーの袖で血を拭き取って、ふらふらした足取りで立つ。どうしてまだ立つんだ。分かっただろう。僕らと魔王じゃ力の差があまりにもありすぎるって。魔王は手から黒いもやを出して、クリスを縛る。もやは巨大な悪魔の手のように、クリスを握りつぶそうとした。喉を押さえつけられて、クリスの口から嗚咽が漏れる。その様を魔王は平然として見ていた。
「無駄な抵抗をするな。もがけばもがくほど、お前が苦しむだけだぞ」
「だ……誰が諦めるかよ……。お前なんかの……駒になるつもりはねぇ……!」
苦しみながら、クリスは魔王に悪態をつく。魔王は深くため息をついて、クリスの喉元に切っ先を突きつけた。それでもクリスは、赤茶色の目で魔王を睨む。その目は全てを諦めた目じゃなかった。どうして……。どうして魔王が怖くないんだ。どうして抗うんだ。攻撃は効かない。守る事もできないのに……。
「哀れな勇者だ……。その僅かな空意地も、私が摘み取ってやろう」
「止めろぉー!!」
僕は痛みも忘れて、魔王の剣の前に飛び出していた。自分でもどうしてか分からない。武器も持っていないのに、僕は魔王の剣を体で受け止めようとした。剣が僕を切り裂く寸前で、目の前が真っ白になる。遠くからクリスの声がした。体から意識が引き離された気分だ。僕、死んじゃったのかな。真っ白になった視界に、一つの人影が入り込んだ。不鮮明で誰だか分からない。でも、不思議と怖いとは感じなかった。
「よお、ちびっ子。もう諦めちまったのかよ。お前さんの物語はそんなに小さいモンじゃないだろ」
聞き覚えがあるけど、意識が混濁して誰だか思い出せない。人影は力が抜けたように笑って、僕の元に歩み寄った。
「目ん玉開けて見てみな。お前さんが守るモンはまだ諦めてねぇだろ?」
人影は僕の肩を強く押す。その時、僕の視界はもやが晴れるように一気に開けた。それと同時に人影は煙のように消えていく。魔王の一太刀は、何かに跳ね返されて弾かれる。ルシアンからもらったバッジが、僕を守るように青い炎を撃ち出した。炎は魔王の肩に命中し、魔王は肩を押さえる。それと同時にもやも消えて、クリスは地面に着地して咳き込んだ。バッジは炎を撃ち出すと砕けて、白い煙をたなびかせる。僕は砕けたバッジを見つめた。そうだ……。まだ僕は諦めちゃ駄目だ。僕にはクリスとコーラがいるんだ。魔王は焦げた肩を隠すように、マントをかぶせる。
「なるほど。飼い犬に手を噛まれる……か。皮肉なものだな」
魔王は呼吸が少し乱れている。だけど、膝を付くことはなかった。クリスは杖から衝撃波を数発撃ち出す。魔王は剣で衝撃波を弾いていたけど、一発が肩に当たって片方の剣を落とした。クリスの顔色がだんだん悪くなる。杖の先端の光もだんだん弱くなった。魔王はもう片方の剣を構えて、クリスに近づく。
「疲れが出たな。魔法を酷使しすぎて気力が失われているぞ」
クリスに斬りかかる魔王。守らないと。僕は地面に刺さっている魔王の剣を引き抜いて、魔王の前に走り出る。魔王は突然の刺客に狙いを変えようとするけど、僕の剣の方が速かった。僕は剣で、魔王の脇腹を刺す。肉を斬る嫌な感覚がした。魔王は空いている方の手で、僕を剣ごと引き抜いて、地面に叩き付けた。重油のようなどす黒い血が、魔王の脇腹から漏れ出る。腹を押さえながら、魔王は僕に剣を向けた。ドラゴンの骨越しでも、魔王が苦しんでいるのが分かる。それを見ていると、僕はこれ以上魔王を傷付けるのが嫌になった。僕らはただ、元の世界に帰りたいだけ。なのにどうして、戦わなくちゃいけないんだ。僕らは勇者じゃない。でも、魔王の剣が話し合いは無用と言わんばかりに、僕に真っ直ぐ突きつけられていた。
「まだ迷うか、リアム。言ったはずであろう。お前は勇者、私は魔王。お前は私を倒すしか道はないのだ」
「ま……待ってよ。僕らは勇者じゃない。ただ、うちに帰りたいだけなんだ。もうこんな事は止めようよ……」
僕の言葉に、魔王は剣で返答する。僕は重い剣を力任せに振って、魔王の攻撃を防ぐ。クリスは息を切らしながら、衝撃波を撃ち出した。だけど、衝撃波は小さく、魔王のマントにかき消される。魔王は再び黒い稲妻を撃ち出して、クリスを拘束した。
「お前達にその気がなくとも、お前達はこの世界に呼ばれ、勇者としての役割を与えられたのだ。そして私は、お前達を殺すべき魔王としての役割があるのだ!」
魔王の咆哮と共に、雷雲が叫びを上げるように荒れ狂う。その声は何処か悲しげだった。僕は後ろに飛んで、魔王の剣戟を避ける。黒いブーツを踏みならして、魔王は剣を構えた。その手は少し震えている。まるで後ろ髪を誰かに引かれているように。この魔王、ヴィンセントはコーラを助けてくれた。紅茶に毒なんか入れなかった。だけど、どうして勇者だからって戦わなくちゃいけないんだ。剣がずしんと重くなる。もし彼が魔王じゃなくて、顔が怖いだけの優しい隣人だったら、一緒にピクニックとかも行けたのかな。もし僕が勇者としての役割を与えられていなかったら、彼と図書館でお話もできたのかな。足が鉛のように重くなって、一歩踏み出すことができなかった。
「情けなどいらぬ! 来い、幼き勇者よ!」
魔王が一気に間合いを詰め、僕に斬りかかる。僕はためらいながらも、剣を真っ直ぐ構えた。魔王の脇腹からは絶えず黒い血が流れ出ている。それを見ると、今すぐにでも剣を手放したくなった。でも、僕は倒れるわけにはいかない。熱くなる目頭。唇を噛みしめて、僕は魔王に立ち向かった。魔王の剣が、僕の首目掛けて振り下ろされる。その時、紫色の衝撃波が魔王の顔に直撃した。クリスだ。クリスは黒い稲妻に体を震わせながらも、杖を握り締めている。魔王は手から剣を離し、ふらふらとよろける。その胸元に僕の剣が突き刺さった。黒い血が、僕の手を濡らす。僕の目は恐怖で見開かれた。僕が握る剣は、深々と魔王の胸を貫いている。血がどくどくと流れ、足下の花を黒一色に染めた。僕はおずおずと剣を引き抜いて、地面にへたり込む。それと同時に魔王も膝を突いた。魔王の力が抜けるように、クリスも稲妻から解放される。魔王は被っている骨の間から、血を垂らしていた。空いている方の手で、魔王は剣を取る。どうしてまだ戦うんだ。僕はもう戦えないよ。こんなに傷ついているのに。戦う理由がないよ。僕の目から大粒の涙があふれ出した。
「ま……まだだ……。私は……倒れるわけにはいかぬ。この物語を繰り返させることが……決して死ぬことのない魔王であり続けることが……私の役割なのだ……」
傷だらけになっても、操り人形のように立ち上がる魔王。その頭からは壊れたドラゴンの骨が落ちた。露わになった顔を、魔王は苦しげに歪める。魔王の素顔は輪郭が曖昧になっていたけど、黒いもやのような顔だった。口も鼻もどこにあるか分からず、エメラルド色の目だけがこちらを見ている。体だけ生かされたゾンビのような足取りで、魔王は剣を握って僕の方へ歩いてきた。思わず目を覆いたくなったよ。魔王の体は今にも倒れてしまいそうだ。ただ、何かが魔王を突き動かしているみたいだ。僕はゆっくり剣を降ろした。
「どうして……どうして戦わなくちゃいけないんだ! 勇者と魔王って言う理由だけで、なんで僕らが殺し合わなきゃいけないんだ!」
胸の奥底からこみ上げてきたものを吐き出すように、僕は叫んだ。間違っているよ。役割があるだけで戦うなんて。これ以上誰かが傷つく姿なんて、見たくないよ。クリスも俯いて、杖を元の花に戻す。魔王も目を細めて、一旦剣を降ろした。僕の訴えを聞いて、魔王も視線を落とす。
「……それがこの世界における、君と私の役割だからだよ。この世界が作られたときから、私はこの世界に来た勇者を滅ぼす魔王ヴィンセントとして、存在し続けたのだ」
そう、彼の本にはヴィンセントという勇敢な騎士がいた。お菓子の国の人々を笑顔にした、優しくて強い騎士。麦畑のような金色の髪を揺らして、エメラルドのように輝く瞳をしていた。いつも絵本の中で白い鎧を着ていて、背中には大きな剣を背負っている。そんな彼が、私の前に魔王として現れたのは、いつからだったのだろう。
私はずっと暗闇の中にいた。自分が今どこにいるのか、どうなったか分からなかったけど、ただ、彼ともう一度会いたかった。時々、この暗闇の中にも風の音に混じって声が聞こえてくる。それが何を意味するのかは分からなかったけど、とても不安になった。
――お願いです! 病人がいるんです! 薬を分けてください!――
――ふざけるな! 誰が魔法使いの言うことなんか信じるか! 大方薬を使ってこの村に呪いをかけるつもりだろう!?――
石のぶつかる音、人々の怒号、何度も訴えかける声。次々と聞こえてくる声に、私は耳を覆いたくなった。
――……お前か。一族の落ちこぼれが、何の用だ?――
――お願いだ、父さん。一族の秘薬の調合の仕方を教えてよ。彼女を救う為に必要なんだ――
――何だと!? 村の連中と関わるとは……。一族の恥さらしめ! 我が一族が、あんな薄汚れた奴らを助けるはずがなかろう!?――
――父さんっ!――
閉ざされる扉。何度も屋敷の主を呼ぶ声。それを聞くと、胸が張り裂けそうになった。今はただ、無性に彼の声が聞きたい。私はそう祈って、暗闇の中で待ち続けた。
誰かが私の側へ歩み寄る。誰かは分からないけど、ひどく息を切らせていた。
――遅くなってごめん。はい、これ。何でも直る万能薬だよ――
彼だわ。その瞬間、私は暗闇から解放された。彼は体中生傷だらけで、青あざもできている。私は薬に手を伸ばそうとしたけど、うまく動かない。まるで自分の体じゃないみたいに、私の体はベッドに横たわったままだ。そんな、やっと彼が来てくれたのに。話せないなんて。気づいてもらえないなんて。
――どうしたんだい? 目を覚ましてくれよ――
動かない私を見て、彼の声が震える。彼が何度私を呼んでも、私が何度彼に返事をしても、私の体は起きてくれなかった。
――頼むよ。起きてくれよ。君無しの人生じゃあ僕はどうすれば良いんだ。お願いだよ。目を開けてくれよ!――
だんだん涙声になる彼。ここにいるよ、もう病気は治ったのよ。そう言いたかった。でも、私が彼に手を伸ばそうとしても、彼の手をすり抜けるだけ。彼は冷たくなった私の体に泣き崩れる。薬が静かに、ベッドから床へと落ちていった。その薬を見て、彼は震える手で取る。
――……この薬は病気の人間を治すけど、健康な人間に使うと……――
薬を口元まで持ってくる彼。彼の涙が私の顔を濡らした。私の視界が再びぼやけてくる。また暗闇に戻される。そんな恐ろしさが私を覆った。彼は涙と一緒に薬を一気に飲み干す。それと同時に、私の視界は一気に暗闇に引きずり込まれた。
――君を一人なんかにはさせない。僕も一緒だよ。……カーラ……――
彼が倒れる音が聞こえた。暗闇でも、その音は残響を伴って私の耳に残る。その余韻が消えると、私は本当に何も感じなくなってしまった。自分の手も足も、心臓の鼓動の感覚すらない。胸の中も空っぽだ。暗闇に、自分が溶けてしまっているみたいだ。あれ? 彼は……一体誰? 私は…………一体誰? 体と一緒に、意識まで溶けていった。
次に目を覚ますと、私は小さな星になっていた。洞窟の水面に映る虹色の体。手の代わりに漂う光の帯。そして目の前には、一人の男の子がいた。ニット帽を被って、無邪気な顔で私に話しかけてくる。だけど私の頭の中には、一つの言葉しか残っていなかった。目の前の勇者を導く……それがお前の使命だ。彼と旅をして、魔王を倒そうとして……それで……。彼と一緒に立ち向かった魔王。彼もヴィンセントという名前だった。私が知っていたヴィンセントとは違う、黒い魔王のヴィンセント。彼の一撃からニット帽の男の子を守って、私は一度死んだ。……いや、一度じゃない。私は何度も同じ感覚を味わってきた。暗闇から呼ばれて、星になって、また暗闇に戻って。いろいろな人に会った。大柄な男の人に、小さな女の子。目つきの悪い男の人に、光り物が好きな人。そして、赤茶色の目の女の子に、マリンキャップを被った男の子。どうして……? どうして私には使命が与えられているの? どうして私は、何度も物語を繰り返しているの? どうして……勇者のはずのヴィンセントが魔王になっているの?
「ヴィンセン……ト……」
コーラが消えかかっている体をゆっくり起き上がらせる。息も絶え絶えで、今にも消えてしまいそうだ。それでもコーラは、魔王に何か言いたそうに口を動かしている。
「おい、動くんじゃねぇよ。怪我してんだろ」
クリスがコーラの体を支える。コーラは光の帯を伸ばして、魔王に触れようとした。魔王も悲しげな目をして、剣を手から離す。魔王の顔を見ていると、僕もやりきれない気持ちになる。こんな悲しい顔をする人と、僕は戦いたくないよ。コーラは光の帯で、魔王の頬を撫でる。
「あなた……勇者ヴィンセントね。彼の本に出てきた、お菓子の国を救った勇者でしょ?」
勇者? 彼の本……? 僕にはコーラが何を言っているのかよく分からなかった。クリスもだ。だけど、魔王は何度も頷いた。光の帯を震える手で握って。
「…………その様子だと、全部思い出してしまったようだね。カーラ」
魔王は……ヴィンセントは穏やかな口調でコーラに語りかけた。魔王としてじゃなくて、まるで僕らが初めて会った時みたいに。
「お前、何言ってんだ。そいつはカーラじゃなくてコーラだぞ」
「違うの、クリス。これが本当の名前なの。案内人としてじゃなくて、人間としての私の名前よ」
クリスの声を遮るように、コーラ(カーラって呼んだ方が良いのかな)は声を張り上げる。まるでそれが自分の本当の名前であるかのように。一体どうしたんだ、コーラ。僕は頭の中がごちゃごちゃになった。今までのコーラとの記憶が、潰されてしまいそうだ。コーラは僕らの案内人じゃなかったのか。ちょっと冷たいけど、感情豊かな星の精で……。訳が分からなかった。
「どうして……。だってコーラは僕らをここまで連れてきて……」
「……本当のことを言おう。カーラ……君達が言うコーラは、元々は人間なんだ。病気で一度死んで、星の妖精として……勇者の案内人として生まれ変わったんだ」
出血する胸元を押さえて、ヴィンセントは苦しげに言う。コーラが人間だったなんて。でも、僕はすぐに信じることができた。だってコーラは妖精にしては、人間くさいんだもの。コーラも顔を俯かせる。
「…………ええ、もう全て思い出してしまったわ。私が死んだことも、この世界で何度もあなたに殺されてきたことも。……あなたが勇者だったことも」
コーラの言葉に、ヴィンセントは視線を落とす。記憶の断片をつなげるように喋るコーラは、心苦しげだ。クリスはそんなコーラの背中を大きな手でさすっていた。
「すまない。君達には悪いけど、私は負けるわけにはいかない。全てを知ってしまった今、私はまた、この物語をリセットさせなければいけないんだ」
ヴィンセントはボロボロになった体で、地面に刺さった剣を引き抜く。その目は一歩も引けない決意を秘めていた。だけど、同時にためらいも見えた。クリスが立ち上がって、杖をヴィンセントに突きつける。
「分かってるだろ。アタシらもみすみすやられないってよ。絶対に元の世界に帰ってみせる」
「……分かってるさ。だけど元の世界に戻る方法なんてないんだ。死ぬことが許されない私と戦っても、君達は疲弊するだけだ。ならばせめて私が……」
ヴィンセントは胸からあふれ出る血を、心臓を鷲掴みにするようにして押さえる。戻る方法がないなんて。それに、ヴィンセントはゾンビみたいに生かされて、死ぬことが許されないなんて。そんなの……。僕は剣を地面に置いて、その場を動かない。僕はそのままヴィンセントと対峙した。
「だったら、他に元の世界に戻る方法を探せばいい。戦うなんておかしいよ!」
ヴィンセントは一旦剣を止める。迷っているのか、ダメージが大きいのか、その手は震えていた。クリスはコーラを庇うように、杖を向けたままだ。
「他に方法なんてない。戦うことが私達の役割だ」
「役割が何だよ! そんな役割なんかアタシがぶっつぶしてやる!」
クリスが杖を降ろして、ヴィンセントに食ってかかる。その目は少し潤んでいた。クリスは震える拳を握り締めて、唇を噛んだ。
「役割だからって、良い奴らと戦うのはもうごめんだ。あんな悲しい顔……もう見たくねぇ」
クリスは目からあふれ出る雫を押さえるように、よれよれになったジャンパーの袖で顔を覆う。ヴィンセントはその様子を見て、無意識に剣を手から離した。離した剣はヴィンセントの足下にあった、ドラゴンの骨を打ち砕く。粉々になったドラゴンの骨は、風に乗って何処かへ消えていった。ヴィンセントは手を僕らにゆっくり掲げる。すると、僕らの傷はどんどん塞がっていった。ヴィンセントの傷も完治していく。その時のヴィンセントの顔は、もやのようだけど、笑顔が浮かんだように思えた。まるでずっと前、誰かにもそんな顔をしていたように。忘れたはずの笑顔で。
「…………負けたよ。私には、君達を殺せない。役割に囚われた私が、役割に囚われていない君達に勝てるはずがなかったよ」
ヴィンセントは憑きものが取れたようにその場に崩れ落ちる。コーラがヴィンセントの元に駆け寄った。ヴィンセントはコーラを懐かしむように、光の帯に手をかける。その姿は本当に、コーラとヴィンセントが昔からの知り合いだったみたいだ。
「どうして世界を救うはずのあなたが、魔王としてこの世界を支配しているの?」
「それは……」
ヴィンセントは出かかった言葉を飲み込む。その様子は何処か苦しげだ。すると、突然地面が揺れ、城が崩れ始めた。庭園の真ん中に穴が空いて、僕らを飲み込むように闇が広がる。僕らは暗闇から逃げようとするけど、闇はあっという間に僕らを覆い尽くした。庭園の噴水が消えていく。城壁も、花畑も消えていく。城というより、この世界全体が黒一色に染まっていくようだ。魔王の体が、暗闇に包まれる。暗闇は粘ついた黒いインクのように、魔王の体を蝕んだ。
「言えるはずがないよね。だって君の存在はもう勇者じゃなくて、魔王に書き換えられているからね」
どこからか声が聞こえる。暗闇の中に響いてくるような、悪意に満ちた声だ。ルシアンみたいに低い、男の人の声だけど、今まで聞いてきたどの声とも似つかない、無機質な声。それと同時に、ヴィンセントの体は暗闇に溶けるように消えてしまった。僕はヴィンセントを探そうとするけど、体が思うように動かない。まるで暗闇が逃がさないと、僕の足を掴んでいるみたいだ。クリスもコーラも、暗闇の中でじたばたもがいている。為す術もなく、僕ら三人は不気味な声がする暗闇の中を漂っていた。まるで何もなくなった世界に残されているように。
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