「梅田ナイトドリーマー」

もしもブロンクスのあの夜、DJクールハークがターンテーブルを回していなかったなら。



雨は止んでいた。

風もなかった。

ただ、音だけが残っていた。


街の隙間をすり抜ける低いビート。

雑踏。残響。呼吸。


誰もが前を見て歩いていた。

しかし彼女たちだけが、別の方向を向いていた。


音を、言葉を信じていた。


まだ、誰も名前を知らない。

まだ、何も始まっていない。


けれど、すべてはそこから始まっていた。

眠れない街、梅田の歩道橋で。


「今日だけは、あんたに帰ってきてほしかってん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る