ほしぞらの旅
華露 ハル
第0話 前提、連星の子
この世界から、はるか遠く。
その気の遠くなるような距離を、あえて喩えるとするのであれば。
何億もの確率をすり抜けて特別長生きできるように生まれた星が、奇跡によって形作られたその身をつめたい闇に融かしてしまうまで。
それくらいの…永遠とも思える年月が過ぎ去ってしまうまでの間を、天の川銀河一の俊足を誇る流星が意気揚々と輝きながら流れて行っても、カレが纏った光さえまだまだたどり着けないくらい遠く。
そんな遠くのとある銀河系には、この世界よりちょっと不思議な発展をした惑星たちが集っている。
ある惑星には魔法があって、ヒトビトはこっちより少しばかり幸せに生きている。
またある惑星には花の神様が居座って、永遠の命を与えられたヒトビトが春の陽気とまどろんでいる。
またある惑星にはこっちと遜色ない技術を発達させた結果、滅亡したという歴史が誰にも知られることなくひっそりと佇んでいる。
上げていくとキリがないけれど、どの惑星も仲がいいものだから、ヒトビト同士でも交流は盛んで。
手紙の交換や異星間での電話は序の口、惑星単位で共通する法律の制定に始まって、貿易や観光旅行なんかも今では手軽にできている。
原点となる星間移動の技術がとある惑星のヒトビトによって確立されたのは、それなりに昔のことなのだとか。
閑話休題。
さて、今現在のとある銀河系について、すこし踏み込んだ話をしてみよう。
ごく最近のことだけれど、銀河単位でそういう変化があったからこそ見つかった、どこの惑星にも定住せずに銀河を漂っている種族がいる。
曰く。
カレらは眉目秀麗な少年少女の姿をとっていて、
目には星のような煌めきを宿している。それ以外には惑星のヒトビトとの変わりはない。
曰く。
カレらはいつからかこの銀河を漂っていて、気紛れに選んだ惑星に双子の片割れと共に降り立つ。銀河に帰っていくときには、きらきら光るコンペイトウを仲良くなった子供に渡して去っていく。
曰く。
カレらはとある銀河系のどこかの惑星の誰かとともに生まれるはずだった生命で、訳あって宇宙空間にヒトの形を取った”仮の”双子として、制限付きの永遠の生を受けた。
曰く。
カレらは仮の双子として生まれたどちらかが、
天文学的な確率で”本来の”双子の片割れに出会って、その惑星に根を下ろすことを決めて、種族との繋がりを絶った時に。
出会えた方は本来の片割れの種族になって、片割れときっかり同じ時間を歩んでいく。今までの記憶は一切消えて、心にぽっかり空白が残ることもない。
出会えなかった方はその瞬間砕け散って黄泉路を往き、いつかその惑星に優しい光を降らせる星になる。本来の片割れのこともすべて忘れることなく、自分の意志で動くことも喋ることもできずに、星となってからの悠久のときを過ごしていく。
そんな哀しいような喜ばしいような運命を辿るカレらは、誰が最初に言ったのか、
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