第2話 とんでもない能力を手に入れた。
「うおっ」とか「わっ」みたいな感嘆詞は意外にも出てこなかった。
ごく自然にそこに立っていて、しかも僕のほうもこの子がリリーだと一目で分かったからかもしれない。
全く知らない人ではない、というか毎日顔を合わせるお知り合い。
彼女がガン見してくるので僕は何事もなかったようにパンツを掴み上げた。
「えっと……君はリリー……だよね?」
「イエース。ごめんねー
ようやく来たか、と思った。
普通なら理解が追いつかない状況に違いないけど、ずっと夢にまで見てきた瞬間だったから。
「そうなんですね! 嬉しい! じゃあ、僕も
「そうだよ。ヒーローになることが確定した君に、これからざっくり事前説明をするね」
事前説明なんてされなくてもネットで散々調べて大体のことは知っている。
とはいえ、調べてたのはバトルに関することが中心だったから、まさかこんな感じでいきなり部屋の中に案内人が現れるとは思いもしなかった。僕が何より大好きなリリーを
ただ、なんでリリーはうちの高校の制服を着ているんだろ? 確か彼女は20歳。高校生じゃないはずだけど。
まあそんなことより大事なのは、僕がなんの能力を与えられたのかということだ。
普段から漫画とかアニメの技を使って悪を倒して大好きなクラスの女子の
「犯罪が激化したこの世界では、国家も凶悪犯を完全には抑えることができなくなっていったの。そこで『ヒーロー』が必要になった。
ヒーローは、本来なら裁判所が判決する罪の重さとは関係なく、自らの裁量において、その場で犯罪者を処分して良いと法律で決められている。悪が
だからこそ、基幹システム『
動機が不純であるが故に一番懸念していた点だったが、今回力を授かったことで僕が正義感を持ち合わせてることも自然と証明された。
僕だって、力さえ与えられればもちろん世の正義のために身を粉にして戦うさ!
「あとはおいおい説明するよ。君が所属するヒーローギルドは
「ちょ……待って待って!」
勝手に部屋を出て行こうとする彼女を慌てて呼び止めた。
お母さんにいきなりリリーの姿を見られるとビックリさせちゃうのも
「僕の能力は何?」
「あたしだよ」
「え?」
「え?」
「「え?」」
「いや、ぽかんとした顔しないでよ。ちゃんと説明して?」
「だからー、君が手に入れたのは、あ、た、し」
デカいプレゼント箱の中に隠れてサプライズ登場してきた女子のようにキャピついている。
「あたしを全部あげる的な話? サービス精神旺盛だよね。案内人なのに」
「違うよ能力の説明だよ!
「知ってるよ。でも、だからってなんで君が手に入るの」
リリーは頬を赤らめた。
「ありがとう。あたしのこと、こんなにも強く想ってくれて。確かにあたしは作品の中ですっごい魅力的に映ってたと思うけどさ、それでも
「えっと、確か20……えっ」
ちょっと待って。
まさか、それが僕の「強い思い」って事?
リリーを手に入れたことが僕の
「すっご……20って、そんな何回も何回も狂った猿みたいに」
「いやいやいや! だって君、案内人じゃなかったの!?」
「誰がそんなこと言ったんだよ。さっきからずっと言ってんじゃんあたしだって」
そんな馬鹿な!
だってエロ動画の女優じゃないか。
「だったら……き、き、君の能力は、なに」
「あたしの職業から考えてちょ。大体わかるから」
職業というなら使える能力はエロ動画関連以外にはあり得ない。
四十八手とか瞬殺尺八とかそういう
とりあえず終わったことだけは確定した。ずっと夢見てきたヒーロー的な能力はもう二度と手に入らない。だって、
僕の能力は、このさき一生、エロ動画の女優。
「それとね、
「知ってる。だいぶん前に調べたから。空中にステータス・ウインドウが現れる感じじゃなくて、視界の端のほうにデジタル表示されるんでしょ。それで、気持ちが
「よく知ってるね。その通り」
「でも、『思いの強さ』が上がったとして、それがなんになるの? 戦闘向きのスキルだったらわかるんだけど、僕が抱く思いの強さが上がったら、君はどうなるの?」
「強くなるよ」
強くなるんだ……でもそれってどういう意味でだろう。戦闘面で強くなるかどうかはかなり怪しい。
「ステータス・オン!」
試しに自室で口にする。とりあえずまだお母さんには知られないように小声だ。というか心で思うだけでよかったのに反射的に発語してしまった。
今、僕の視界の端にはいろんな数値が表示されている。
つまりこれがステータス・ウインドウの代わりだ。もちろん僕は以前調べたことがあるのでこれらの数値が何を示しているか概ね知っているが、このうち特に重要なのは二つ。
「
今、僕の思念の解放率(TRR)は1%。
思念力(TP)は10。雑魚中の雑魚であり、ほぼ一般人。
「はぁ……やっぱ弱いなぁ」
「落ち込まないでよ。君が強い思いを抱けるかどうかが鍵なんだから」
強い思いか。よぉし……。
うぬぬぬぬぬぅ! リリーよ、強くなれ!
拳を握りしめながらひたすら気張ってみたけれど、しかし視界の端に見えるTP値はぴくりともしなかった。
「……なんも起こんないね」
「うーん……それはあたしにも分かんないなぁ。君の心の問題だし」
これ、やっぱ戦えなくない?
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