喧嘩が原因で別れたカップルは、まだお互いの事が気になっているようです
りんりん
序奏
サヨナラは、あなたから1
まるで夢を見ているようだった。3年間の長いようで、短く儚い夢。
それが今日、目の前で崩れ去った。
どこで間違えたのだろう?
何を間違えたのだろう?
そんな疑問がずっと頭の中を駆け巡っている。
一体どれだけの時間が経ったのだろう。
気が付けば赤く染まり始めていた空が暗くなり、海と砂浜の境目がわからなくなっている。
「………帰らなきゃ」
声に出してみるが、体が動かない。
もう少しだけ、ここにいてもいいだろう?
これからの事は考えたくも無い。
何に対してもやる気が起きない。
だって、俺……
◇◆◇
昨日、彩春は昼前から俺の家に来ていた。
彼女は家に入るとまっすぐリビングに向かって、テレビの前に置いてあるソファに座りスマホを眺めていた。
「なあ……彼氏の家に来ているのにスマホばっかり触ってて楽しいのか?」
彩春にここ最近疑問に思っていた事を聞いてみる。
「別に楽しいわけじゃないけど…特に喋る事もないでしょ?」
確かに、それもそうだ…そう思ってしまう自分がいた。
俺たちは3年前の中学2年生の頃から付き合っている。
付き合い始めた頃はずっと喋っていたので今は話す事があまり無い。
「………」
こちらが何も言えなくなったと思ったのか、スマホに視線を戻す。
俺よりもスマホの方が大事なのかと思うと少しばかりモヤモヤする。
「――そういえば、明日友達と遊び行くからここには来れないわ」
すると突然、彩春から声が掛かる。
「そうか……ちなみに、誰と?」
聞かない方がいい。頭ではそうわかっていても聞いてしまう。
「別に……誰でもいいでしょ。あなたには関係ないし」
「関係なくないだろ」
「ッ――!」
彼女の言い方に腹が立ってついキツイ返しをしてしまった事に気付く。
でも、声にしてしまったのでもう引くに引けない。
「いいじゃん、恋人なんだし。教えてくれても」
今度はキツイ言い方にならないように注意して聞く。
「プライベートだから放って置いて!!」
しかし、先程の発言で怒らせてしまったようだ。
ここは大人しく引こう。
「………わかった、わかった」
「――ッ!日向のそう言い方、ウザいからやめて!!」
「そんな事言ったて、どうすりゃいいんだよ!?」
ここ最近、こんな言い合いばかりしている気がする。
「………」
「………」
2人の間に沈黙が流れる。俺はこの空気が大嫌いだ。
むしろ、この雰囲気が好きな奴はヤベー奴だけだろう。
そんなバカな事を考えていると――
キーンコーンカーンコーン
近くの小学校から12時を知らせるチャイムが鳴る。
どこか気の抜けた音は張り詰めた空気を変えるのに十分だ。
「あー……もう昼か。簡単なもの作るから――」
そう言いながら立ち上がり、彩春の方を見ると机の上を片付けていた。
「何年一緒にいると思ってるの? これくらい、言われなくてもわかるわ」
何年も付き合っているからか、言い合いになった後でも息が合う。
「……サンキュー」
久しぶりに彩春に対して感謝を伝えた気がする。
その事実に小恥ずかしくなり、声が小さくなる。
さて何を作ろうか。
考えながら冷蔵庫を開ける。
すると中には――
「マジかよ……何もない」
冷蔵庫の中には調味料と少しの野菜しか入っていなかった。
しまった…食材を切らしていたのを完全に忘れたいた。
どうしたものかと考えていると――
「どうしたの?」
机を拭き終わった彩春がこちらの様子を見に来た。
「あぁ〜……なるほど」
冷蔵庫を覗いた彩春が状況を一瞬で理解し、声を上げる。
「悪い、今から買いn ―」
「そうめん、向こう棚で保管していなかったっけ?」
「――!! 忘れてた!」
そういえば、少し前に買って余っていたんだった。
「今すぐ茹でる」
「じゃあつゆと薬味の用意しとくね」
「ありがとう」
よしっ! 今度はちゃんと言えた。
料理をしている間は、ここ1年の中で1番距離が近かった気がした。
◇◆◇
昼ご飯を食べた数時間後。
日が傾き始め、青い空が赤く染まり始めた。
そろそろ彩春が家に帰る時間だ。
まだ早い時間だが、彩春の家はここから歩くとかなり遠い。
この時間帯で帰っても日没ギリギリの距離だ。
俺らは無言で頷きあうと2人で玄関先まで行く。
そこで彩春を見送るのが日常だ。
最初は家まで送って行ったが、この辺りの治安が良いのと俺が家に帰る頃には辺りが真っ暗になるので、送るのはやめようという事になっている。
「またね」
「……あぁ」
今は夏休みなので普段なら「また明日」と言うが今日は違った。
どうしてだろう? と思ったが、午前中に明日は友達と遊びに行くと言っていた事を思い出す。
明日も彩春が来ると思っていたので、予定が無くなってしまった。
明日は何をして過ごそう?
そう思った時には、彩春は見えなくなっていた。
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初めまして、
「喧嘩が原因で別れたカップルは、まだお互いの事が気になっているようです」
の作者、りんりんです!
普段はラノベ感想をTwitterの方に投稿していますが今回、ラブコメを書きたくなったので書き始めました!
感想をいただけると続きを書くやる気に繋がります!
誤字脱字報告もお待ちしております!
少しずつ更新していきますので、これからよろしくお願いします!
以下、謝辞
カクヨムでの執筆の仕方がわからない自分に丁寧に教えてくださったD先生のおかげでこの作品を世に放てました。
D先生、ありがとうございました!
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