ファンタジーとSFをぶっ込んだ現実世界に転生した女子高生、最強のヒーローとなって学生を謳歌しながら悪を倒していく

和泉歌夜(いづみかや)

第1話 えー、現実世界に転生ってそりゃないでしょ

 トラックに轢かれたので、異世界に行く事になりました。


 いやー、まさかまさかの本当に異世界に行けるなんてね。


 まだ行ってないけど、見てよ、この真っ白な空間。


 確実に女神や神様とかいそうじゃない?


 でも、誰もいないな。


 ここ本当に天国?


 もしかして、跳ねられた衝撃で亜空間に飛ばされちゃったとか?


 うへー、どうしよう。


 私、このまま一生真っ白な空間にいなくちゃいけないのかな。


 だったらせめて、全漫画をここにもって来て欲しい。


 あ、定期的に最新刊は入れておくオプション付きでね。


「おい」


 そんな事を考えていると、いきなり声をかけられた。


「何?」


 振り返ると、モフモフの黒猫がいた。


 首輪が付いていて、『神』と彫られたプレートをぶら下げていた。


 こいつが神か。


「私、万英正まえだスバルって言うんだけど、あなた神様?」

「そうだけど」


 黒猫が頷いて教えてくれた。


 やっぱり、この子は神様なんだ。 


「だったら、異世界に連れてってくれない?」


 神の前なので、声のトーンを明るくさせて聞いてみる。


 だけど、黒猫はハァと溜め息をついた。


「希望に応えたい所だけど、定員オーバーなんだよね」


 信じられない事が起きた。


 まさかの人数制限で弾かれてしまったのだ。


 というか、異世界にそんな概念があるのか?


「ちゃんと答えて。その話はほんと?」

「ほんとだよ」


 即答で返してきた。


「じゃ、じゃあさ……私の魂はどうなるの?」


 そう。それが肝心。


 だって、このまま転生できないと、一生この真っ白い空間に閉じ込められるってことになるじゃん。


 そんなの嫌だ。


 せめて、漫画が駄目だったとしても、三食は欲しい。


 私がウルウルなお目々で訴えた結果、黒猫はかったるそうに溜め息をついた。


「分かった。転生させてあげるけど、君がいた世界と似た感じでいい?」


「えー」


 嘘でしょ。


 それはそれで嫌だな。


 異世界みたいなファンタジーで、ルンルンで、ファンタジックな所がいい。


「大丈夫だよ。僕がいうのもなんだけど、すんげーぶっ飛んでるから」


 私の気持ちを察したのだろう、私の転生先を教えてくれた。


 ぶっ飛んでる?


 どれくらいぶっ飛んでいるんだろう。


 特撮の爆発シーン並かな。


「それじゃあ、行くよ〜!」


 気怠そうな感じで猫がビームを撃ってきた。


「ギャアアアアアア!!!」


 私の身体がビリビリと感電した。


 あ、このパターンは異世界に飛ばされるな。


 でも、ちょっと待って。


 せめて、猫ちゃんの名前だけでも。


「クロッピーだよ」


 本当に私の心のボイスが聞こえたかのように、すぐに答えてくれた。


 あぁ、ありがとう。


 クロッピー、君のおかげでゆっくりと気絶できる。

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