3.飲み会にて:朝陽が明かした過去
12 その席、偶然ですか?
ある日、仕事終わりに、企画部の同僚たちと食事に行くことになった。
向かったのは、オフィス近くの居酒屋。賑やかな店内に席を取り、ざっくばらんな話題が飛び交う。
朝陽はリラックスした様子でメニューを覗き込み、坂元と飲み物を選んでいる。
夕雨も自然に輪に加わりながら、それでも心のどこかで、大学時代の記憶をかすかに思い出していた。
この場所、店の名前は違うけれど、中はそのままだ。前に朝陽と来たことがある。
(もし、彼が思い出したら……どうしよう?)
夕雨は胸の奥で自問した。
彼が過去を思い出したとき、私のことをどう感じるのだろう?
あのときのように軽蔑するだろうか。
ふと、隣に座った朝陽が、小さな声で話しかけてきた。
「白石さんって、昔からこんな感じだったんですか?」
「え?"昔"?」夕雨は、動揺して思わず聞き返す。
「落ち着いてるっていうか。周りをちゃんと見てる感じが、すごいなって。」
夕雨は少し照れ笑いを浮かべた。
「……ありがと。そう見えてるなら、良かった。」
そんな二人のやりとりを聞きながら、東がニヤニヤと言う。
「朝陽、なんだ、白石さんの隣、ちゃっかり取ったな。」
朝陽は驚いたように、「えっ」と顔を上げた。
夕雨も少しだけきょとんとして、それから小さく笑った。
日高もにやりと笑いながら、
「若いっていいよねー。自然に座るんだもん。」と軽くからかう。
「いや、そん、ちがいますよ……!」
朝陽が慌てて弁解しかけたが、
東は「冗談冗談。ごめんって。座りたいところに座ればいいんだよ。」と軽く肩を叩いた。
場の空気がさらに和み、朝陽も少し照れながら「ありがとうございます」と笑う。
夕雨も、笑いをかみ殺しながらドリンクを口に運ぶ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます