2.魁聖高七不思議①
自己紹介もほどほどに長テーブルを囲んで座ったボクたちは入り口の方にボクが座り、ボクの右側に宗馬が、左側に愛理先輩、反対窓側に千織部長と向かい合う。
「ときにきみたちは聞いたことがあるかな? “魁聖高七不思議”を」
千織部長はボクたちを見ながら言ったからボクははっきりと答える。
「ボクは宗馬から聞いたかな」
「あー実は俺も良くわかんねぇんだよな」
「じゃあなんでそれボクに言ったんだ……!」
「なんでっつっても、姉ちゃんから聞いた程度なんだよな俺」
1回彼を殴っても許されるだろうか。
あまりにふざけたことを言ってるおかげでボクはキレそうだよ。
「じゃあ概要を説明するよ」
ボクたちの会話を目に楽しげに笑いながら七不思議について指を立てながら教えてくれた。
「ひとつ目は『夕方17時に図書室の本が独りでに動く』」
「ふたつ目、『時刻は不明だが音楽室のピアノが鳴る』」
「みっつ目、『夜半に化学室の人体模型が動く』」
「よっつ目、『場所は不明だが女子トイレのみっつ目の扉をある作法でやればトイレの
待った。急に場違い感がやってきてないかな?
っと、話に集中……気になりすぎて内容が頭に入らないんだけど。
トイレの薔薇さんってなにっ? そこ花子さんじゃないのかなぁ?
アレかな。今の時代に合わせたハイカラなものにしようって怪談でもあるのかな……い、いやいやいや。そんなのあるわけないでしょ。
「むっつ目、『夜の廊下に人魂が現れる』」
「──んぁ、ん?」
「まったく。ちゃんと聞いていたのかい?」
ボクはよっつ目のトイレの薔薇さんに思考を回していたからか、いつのまにかひとつ進んでいた。
そんな様子を見て胡乱げに見てくる千織部長にもう一度話させるのもどうかと思い、先を促す。
あとでいつつ目の情報を聞いておこう。
千織部長はボクに促されて最後の七不思議を教えてくれた。
「ラストななつ目、『学外にすべての話を流せば必ず不幸が訪れる』」
どうかなといった目を向けられる。ボクは宗馬に一度目を向けてから、テーブルに目を伏せながら顎に指を這わせる。
必ず不幸が訪れる……か。そんなことあるのだろうか。
「なにか質問とかある?」
「そう……ですね。……宗馬はなにかある?」
「んーにゃ。俺にゃあさっぱり」
「きみねぇ……」
宗馬。きみは考えるということをしなよといささか不満げな顔をするけど、そういえば彼はいつも感覚で動く男子だったっけと思い直す。
「あー。っと疑問点なんだけど良いですか?」
「あぁ。良いとも」
「図書室のはさ、そのときは電気はもちろん点いてない……で良いんですね?」
千織部長はしっかりと頷いた。じゃないと『ひとりでに』なんていう文言はないもんね。
「じゃあふたつめ。図書室の鍵は? 閉まっていたんです?」
「そこは……」
どうだったかなと曖昧な態度がボクには引っかかって見えた。
「……もしかしてなんだけどその七不思議って詳しいところ分からない……?」
「あ、あはははは……うん」
「それ謎として立証するかなぁ……?」
あやふやなところがあると途端にケレン味が増すというか……なんでもありなところが出てきてしまう。
ボクはあまり、そういった不確かなものは好きじゃないんだけどなぁ。
「す、すまないね。もしかしてお気に召さなかっただろうか?」
「あーいや……まぁ、その。……ボクは謎を解くのに可能性を潰したいんです。それでひとつでもあやふや〜なとこあるとそれって“真実”とはなり得ないかなぁって」
ボクの言葉に宗馬は首を傾げて、愛理先輩と千織部長はなるほど〜と頷いていた。
「じゃあこれからわたしたちで学校見てまわりましょうよ!」
名案とばかりに胸の上で両手をぱちっと合わせながら笑って「ねっ、いいでしょ?」なんて千織部長に可愛らしく聞く愛理先輩。
綺麗な顔立ちからの笑顔なんて向けられたものはたまったもんじゃなさそう。ボクはもちろん向けられたくはないけど。だって綺麗すぎて目がやられそうだし。
「そうだね。それも良いだろう」
「でも時間まだあるんじゃないんすか?」
「そこはほら、他のとことか探してみましょっ」
「今はまだお昼時だが……使われてないトイレとか探してみよう」
「……じゃあ候補で当たるならここの2階か」
「その通りだね」
あっ、独り言が口に出てた。まぁいいか。
とはいえ、2階のトイレはそれぞれ左右に伸びる廊下で2箇所。階段の近くに男女トイレがある。
「それじゃあボクと宗馬はトイレ前で待ってようか」
「そうだな」
「え、きみたちも来るんだよ?」
何を今更みたいな顔されても困るんだけど?
だって女子トイ……。
「誰も使ってないのはさっき確認したから来たまえ」
あぁ、はい。最初っから拒否権無かったみたい。
宗馬を見れば流石にそこの良識はあるみたいでなんだか宇宙猫みたいな顔してた。
「ほら、部長も言ってるみたいですし、行きましょ」
う、うぅん……ボクもご遠慮したいんだけどなぁ。愛理先輩に手首掴まれてそのまま入らされると諦めるしかなさそ〜。
「さて。肝心要の方法なんだが」
「も、もしかしてやる感じっすか?」
「あぁそうだけど? あれ、もしかして宗馬くんは苦手な感じ?」
「い、いいいいやぁ? べ、別にいねぇ存在気にしてても仕方ない、よなぁ?」
少し焦った顔でこっち見られても反応に困るんだけど。
「検証するならやるに越したことはないよ宗馬」
「お、おぃぃぃ……」
察してくれよぉとか見た目に反してビビりだなぁ宗馬は。気持ち分かるけど。
でも、ボクと違うのは、宗馬にはそういったのが視えないことだろうか。でも怖いものは怖い。『まんじゅうこわい』ってやつだ。あれ、意味違うか。まぁいいや。
右でブレザーを掴む宗馬から目を離し、千織部長に頷いて返す。
「方法は個室をそれぞれ1回ずつノックしていく。文言は『トイレの
よくもまぁ、そんなやり方が残ってるものだ。なんて説明を聞きながら思う。今は気楽なものだ。ここは恐らく、何も出ないから。
「さて。それじゃあ……ト〜イ〜レ〜の〜、そ〜う〜び〜さ〜ん〜、あっそび〜ましょ〜」
「調子軽くない……?」
「でもこれのほうが助かるよな〜」
「そうかしらぁ……なんだか気が抜けちゃいますよねぇ〜」
千織部長は3個ある個室の2番目に止まってさっきの説明してくれたのを続けて3回のノックをするがとても軽やかにトイレの中に響いた。
「トイレの薔薇さん遊びましょう。トイレの薔薇さん遊びましょう。トイレの薔薇さん遊びましょう」
30秒ほど沈黙が続く。
するとくるっと踵をこちらに向けて軽やかな足取りでトイレから出ていく。
「反応ないし次」
「行きましょっか〜」
愛理先輩の声に同意をするように頷いてトイレから出た時に宗馬から少し引き留められて耳打ちされる。
「なんか感じるか?」
チラッと横目で宗馬を見上げる。
宗馬だけはボクの特異性を理解している。
だからボクは苦笑して頷く。
「ここは何も」
「そっか。なんかあれば、お前のことは守ってやるよ」
「……あ、ありがとう」
こんなことを言ってくれるのほんとに人たらしだと思う。
それを他生徒に向ければ顔も良いからモテると思うんだよね。まぁ興味ないってバッサリ切り捨てるだろうけど。
「…………?」
視界の隅で何か見えた気がしたけど……気のせいか。
「どしたー?」
「いや、なんでもないよ」
宗馬の声に首を振って小走りに向かう。
「それじゃあ、2階最後のトイレだ」
「部長〜。これで何もなかったら他の場所〜?」
「勿論だとも」
千織部長の声がやけにくぐもって聞こえた。
(……なんで、声遠く……いや、これ、は……)
ゾワっと嫌な予感を抱く。うなじのあたりが産毛立つ感覚。
トイレの外に立っているだけでもここに居たくないという気持ちが強くなる。
「おい。大丈夫か?」
「…………………ま、だ……行けるよ」
千織部長たちにはバレないように深呼吸を繰り返して、隣に立ってくれている宗馬の左裾を軽くつまむ。
(まったく心配性だなぁ宗馬は)
こっちをチラチラ見てくる宗馬を横目で見つめてから千織部長たちの方に目を向ける。
「ここも誰もいないのは確認済みだよ」
「だからってボクと宗馬が入らなくても良くないかな?」
「確かにそうだよな。俺、出てて良いっすか?」
「おや〜? きみたちは怖いのかな?」
「冷静な顔立ちなのに怖いの苦手なの可愛いわね〜」
「ぐっ……怖くなんて……」
宗馬は大体倫理的なもので入りたくはないだけ。ボクは千織部長と愛理先輩にニヤニヤとされて不服ながらも頷かざるを得ない。だって嫌な予感しかないのだ。
否定したいのに、何か起きそうでしかないから。
ボクはそういった存在が視えてしまうからなるべく視ないように前髪を伸ばして今だと右目を隠すようにしてる。けど左目でその嫌な雰囲気がするのだ。
「ま、いいさ。それじゃあやるね」
千織部長は薄く微笑いながら5つの個室へと足を進めた。ボクは遠巻きに眺めながら宗馬から離れないようにする。
「ト〜イ〜レ〜の〜そ〜う〜び〜さ〜ん〜」
口ずさみながら一回一回ノックしながら行ったり来たりした。
「あ〜そ〜び〜ま〜しょっと。ここだね。それじゃあ3回ノックして再び、トイレの薔薇さん遊びましょう。トイレの薔薇さん遊びましょう。トイレの薔薇さん遊びましょう」
千織部長が行動に移すたびにボクは息を呑む。なにせ止まった場所は唯一、ノックした時の音が他と違ったからだ。
「ふむ……反応なしか。やれやれ。思ったようにいかないものだ」
「これでなんともないなんて不思議ですねぇ」
「それじゃあ下か上行ってみようか」
千織部長と愛理先輩はケロッとした態度でトイレを後にするのを横目に後に続こうと踵を返した時。
「──────」
「ん? 宗……ひぅっ……!?」
宗馬が何か呟いたのを聞き逃さなかった。
そして立ち止まるべきではなかった。左目で捉えてしまった存在を視てしまったから。
さらりと綺麗な黒髪に綺麗な顔立ちでまるで日本人形。薄く小さな唇がこれでもかと横に歪ませながらこちらを見ていた。
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