2025年。
人類が見つけてしまった『もうひとつの地球』、通称「新世界」。
酸素も水も大地も、すべてが地球と同じ。
ただひとつ違ったのは――そこに、人の限界を超える何かがあったこと。
現実では失業と監視社会が進み、人が人らしく生きる余地を奪われていた。
そんな世界で、新世界は「最後の自由」として熱狂を呼び、人々は希望を夢見てその地に向かう。
一方、中学2年生の律子は、親友・紗月や尊敬する先輩・霞との穏やかな日常を過ごしていた。
静かな部室、茶道の香り、和やかな会話。
だが、その均衡は霞が語り始めた『新世界集中合宿』の話で静かに揺らぎ始める。
「努力だけでは届かない」と先輩は言った。
「もう、普通のままではいられない」と。
超人的スキルを得る者、人格が変わって帰ってくる者、失われていく感情。
希望とされる世界が、ほんとうに希望であるとは限らない。
理想と現実の狭間で揺れる少女たちが出す、ひとつの答え。
これは、「信じるべき未来」が試される、静かなるディストピアの序章。