第29話 格の違い
2年生に勝ったというのに勝利の余韻に浸る暇はないようで2年生と入れ替わるように噂の3年生達が現れた。
この学校の生徒の中で最強の4人。
雰囲気からして圧倒的なものを感じるがそれもそのはず。
先頭を歩いているのはこの国の第二王子であるサラド・シュゼルナーベ様だ。
「よく2年生を打ち倒した、素晴らしい魔法の練度、そして剣技、1年生とは到底思えないがまだ浅い」
豪華だが洗練された美しい直剣が引き抜かれ俺達の方へと向けられる。
まるでかかって来いというような仕草には一切の隙がなく攻撃の糸口が見つからない。
「みんな、本気で行こう、スフィアさんにも前衛を頼みたい」
「わ、分かりましたわ」
しかし、どういう訳かサラド王子以外のメンバーは構えていない。
もう始めてしまっていいのだろうか?
「ふむ、来ないのならこちらから行こう」
「きゃっ!!」
その言葉と共に先程までサラド王子が居た地面がエグれてスフィアさんの悲鳴が聞こえた。
咄嗟に防御の構えをとったおかげかそれとも遊ばれたのか剣と剣がぶつかり俺は数メートル吹き飛ばされた。
出し渋ったら負けるっ!
エミエラのサポートを信じながら闇魔法で強化した状態でサラド王子に斬りかかる。
尋常ではない速度の攻撃もエミエラの束縛の魔眼のおかげで少しだけ動きが鈍る。
「なかなか面白い、これなら2年生を圧倒したのも納得だ、少し本気を見せてやろう」
サラド王子が膨大な魔力で体を強化したのを見た瞬間、腹部に強烈な痛みが走り俺の意識は吹き飛んだ。
「知らない天井だ」
「カイル様!!」
「エミエラ、俺たち負けたんだよな」
「はい、サラド王子が身体強化を使った瞬間カイル様は闘技場の壁に吹き飛ばされました、死んだかと思ってヒヤヒヤしたんです! ホントに良かった!」
どうやら俺達はサラド王子1人に壊滅させられたらしい。
正直、もう少し戦えると思っていたのだが所詮俺は少し魔法の才能があるだけのガキなのだと分からせられた一瞬だった。
もし、あれが実践だったら俺はエミエラを守れずに死んでいた。
それだけは凄く嫌だ。
何か強くなる方法を考えなきゃな……
「あの、エミエラ? そろそろ離れてくれないと帰れないんだけど」
「嫌です」
「家に帰ったら一緒に寝よう、だから少し動いてくれ」
「それはそれこれはこれです」
結局、医務室の先生が帰ってくるまではエミエラは離れてくれなかった。
相当心配をかけてしまったらしい。
強くなりたい理由が増えるばかりだ。
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